武満徹没後20年/伊福部昭没後10年/ライヒ日本初演:いずみシンフォニエッタ大阪 定期
7月16日(土)いずみホールへ。飯森正親/いずみシンフォニエッタ大阪の定期演奏会を聴く。本編の前にロビー・コンサートがあり、今回は呉 信一のトロンボーン講座だった。
- 川島素晴:もう一人のエリック
- 武満徹:トゥリー・ライン
- 伊福部昭:土俗的三連画
- ジャック・ボディ:ミケランジェロによる瞑想曲 日本初演
- スティーヴ・ライヒ:ダブル・セクステット 日本初演
「もう一人のエリック」は《ジムノペディ》などエリック・サティの名曲がメドレー仕立てになっている。《あなたが欲しい(ジュ・トゥ・ヴ)》のミュート・トロンボーンが良かった。このワルツをオーケストラで聴くと、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」との親和性に気付かされる。これぞフランスのエスプリなのだろう。ディキシーランド・ジャズ風《ピカデリー》も魅力的だった。
アカシアの並木(湿った樹木)をモチーフにした「トゥリー・ライン」は弦が各パート1名の計5人。幻想的で曖昧模糊としている。武満には「ウォーター・ドリーミング」とか、「夢の引用」「夢窓」「夢の時」といった作品があるが、覚醒した西洋音楽に対して彼が語るのは無意識の世界なんだなと感じた。音楽は絶えず流動し、変容(メタモルフォーゼ)する。まるで水のように。武満の楽曲に「水の曲」「ウォーターウェイズ」「ウォーター・ドリーミング」「ガーデンレイン」「海へ」など水を主題にしたものが多いのは偶然ではない。曲の最後に舞台裏遠くからオーボエの音が聴こえてきたのも印象的だった。
「土俗的三連画」も弦5人。飯森はプレトークで「茶色のイメージ」と表現した。土の匂い。荒々しく野性味があり、第2楽章「ティンベ」はホルン二重奏が味わい深い。最果ての地という感じ。第3楽章はアイヌの歌で、世界中探してもどこにもない音楽だと想った。
ニュージーランドの作曲家ジャック・ボディの曲は死ぬ程つまらなかった。同じ弦楽合奏ならバーナード・ハーマンの「サイコ」組曲(1960)が聴きたいと想った。
ライヒはフルート、クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、ヴィブラフォン、ピアノという6重奏のセットをダブルで配置するという趣向。音響システム(PA = Public Address)を使用することが前提となっている。ライヒの音楽は殆どがそうだとか。リズムカルで疾走感があり、エキサイティングだった。
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