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2016年8月 4日 (木)

アカデミー歌曲賞 オールタイム・ベスト25/裏ベスト8

まず誤解している人が多いのだが、アカデミー「主題歌賞」ではなく「歌曲賞」である。例えば「ライオンキング」からは3曲が歌曲賞にノミネートされた。「主題歌」なら1曲しかない筈でしょ?つまり「挿入歌」も含まれるということ。

  1. 虹の彼方に(「オズの魔法使い」1939)
  2. Let It Go(「アナと雪の女王」2013)
  3. 星に願いを(「ピノキオ」1940)
  4. The Way We Were(「追憶」 1973)
  5. Lose Yourself(「8 Mile」 2002)
  6. Glory(「グローリー/明日への行進」 2014)
  7. Let the River Run(「ワーキング・ガール」 1988)
  8. White Christmas(「スイング・ホテル」1942)
  9. 風のささやき(「華麗なる賭け」1968)
  10. Moon River(「ティファニーで朝食を」1961)
  11. A Whole New World(「アラジン」 1992)
  12. モナ・リザ(「別働隊」1950)
  13. Skyfall(「007 スカイフォール」2012)
  14. My Heart Will Go On(「タイタニック」1997)
  15. 雨にぬれても(「明日に向って撃て!」 1969)
  16. ブロードウェイの子守唄(「ゴールド・ディガーズ36年」1935)
  17. Falling Slowly(「ONCE ダブリンの街角で」 2007)
  18. 今宵の君は(「有頂天時代」1936)
  19. Sooner or Later(「ディック・トレイシー」1990)
  20. Colors of the Wind(「ポカホンタス」 1995)
  21. The Shadow of Your Smile(「いそしぎ」 1965)
  22. チム・チム・チェリー(「メリー・ポピンズ」1964)
  23. What a Feeling(「フラッシュダンス」1983)
  24. 美女と野獣(「美女と野獣」 1991)
  25. ニューヨーク・シティ・セレナーデ(「ミスター・アーサー」 1981)

「裏ベスト」とは歌曲賞にノミネートされるも、惜しくも受賞を逃した楽曲から厳選した。

  1. アルフィー(「アルフィー」 1966)
  2. The Man That Got Away 去っていった彼(「スター誕生」1954)
  3. If We Were In Love(「イエス、ジョルジョ」 1982)
  4. Somewhere in my Memory(「ホーム・アローン」 1990)
  5. Papa,Can You Hear Me?(「愛のイエントル」 1983)
  6. Looking Through the Eyes of Love(「アイス・キャッスル」 1979)
  7. Somewhere Out There(「アメリカ物語」1986)
  8. Circle of Life(「ライオンキング」 1994)

「虹の彼方に」は「ストーミー・ウェザー」で有名なハロルド・アーレンの作曲。映画「オズの魔法使い」の編集段階になってスタジオの幹部から「14歳の少女が歌うには大人びていて相応しくない」と物言いがつきカットされかけた。しかしプロデューサーのアーサー・フリードはこの歌を気に入っておりカットに猛反対をし、何とか免れたという。曲は大ヒットし、ジュディ・ガーランドの代表曲になった。そして2001年に全米レコード協会の投票による「20世紀の名曲」では第1位に選ばれた。また僕が「裏ベスト」で取り上げたThe Man That Got Away(去っていった彼)もハロルド・アーレンが作曲し、ジュディが歌った。こちらは正に「大人の味わい」がしっかり染みこんだ夜の音楽だ。ジュディの絶唱を聴け。

「アナ雪」の「レリゴー」が世界中で巻き起こしたムーヴメントは凄まじかった。それは文字通り旋風だった。

「星に願いを」は映画「未知との遭遇」でも重要な役割を果す。

上記事では「ピノキオ」と旧約聖書との関わりについても触れた。

「追憶」の主題歌は何と言ってもバーブラ・ストライザンドの歌唱が素晴らしい。彼女以外の歌手は考えられない。

「8 Mile」はエミネムの半自伝的映画。ラップが格好いい。

キング牧師を主人公に据えた「グローリー/明日への行進」はラップとゴスペルの融合。新しい。胸熱。これぞ21世紀の音楽!

「ワーキング・ガール」の主題歌は颯爽と肩で風切って歩いている感じがいい。映画冒頭にバーン!と登場。

クリスマスの定番、アーヴィング・バーリンの「ホワイト・クリスマス」の初出が映画だったということを知らない人は多いのでは?「スイング・ホテル」の出来もいい。

「華麗なる賭け」はなんてったってスティーブ・マックィーンが格好いいんだよね。「風のささやき」は彼がエンジンのないグライダーを操縦している場面に流れる。

「ムーン・リヴァー」を知らない人はいないよね?ヘンリー・マンシーニの音楽は都会的でお洒落。ただ僕が一番好きなのは1967年の「いつも2人で(Two for the Road)」。村上春樹のお気に入りの映画だったりする。あと「ピンクパンサー2」の"The Greatest Gift"も素敵。関光夫がパーソナリティーを務め、NHK-FMで土曜日の午後10時20分から放送されていた「夜のスクリーンミュージック」のテーマ曲として使われていた。毎週耳を傾けていたなぁ。

「美女と野獣」「アラジン」「ノートルダムの鐘」の頃が、作曲家アラン・メンケンの全盛期だった。僕の友人の結婚式で、新婦側の友達がピアノで「美女と野獣」を弾くのを聴いて、「これじゃぁまるで新郎を野獣と言っているのと同じじゃない?失礼な」と感じたことを憶えている。もうあれから20年経った。

「モナ・リザ」を入れたのはナット・キング・コールの歌声が大好きだから。とっても優しくて、柔らかい感情に包まれる感じ。つまり包容力がある。癒されるんだ。

007の主題歌に名曲は多い。しかし驚くべきことに初期の「ロシアより愛をこめて」とか「ゴールドフィンガー」なんか、歌曲賞にノミネートすらされていないんだよね。多分イギリス映画だからだ。「女王陛下の007」の劇中にサッチモ(ルイ・アームストロング)が歌う、"We Have All The Time In The World( 愛はすべてをこえて)"なんかもグッと来るなぁ。ジョン・バリーによる傑作。

「タイタニック」におけるジェームズ・ホーナーの音楽はアイリッシュ・テイスト満載(エンヤもね)。ホーナーなら「アメリカ物語」の"Somewhere Out There"も好き。エッ、「虹の彼方に」に似てるって?【パクリのホーナー】だから許してあげて。

「雨にぬれても」は作詞ハル・デヴィッド、作曲バート・バカラックによる代表作。のんびりした田園風景に似合っている。でもこのコンビ作で僕がもっともっと好きなのは「アルフィー」と、カーペンターズが歌い「遙かなる影」の邦題で知られる"(They Long to Be) Close to You"だ。映画「アルフィー」(1966年版)はマイケル・ケイン演じるプレイボーイ(ヒモ男)の主人公が魅力的なんだ。付き合う女を取っ替え引っ替えしても心の虚空は埋まらない。ラストシーンで日がどっぷりと暮れたロンドンの川を眺めながら「一体俺は何をやっているんだ」と呆然と立ち尽くすアルフィー。そこに流れる主題歌の歌詞がグサッと胸を抉る。

What's it all about, Alfie?
Is it just for the moment we live?
What's it all about when you sort it out, Alfie?
Are we meant to take more than we give?
Or are we meant to be kind?

アルフィー、人生って何だろう?
私たちって刹那的に生きているだけってこと?
いろんなことを選り分けていく中で
人に与える以上に人から奪うのが私たちの宿命なの?
それとも親切にすることが人間本来の姿かしら?

And if only fools are kind, Alfie
Then I guess it is wise to be cruel
And if life belongs only to the strong, Alfie
What will you lend on an old golden rule?

もし親切にするのは愚か者だけだというのなら
残酷になる方が賢いよね、アルフィー
強い者のためだけに人生があるというのなら
「人からしてもらいたいことを、人にしてあげなさい」
という黄金律に則ると、あなたは何を人に与える?

As sure as I believe there's a heaven above, Alfie
I know there's something much more
Something even non-believers can believe in

私は天国が存在すると信じているけれど
たとえ無神論者でも信じることが出来る
もっともっと素晴らしいものがあるのよ、アルフィー

I believe in love, Aflie
Without true love we just exist, Alfie

私は愛を信じているわ、アルフィー
真実の愛がなかったら私達は単にこの世に「ある」だけじゃない

Until you find the love you've missed you're nothing, Alfie

あなたがいままで取り逃がしてきた愛を見つけなければ
あなたは「無」に過ぎないのよ、アルフィー

When you walk let your heart lead the way
And you'll find love any day, Alfie, Alfie

歩くときには心が趣くままに進んでごらんよ
そしたら愛を見つけられるんじゃないかな、いつの日かきっと
アルフィー、アルフィー

(日本語訳:雅哉/無断転載禁止)

「アルフィー」はディオンヌ・ワーウィックの歌でよく知られるが、映画のオリジナル(イギリス公開版)はシラ・ブラックが歌い、アメリカ公開時に配給元のユナイテッドの要請でシェールに変わった。僕が好きなのは1996年にTBSで放送されたテレビドラマ「協奏曲」(脚本:池端俊策、出演:田村正和、宮沢りえ、木村拓哉)で使用されたヴァネッサ・ウィリアムズによるバージョン。

「ブロードウェイの子守唄」は舞台ミュージカル「42nd Street」の第1幕フィナーレにも登場する。激しいタップの群舞が圧巻。なんか興奮する。

「ONCE ダブリンの街角で」はジョン・カーニー脚本・監督による音楽映画。カーニーが後に撮った「はじまりのうた」@ニューヨーク、「シング・ストリート」@ダブリンも素晴らしい。

「今宵の君は(The Way You Look Tonight )」のオリジナルを歌ったのはフレッド・アステア。僕がものすごく印象に残っているのはジュリア・ロバーツ主演の映画「ベスト・フレンズ・ウェディング」での使い方。とっても切なくなった。「ベスト・フレンズ・ウェディング」はハル・デヴィッド&バート・バカラックのコンビによる「小さな願い」(I Say a Little Prayer)が歌われる場面も感動する。

「ディック・トレイシー」の"Sooner or Later"はブロードウェイ・ミュージカルの巨匠スティーヴン・ソンドハイム節が堪能出来る。ソンドハイムは「スウィーニー・トッド」や「イントゥ・ザ・ウッズ」の作曲家としても知られる。洗練されて粋な楽曲。ハードボイルドな味わい。

「メリー・ポピンズ」は「イントゥ・ザ・ウッズ」のロブ・マーシャルが監督し、エミリー・ブラントやメリル・ストリープが出演する続編の製作が決定したと聞いて驚いている。オリジナル版の楽曲はシャーマン兄弟が作曲したが、兄は死去しているので多分別人が書くのだろう。「アナ雪」のクリスティン・アンダーソン & ロバート・ロペス夫妻あたりかな?

「フラッシュダンス」の主題歌"What a Feeling"は僕が高校生の時、すごく流行った。吹奏楽部でも演奏したな。前向きな主人公で、女の子たちから圧倒的な支持を受けた。明るい曲だ。

「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」Arther's Theme(The Best That You Can Do)はクリストファー・クロスとバート・バカラックの共作。クリストファー・クロスって絹のように滑らかで綺麗なハイトーン・ボイスの持ち主なんだ。

「裏ベスト」の"The Man That Got Away"(去っていった彼)と「アルフィー」については既に熱く語った。

"If We Were In Love"(「イエス、ジョルジョ」 1982)は日本未公開。「スター・ウォーズ」「ハリー・ポッター」の巨匠ジョン・ウィリアムズが作曲し、三大テノールの一人ルチアーノ・パヴァロッティが歌った(主演も務めた)。とってもロマンティックな佳曲。

"Somewhere in my Memory"(「ホーム・アローン」 1990)の作曲もジョン・ウィリアムズ。今やクリスマスには欠かせない。温かい気持ちになれる。

「愛のイエントル」については下記記事で縦横無尽に語り尽くした。作詞はアラン&マリリン・バーグマン夫妻、作曲は「華麗なる賭け」「シェルブールの雨傘」のミシェル・ルグラン。

"Looking Through the Eyes of Love"の作曲は「追憶」「コーラスライン」のマーヴィン・ハムリッシュ。知られざる名曲だ。映画「アイス・キャッスル」はフィギュアスケーターが主人公の物語。

「ライオンキング」といえば歌曲賞を受賞した「愛を感じて」じゃなくて、断然"Circle of Life"でしょう!歌詞の内容=映画の主題でもあるし。作詞はティム・ライス、作曲はエルトン・ジョン。

これから先の人生で、 どんなことがあるのか知らないけれど、いとしい歌の数々よ、どうぞぼくを守りたまえ。  
(芦原すなお 著「青春デンデケデケデケ」より)

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