バシュメット & モスクワ・ソロイスツ
6月10日(金)いずみホールへ。
ユーリ・バシュメット(指揮/ヴィオラ)、モスクワ・ソロイスツ合奏団(19名の弦楽奏者たち)で、
- モーツァルト:小夜曲(アイネ・クライネ・ナハトムジーク)
- パガニーニ:ヴィオラ協奏曲(原曲はギター四重奏曲第15番)
- シューマン:東洋の絵
- 武満徹:3つの映画音楽より
訓練と休息の音楽(ホゼー・トレス)、ワルツ(他人の顔) - グリーグ:2つのノルウェーの歌
- ブリテン:2つの肖像
- チャイコフスキー:弦楽セレナード
- シュニトケ:ポルカ(アンコール)
「小夜曲」は覇気がある演奏。溜めとか間をたっぷり取った、テンポ・ルバートのあるモーツァルトで、まるでショパンみたい。時代の潮流=ピリオド・アプローチの向こうを張った、ある意味挑発的な解釈。実に面白い。
パガニーニのバシュメットのソロは野太い音でよく鳴る。
武満の「訓練と休息の音楽」は動的、「ワルツ」は妖しい夜の蝶の舞い。
グリーグは木枯しが吹きすさび、寂しい。透き通った湖水の情景を連想した。
ブリテンの第1曲「デイヴィッド・レイトン」は悪夢とか陶酔感のイメージ。10歳から習っていたヴィオラ・ソロのある第2曲(自画像)は憂いを帯び、哀しい。
チャイコフスキーは切々と歌い、絹の肌触り。第3楽章のエレジーは儚い、うたかたの夢。「幻夢」という言葉がピッタリ来る。
ブリテンに続いてチャイコフスキーが演奏され、両者の共通項に気がついた。ゲイとしてその時代を生きることの困難さと、やるせなさ。1950年代のイギリスではゲイであることは犯罪であり、投獄か薬物治療の選択を迫られた(数学者アラン・チューリングが薬物療法を受けたことは映画「イミテーション・ゲーム」で描かれている)。19世紀の帝政ロシアでは刑法の第995条で同性愛行為を5年以下のシベリア流刑に処すると明記されていた。このプログラムの並べ方は明らかに意図的なものだろう。バシュメットよ、おぬし、なかなかやるな。
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