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日本とアイルランドの【結び】〜映画「ソング・オブ・ザ・シー 海の歌」

評価:A+

Songofthesea

本作は第87回アカデミー賞で長編アニメーション映画賞にノミネートされた(「かぐや姫の物語」がノミネートされた年。受賞したのは「ベイマックス」)。僕は「アナ雪」に匹敵する大傑作だと想った。公式サイトはこちら

大変珍しいアイルランドのアニメーションである。主人公の女の子の名前がシアーシャで、映画「ブルックリン」でアカデミー主演女優賞にノミネートされたシアーシャ・ローナンのことを想い出した。彼女もアイルランド出身。アイルランド・ゲール語で「自由」を意味するそう。

僕は以前からアイルランドという国に親近感を抱いていた。「ダニーボーイ」「ロンドンデリーの歌」「サリーガーデン」「庭の千草(夏の名残のバラ)」……恐らく多くの日本人がアイルランド民謡に懐かしさを感じている筈である。郷愁と言い換えてもいい。どうしてなんだろう?長年抱いてきた疑問が、この映画を観て氷解した。

「ソング・オブ・ザ・シー」はアイルランド(ケルト)神話に基いている。今でこそアイルランドはカソリック教徒(キリスト教=一神教)が多いが、ケルト人は多神教の神話を持っていた。「ソング・オブ・ザ・シー」にも沢山の妖精たちが登場する。そしてシアーシャとベンのお母さんはアザラシの妖精という設定。つまり人間とアザラシの間に出来た子供なのだ。

ヨーロッパなどキリスト教の国の昔話には一切、人間と動物が結婚する話がない。「美女と野獣」の野獣は元々王子さまであり、人間の姿に戻ってヒロインと結ばれる。グリム童話「カエルの王様」もカエルが王の姿に戻って王女と結婚する。アンデルセンの「人魚姫」は王子と結婚することが叶わず、泡と消える。つまりキリスト教徒にとって人間は神に模して創造された生き物であり、他の動物・物の怪は下等なのである。だから両者が結合するなどおぞましく、あり得ないことなのだ。

一方、日本人は八百万の神を信仰し、「鶴の恩返し(鶴女房)」とか狐女房(上方落語「天神山」)など異類婚姻譚が沢山ある。やはりアイルランドと日本は繋がっている。「君の名は。」で言うところの【結び】だ。

あと本作からは宮﨑駿作品の影響を強く感じた。トム・ムーア監督も「僕は長い間、日本のアニメーションのファンで、それは僕の仕事に何年もの間、インスピレーションを与えてくれました」と語っている。フクロウの魔女マカはまるで「千と千尋の神隠し」の湯婆婆だし、「太陽の王子ホルスの大冒険」の銀色狼そっくりのキャラクターも登場する。

Gin

なんだかとっても嬉しくなった。

参考文献:河合隼雄「昔話の深層」「昔話と日本人の心」「母性社会日本の病理」「おはなしの知恵」

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