ギドン・クレーメル & リュカ・ドゥバルグ@兵庫芸文
6月5日兵庫県立芸術文化センター大ホールへ。
ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)、リュカ・ドゥバルグ(ピアノ)で、
- ヴァインベルク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番
- ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン・ソナタ
- ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ
- フランク:ヴァイオリン・ソナタ
- イザイ:こどもの夢(アンコール)
客の入りは6割程度。フランク以外、知名度が低いプログラムなので致し方ないかも。
ミェチスワフ・ヴァインベルク(1919-96)はポーランド生まれのユダヤ人。彼の曽祖父と祖父はモルドヴァで起こったポグロム(大虐殺)で命を落とした。ナチス・ドイツのポーランド侵攻でソ連に亡命。親と妹はワルシャワに残り、収容所で虐殺された。ヴァインベルクは1943年以降、モスクワでショスタコーヴィチと親交を結ぶが48年にジダーノフ批判を浴び、52年に逮捕される。しかしスターリンの死に救われ、それから間もなく公式に名誉回復がなされた。また妻の父(俳優でユダヤ人反ファシスト委員会議長)は暗殺された。
無伴奏ソナタを弾くクレーメルは「孤高の人が、孤高の音楽を奏でる」という印象。ヴァインベルクとショスタコーヴィチの音楽的共通点は虚無感である。深淵の奥底にある漆黒の闇を覗きこむような様相。スターリンに翻弄されたという点で二人の人生は一致している。
- 「森の歌」をめぐって〜ラ・フォル・ジュルネびわ湖2016
(ショスタコに対するプラウダ批判/ジダーノフ批判について解説)
ショスタコーヴィチから登場したドゥバルグはチャイコフスキー国際コンクールで4位となり、物議を醸した。ショパン国際コンクールで落選したポゴレリッチ以来の事件だと取り沙汰された。コンクールの演奏をインターネットで聴いたクレーメルは共演の申し出を直接ドゥバルグにしてきたという。ただ僕が聴いた感想はキレとか力強さ、熱量に欠けるという印象。強烈なピツィカートなど激しいパッションで弾くクレーメルのお相手としては力量不足の感を否めない。
ショスタコの終楽章を聴いていると、クリストファー・ノーラン監督の映画「インセプション」で描かれた無意識の領域のさらに下層、limbo(虚無/辺獄)に有る音楽を聴いているようで、空恐ろしかった。
- 宗教映画としてのスピルバーグ「未知との遭遇」
(ユング的心理分析の試み)←「インセプション」に言及
ラヴェルのソナタは氷で出来たナイフのよう。第2楽章のブルースはヒヤッとした透明感があり、無窮動の第3楽章では一心不乱に刃物を研いでいる情景が目に浮かんだ。
フランクも繊細で鋭い。終楽章のロンドは線が細く幽き雰囲気。知的に感情をコントロールした、けだし名演であった。
イザイの結婚祝いとして作曲され、イザイが初演したフランクのソナタの後、アンコールが「こどもの夢」という選曲は実に洒落ているなと想った。
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