五嶋龍×ネゼ=セガン/フィラデルフィア管弦楽団
6月2日(木)フェスティバルホールへ。
フランス系カナダ人、ヤニック・ネゼ=セガン/フィラデルフィア管弦楽団を聴く。本日、ネゼ=セガンはジェームズ・レヴァインの後を継ぎメトロポリタン歌劇場の次期音楽監督に就任することが発表された。またフィラデルフィア管の音楽監督の任期も2026年まで延長されることになった。
ヴァイオリン独奏はテレビ朝日「題名のない音楽会」司会で人気者になった五嶋龍。彼はドイツ・グラモフォンと専属契約を結んでおり、使用楽器は日本音楽財団より貸与された1722年製のストラディヴァリウス「ジュピター」。
- 武満徹:ノスタルジア ーアンドレイ・タルコフスキーの追悼にー
- プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 第1番
- ブラームス:交響曲 第2番
- J.S.バッハ(ストコフスキー編):羊たちは安らかに草を食み
(アンコール)
「ノスタルジア」は瞑想的でたゆたう感じ。武満はドビュッシーの「海」をこよなく愛し、自作でも「ウォーター・ドリーミング」「海へ」「雨ぞふる」「ガーデン・レイン」「雨の樹」「From me flows what you call Time(タイトルは大岡信の詩「澄んだ青い水」の一節からとられている)」等、水をイメージしたものが多い。だからアンドレイ・タルコフスキー監督の映画に親近感を抱いていたのであろう。
プロコフィエフにおける五嶋龍の奏でる音は妖しく、美しく、湖水のように澄み渡る。ところが第2主題あたりから様相が変化し、鋼のような男らしさも感じられた。オケの伴奏は精緻。一糸乱れぬアンサンブルが展開された。
休憩を挟み後半のブラームスはとてもよく歌う。柔軟な音楽作りが感興をそそる。ネゼ=セガンは小節単位でテンポを動かすが、それが例えばロリン・マゼールみたいに作為的・あざといハッタリに陥ることなく、あくまで自然なのが素晴らしい。
オーケストラの音色はヨーロッパの団体みたいな(燻したような)【くすみ】とか【憂い】はなく、あくまで陽性で華麗。これぞフィラデルフィア・サウンド!懐かしい……という気持ちがこみ上げてきて、エッ?と戸惑った。そして突然想い出した。僕が小学生の時、オーマンディ/フィラデルフィア管を生で聴いていたことを。その時の曲目に「火の鳥」があったことも。そこで遠い記憶を頼りにインターネットで検索したら、詳細が判明した。
時は1978年5月18日、倉敷市民会館。曲目は、
- ピストン:トッカータ
- ベートーヴェン:交響曲 第7番
- ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
- ストラヴィンスキー:組曲「火の鳥」
だった。
今回の演奏を聴き始めるまで、全く失念していた。脳の作用の不思議さに感じ入ると共に、38年も経てばメンバーは殆ど入れ替わっているだろうに、その特色は少しも変わっていなかったことに「これが伝統の重みなのか」と感服したのであった。
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