映画「怒り」
評価:A
原作:吉田修一、監督:李 相日、プロデューサー:川村元気という映画「悪人」のコンビが再びタッグを組んだ作品。公式サイトはこちら。
渡辺謙、宮崎あおい、森山未來、松山ケンイチ、妻夫木聡、綾野剛、広瀬すず、池脇千鶴と綺羅星のオールスターキャスト。特に驚いたのが高畑充希の贅沢な使い方。総出演時間5分位かな?でも圧倒的存在感があり、演技が上手いので惹きつけられる。あと今まで妻夫木聡は大根役者だと想っていたが、今回のゲイ役は無茶苦茶はまり役だった。妻夫木くんのお相手・綾野剛は「横道世之介」でもゲイを演じていた。考えてみればあの映画も原作は吉田修一だ。音楽が「ラスト・エンペラー」でアカデミー作曲賞を受賞した坂本龍一というのも実に豪華だ。
映画「悪人」のレビューはこちら。小説を読んだ後に映画を観て、「悪意」が足りないような気がした。表現がマイルドになり、ゴツゴツした感触が失われたというか。
しかし今回の「怒り」にはヒリヒリするような「悪意」があった。人間の生の感情、闇(くら)く嫌な内面が剥き出しにされたという印象。これぞ吉田修一の世界!
なお「悪人」は吉田と李の共同脚本だが、本作では「今回、僕はできません」と吉田が一抜けて、監督が単独で執筆している。
脚本家の市川森一(「黄金の日日」「淋しいのはお前だけじゃない」)は以前、「子供が生まれたとか結婚式とか他人の喜びに対しては中々共感することが難しいが、誰かが亡くなったとか他人の悲しみには共感し易い」という旨のことを語っていた(彼には「悲しみだけが夢を見る」というテレビドラマもある)。この言葉を応用するなら、他人の「怒り」に対しても共感することは非常に難しい。
だから「怒り」の登場人物たちに対して感情移入することは不可能に近い。後味も良くない。しかし見応えがあるのは確かである。ここには人間の真実の姿が詰まっている。
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