世界に羽ばたけ!〜新海誠監督「君の名は。」
評価:AAA
ごめん、「シン・ゴジラ」。今年のベストワンは「君の名は。」で決まりだわ。公式サイトはこちら。
僕は新海誠監督「秒速5センチメートル」が死ぬほど好きで、オールタイム・ベストでも第7位に挙げている。
それでも新海誠は所詮カルトであり、一部の熱狂的ファン(例えば僕)にしか支持されない【少数のための】アニメーション監督だと高をくくっていた。つい昨日まで。
ところが「君の名は。」を観て心底驚愕した。新海監督のjump upには眼を見張るものがある。軽く細田守を超えてしまった。はっきり言おう。本作のクオリティは「千と千尋の神隠し」のレベルに達している。つまり米アカデミー賞長編アニメーション部門を狙えるということ。東宝がこれから真剣に考えないといけないのは海外にどう売るか、つまり世界戦略だ。
想像を絶する体験だった。僕たちをこんな高みにまで連れて来てくれた新海監督に対して、心からありがとうと感謝したい。
「君の名は。」の凄みは時間と空間の跳躍にある。平安時代に書かれた「とりかへばや物語」や日本神話(古事記)に登場するイザナミとイザナギの物語にまで繋がっている。そのスケールの大きさに頭がクラクラした。
処女作「ほしのこえ」から新海作品のテーマは距離感にある。遠くにいても心が繋がっている男女もいれば、物理的に近くでも、心は二十億光年離れている場合もある(秒速5センチメートル)。このテーマは「君の名は。」でも継承されている。
また電車(鉄道)に対する執着(フェティシズム)も挙げなければならないだろう。新海作品には必ず電車が走る。例外はない。Z会のCMや大成建設のCMもそう。「君の名は。」も執拗に電車が登場する。まるで山田太一か庵野秀明みたいに。電車は交差し、時に並走し、やがて離れる。それは人生を象徴している。
「秒速5センチメートル」「言の葉の庭」「君の名は。」の共通項はNTTドコモ代々木ビルが繰り返し描写されること。
「君の名は。」の主人公の自宅からは新宿御苑が一望出来る。僕は「言の葉の庭」のことを想い出し、ニヤッとした。
最後に。男女の入れ替わりが起こり、映画冒頭で三葉(みつは)が自分の胸を揉んだり、裸の上半身を鏡で見る場面は明らかに大林宣彦監督「転校生」へのオマージュである。またラストシーンはやはり大林映画「時をかける少女」のそれに密接に結びついてる。考えてみれば「秒速5センチメートル」踏切のラストシーンも「転校生」への愛が溢れていた。高校弓道部の場面は「時をかける少女」だし。Z会CMのフェリーもまた、尾道三部作・新三部作(「転校生」「さびしんぼう」「ふたり」「あした」など)を髣髴とさせる。是非大林監督に「君の名は。」の感想を訊いてみたいものである。
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