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2016年5月18日 (水)

明日海りお 主演/ミュージカル「ME AND MY GIRL」と「マイ・フェア・レディ」の秘密

5月15日(日)宝塚大劇場で花組公演 ミュージカル「ME AND MY GIRL」を観劇。SS席。

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主演は明日海りお(ビル)、花乃まりあ(サリー)。以下役替りあり、この日は瀬戸かずや(ジョン卿)、鳳月 杏(ジャッキー)、芹香斗亜(ジェラルド)、柚香 光(弁護士:パーチェスター)、仙名彩世(公爵夫人:マリアおばさま)だった。

「ミー&マイガール」は1937年にロンドンで初演された。宝塚では1987年に剣幸、こだま愛主演で月組が初演。男性版「マイ・フェア・レディ」とも言われている。

「ミーマイ」でジョン卿がサリーの言葉使いを教育するために言語学者のヒギンズに依頼するという台詞が登場する。これは1986年ブロードウェイ再演版から採用されたネタらしい。

「マイ・フェア・レディ」は1956年にブロードウェイで初演された(イライザ:ジュリー・アンドリュース、ヒギンズ:レックス・ハリソン)。アイルランドのダブリンで生まれ、イギリスで活躍した劇作家ジョージ・バーナード・ショーの戯曲「ピグマリオン」(1913年初演)が原作である。一方の「ミーマイ」はオリジナル台本であり、以上の経緯から推察すると「ピグマリオン」を参考にして執筆された可能性が高い。ちなみに「ピュグマリオーン」とはギリシャ神話に登場するキプロス島の王の名前である。

僕が映画「マイ・フェア・レディ」を初めて観たのは大学生の頃だが、どうも結末が釈然とせず、モヤモヤした気持ちがずーっと尾を引いた。花売り娘のイライザはヒギンズ教授に拾われ彼の自宅に住み込みで言葉の特訓を受ける。そして令嬢として社交界デビューに成功する。しかし大げんかの末、イライザは若い貴族フレディと結婚すると言って家を飛び出す。落ち込むヒギンズ。やがて戻ってきたイライザの声を聞いたヒギンズは椅子に座ったまま、彼女の方を振り向きもせず次の台詞を言って幕となる。

"Where the devil are my slippers ? "(私の上履きはどこかね?)

イライザが戻ってきてくれたことは嬉しいのだが、素直になれず照れ隠しにこんなことを言ってしまうのだという流れは判る。しかし、果たして「マイ・フェア・レディ」は世間で言われるようなラブ・ストーリーなのだろうか?だってこれ、女中に言う台詞であって、決して愛の告白じゃないよね?ヒギンズは上流社会の人間だが、そういう階級の夫が妻にこんなこと言わないでしょう。どうして上履きが決め台詞なの??

戯曲「ピグマリオン」の最後、イライザはヒギンズの家から出て行ったきり戻ってこない。ショーは後年出版された台本の後書きに「後に起こったこと」("'What Happened Afterwards")という文章を書いた。その中でヒギンズとイライザが結婚するという結末はあり得ず、イライザはフレディと結婚することになるはずだと明確に述べている。

「ピグマリオン」は1938年に映画化され、ショーも脚本作りに携わった。映画では一旦出て行ったイライザが戻ってくる場面で終っている。しかし、この結末はプロデューサーがショーに無断で変更したというのが史実らしい。

「マイ・フェア・レディ」に対して、得体の知れない不可解な気持ちを持ち続け20年が経った。そして最近漸く、納得の行く新解釈が閃いた。独身主義者ヒギンズ=ゲイだと仮定したらどうだろう?彼は言語研究家ピッカリング大佐と意気投合し、自宅に招き入れる。つまり夫婦生活を始めるわけだ。そしてそこにイライザを養女として迎え、彼らは擬似家族になる。ハッピーエンド。娘になら「上履きはどこだ?」と尋ねても不自然じゃない。あとヒギンズは度を越したマザコンだしね(ゲイの男性は「どうして結婚しないのですか?」と訊かれると、「母が素晴らし過ぎたので」と答えることが多い。ニーノ・ロータも淀川長治氏もそうだった)。

ヒギンズとピッカリングをシャーロック・ホームズとワトソンの関係に凖(なぞら)える人もいるが、僕はホームズとワトソンは同性愛ではないと想う。何故ならワトソンは小説の語り部だからホームズの一挙手一投足を読者に伝えるために同居する必要があった。しかしヒギンズもピッカリングも語り部ではないので同棲する必然性がない。この違いは大きい。ここでハッと気がついた。映画「マイ・フェア・レディ」を監督したジョージ・キューカーはゲイだった! Wikipediaにも記載されている事実である。端からそういう意図で創作されていたのだ。

以上のように考えれば、実はミュージカル「ラ・カージュ・オ・フォール」と「マイ・フェア・レディ」は同じ話なのだということが判る。「ラ・カージュ」はゲイ・カップルの話であり、彼らには”息子”がいて愛情を持って育てている。

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さて、宝塚花組公演の話に戻ろう。

僕は脳天気でアホみたいなこのミュージカルが大好きなのだけれど、唯一不満なのはフィナーレ。大階段(おおかいだん)が出てきても地味なんだよね。3組の結婚式という演出意図だから仕方ないが、トップが大きな羽を背負って降りてこないのはやはり寂しい。でも第1幕最後「ランベス・ウォーク」のシーンはいつ観ても多幸感で胸がいっぱいになる(「多幸感」とは薬物などがもたらす過度の幸福感を指すが、ミュージカルはいわば麻薬/魔法みたいなものだから構わないだろう)。

以前より明日海りお美の化身だと信じている。彼女が「エリザベート」のトートや光源氏を演じた時はとてもこの世の者とは想えなかった。僕にとっては幽玄の人なのだ。だから逆に、今回のビルは似合っていないと感じた。だって彼女が下町のランベス育ちで、コックニー訛りを喋るなんてイメージからかけ離れているんだもん。むしろ過去に演じたジャッキーの方が良かった。

花乃まりあのサリーは違和感なくはまり役。歴代ベストかも。鳳月 杏は悪くないが、明日海りおのジャッキーには敵わない。今までベテランの専科が演じてきたマリアおばさま役を振られた仙名彩世は若いながら、よく健闘していた。そして最高だったのが柚香 光。コミカルな役なのに男役の美学をしっかり追求しており、こんな格好いいパーチェスターは初めて!いや〜惚れ惚れした。

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コメント

「マイ・フェア・レディー」で、ヒギンズとピカリングがゲイなんて、なんて大胆な解釈!でも、妙に納得できます。僕も大劇場で「ミー・アンド・マイ・ガール」見てきました。ランベス・ウォークは二階席も大いに盛り上がりましたよ。

投稿: 最後のダンス | 2016年5月21日 (土) 13時07分

最後のダンスさん、ハンドル名から察するに、「エリザベート」がお好きなんですね?

つい先日、「マイ・フェア・レディ」の原作戯曲「ピグマリオン」の映画版(1938年)の500円DVDを購入して観ました。脚色にバーナード・ショーも参加しています。驚くべきことに歌がない以外、台詞はほとんど一緒でした。「スペインの雨は主に平野に降る」から、上履きの決め台詞まで。原作に忠実にミュージカル化されていたのです。そしてヒギンズとピッカリングの関係はやはりゲイだと確信しました。

投稿: 雅哉 | 2016年5月21日 (土) 21時52分

はじめまして♪
12日観劇してきました。
明日海りお様、ビル役似合ってませんよね♪ 激しく同意です。嬉しいです。
ご本人はビル役がお好きだそうですが… 劇は楽しめましたが、最後まで違和感ありました…(;ω;)
トートや光源氏は本当に美しくて美しくて…最高でしたが。 
私見で申し訳ないですが…ちなみにビルは月組の霧矢大夢の飄々感がビル!だった。サリーは、私のなかでは、愛希れいかがはまり役だったように思いました。ちょっと庶民的なお顔立ちが下町感あふれていてマリーアントワネット役よりぴったりでした(悪意はありません!愛希さん好きですから
いつも楽しく読ませて頂いてます♪ありがとうございます。

投稿: ごまちゃん | 2016年5月29日 (日) 23時56分

ごまちゃんさん、コメントありがとうございます。僕は愛希れいかさんのマリー・アントワネットが好きなんです。ここだけの話ですが花總まりさんより良かった(その代わり花ちゃんのシシーは天下無双です!)。

きりやんのビルは観てないんですよ。たしか博多座のみでしたよね?僕が一番気に入っているのはDVDで観た天海祐希です。

投稿: 雅哉 | 2016年5月30日 (月) 08時11分

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