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2016年6月30日 (木)

「ジョン・ウィリアムズの夕べ」スラットキン/フランス国立リヨン管弦楽団

6月27日(月)フェスティバルホールへ。

レナード・スラットキン/フランス国立リヨン管弦楽団によるオール・ジョン・ウィリアムズ・プログラムを聴く。

どうしてフランスのオケが映画音楽のコンサートをするのかという疑問に対して、スラットキンは次のように答えた。「リュミエール兄弟により映画(シネマトグラフ)が発明されたのはリヨンだから」世界初の実写記録映像「工場の出口」(1895)が撮影されたのもリヨンにあった兄弟の所有する工場である。ここは現在、リュミエール美術館になっている。

スラットキンはロサンゼルスで生まれた。父フェリックスは20世紀フォックス・オーケストラのコンサートマスターであり、母はワーナー・ブラザースのオケの首席チェリストで、「ジョーズ」のサウンド・トラックに参加している。また彼らはハリウッド弦楽四重奏団の創設者でもある。フランク・シナトラの伴奏を務めたこともあり、シナトラがスラットキン家を訪問した際、レナードに子守唄を歌ってくれたという。

レナード・スラットキンが1986年にセントルイス交響楽団を率いて来日公演を行った際、プログラムは通常のクラシック音楽だったのだが(ロデオ、メンコン with 五嶋みどり、ショスタコ5番)、なんとアンコールでは「ダース・ベイダーのテーマ」がサントリーホールに鳴り響いた!サービス精神が旺盛な指揮者だなと僕はすごく嬉しくなった。

さて、今回のプログラムは、

  • 「フック」ネヴァーランドへの旅立ち
  • 「ジュラシック・パーク」テーマ
  • 「ジョーズ」組曲
  • 「シンドラーのリスト」テーマ
  • 「レイダーズ 失われたアーク《聖櫃》」マーチ
  • 「E.T.」地上の冒険
       休憩
  • ロサンゼルス五輪 開会式のファンファーレとテーマ
  • 「ハリー・ポッターと賢者の石」ハリーの不思議な世界
  • 「未知との遭遇」組曲
  • 「スーパーマン」マーチ
  • 「スター・ウォーズ」組曲
    メイン・タイトル、王女レイア、帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)
    ヨーダのテーマ、王座の間とエンド・タイトル
  • 「SAYURI(Memoirs of a Geisha)」テーマ(アンコール)
  • 「S・W ジェダイの帰還」イウォーク族のパレード(アンコール)

「ジョーズ」以外は皆、公開時に映画館で観ている。また全作サントラCDを所有。

このオケは余りトランペットが上手じゃなかった。大阪フィルと同レベル。多分N響とか読響、東響など東京のオーケストラの方が格上だろう。しかしホルンはすごく良かったし、「シンドラーのリスト」のコンサートミストレスは太い音で咽び泣き、確かな聴き応えがあった。

スラットキンの指揮は流麗でサウンドはゴージャス。「ネヴァーランドへの旅立ち」からは壮大なロマンを感じた。ホルン・ソロで始まる「ジュラシック・パーク」は気高い(noble)。僕は1993年6月19日にジョン・ウィリアムズ/ボストン・ポップス・オーケストラの来日公演でこの曲を聴いたことを想い出した。当時は岡山に住んでいて、旧フェスティバルホールまで新幹線に乗って遥々やって来たのである。「ジュラシック・パーク」が日本で公開されたのはその年の7月17日。つまり映画公開前に音楽に触れるという貴重な体験をしたのだった。

その時僕は高校吹奏楽部からの親友と一緒だった。演奏会では「E.T.」から”地上の冒険”も演奏され、その後で彼が僕の肩を叩いてそっと囁いた。「隣に座っている女の子が、聴きながら感極まって泣いていた」と。音楽って凄い!と嘆息したことを今でも鮮明に憶えている。

その友は新婚旅行から帰ってきて直ぐに慢性骨髄性白血病を発症した。アトランタ・オリンピックが開催された1996年の夏のことだった。彼は兄弟から骨髄幹細胞移植を受けることになり、僕はジョン・ウィリアムズがオリンピックのために作曲した「Summon the Heros(英雄たちを招集せよ)」のCDを入院見舞いとして病院に持参した。手術は無事成功したのだが術後感染症から敗血症に至り、結局彼は亡くなった。そんな事どもの記憶が演奏を聴きながら僕の脳裏を駆け巡った。

ロサンゼルス五輪が開催された時に僕は高校生で、うちの吹奏楽部が運動会でジョンのオリンピック・ファンファーレを演奏した。勇壮な曲。

「未知との遭遇」の前半はリゲティやペンデレツキみたいな現代音楽なのだが、後半のクライマックスはとってもロマンティック。「スーパーマン」は躍動感溢れ、「イウォーク族のパレード」は軽妙洒脱。曲調が多岐に渡るジョンの魅力をたっぷり堪能した。

クラシックの音楽家たちは未だに映画に対する偏見を根強く持っている。エリック・ウォルフガング・コルンゴルトの再評価が非常に遅れたのも「ハリウッド(大衆娯楽)に魂を売った唾棄すべき作曲家」という烙印を押されたからだし、オーケストラの定期演奏会でジョン・ウィリアムズの映画音楽が取り上げられることはない。漸くウィーン・フィルやベルリン・フィルが野外コンサートで「スター・ウォーズ」や「E.T.」を演奏する時代になったので、今後さらに状況が変化していくことを期待したい。付随音楽という意味では、バレエやオペラと何ら違いはないのだから。

ディーク・エリントンはこう言った。

音楽には2種類しかない。「いい音楽(good music)」と「それ以外(and else)」だ。

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