ブロードウェイ・ミュージカル「グランド・ホテル」GREENチーム(宝塚版にも言及)
5月6日(金)梅田芸術劇場へ。ミュージカル「グランド・ホテル」を観劇。
このミュージカルは1989年にトミー・チューン振付・演出によりブロードウェイで初演、トニー賞12部門にノミネートされ、演出賞、振付賞ほか5部門で受賞した。
日本では1993年に宝塚月組が初演。涼風真世の退団公演であり、他に麻乃佳世(ハリウッドスターを夢見るタイピスト:フラムシェン)、天海祐希(グルシンツカヤの付き人:ラファエラ)、久世星佳(借金まみれのフェリックス男爵)らが出演した。訳詞は「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」の岩谷時子、演出はトミー・チューンと岡田敬二。トミー・チューンは併演された「BROADWAY BOYS」も振付・演出した。
僕が宝塚歌劇を初めて観たのが98年宙組「エリザベート」(花總まり・姿月あさと)なので、当然宝塚版「グランド・ホテル」は未見。版権の問題でビデオ/DVD化もされていないが、ライヴCDは所有している。風の便りに聞くと、涼風の退団公演はファンの間で非常に不評で、その後再演されることもなかった。問題は作品の質ではなく「宝塚に相応しくない」ことにあった。涼風が演じたオットーは余命わずかと宣告されたユダヤ人の会計士。「男役の格好よさ」からかけ離れた役柄である。しかも「かなめさん(←涼風こと)の卒業という晴れの舞台で、死にかけた役とは失礼極まりない!」というわけである。ところが!!なんと2017年に珠城りょうのトップお披露目公演として久しぶり(24年ぶり)に本作が宝塚月組で再演されると、つい先日発表があった(演出は岡田敬二と生田大和)。ファンの反応が気になるところ。
さて、今回演出を担当したのはイギリスのトム・サザーランド。結末の違うGREENチームとREDチームに別れ、僕が観たのはGREEN。
トムの演出はミュージカル「タイタニック」もそうなのだが、簡素な舞台装置でそつなく進行してゆく。大変見やすいが、同時に華やかさに欠け物足りなくも感じる。また今回は椅子やテーブルの上で踊る場面が多く、気になった。一寸品(高級感)がない。オリジナルの舞台にはないスペシャルダンサー(湖月わたる)も蛇足だなぁ。「エリザベート」のトートとか「蜘蛛女のキス」の二番煎じ。しかし最後にヒトラー率いるナチス・ドイツ台頭に絡めるコンセプトはすごく良かった!感動した。物語がよく出来ているし、少なくとも「タイタニック」より遥かに好き。
1920年代のベルリンが舞台。冒頭のナンバー"The Grand Parade"はミュージカル「キャバレー」の"Willkommen"や、クルト・ヴァイル「三文オペラ」の"Mack The Knife(メッキー・メッサーのモタリート)"に繋がっている。ちなみに「三文オペラ」は1928年にベルリンで初演された。
「グランド・ホテル」は1932年にハリウッドで映画化され、第5回アカデミー作品賞を受賞した。ある特定の場所に集う人々が織りなす様々な人生模様を切り取ったプロットは後に「グランド・ホテル形式」と呼ばれ、数多くのバリエーション(追随者)を生み出した。「大空港」や「タワーリング・インフェルノ」などパニック映画がその代表であり、三谷幸喜脚本・監督「有頂天ホテル」や、荒井晴彦脚本「さよなら歌舞伎町」、そしてミュージカル「タイタニック」もそう。
出演者は中川晃教(オットー)、昆夏美(フラムシェン)、宮原浩暢(フェリックス男爵)、安寿ミラ(年老いたバレリーナ:グルシンツカヤ)、樹里咲穂(ラファエラ)、光枝明彦(オッテンシュラーグ医師)ほか。中川は相変わらずの上手さであり、宮原の歌唱力にも感銘を受けた。そして安寿ミラの貫禄!
終演後は宮原浩暢(バリトン)が所属し、音楽大学を卒業した男性5人によるヴォーカル・グループ"LE VELVETS"のミニ・コンサート付き。曲目は、
- オー・ソレ・ミオ
- ミュージカルRENTより"Seasons of Love"
- ミュージカル「エリザベート」より”闇が広がる”
- アルビノーニのアダージョ
- 歌劇「トゥーランドット」より”誰も寝てはならぬ”
こちらも中々、聴き応えあり。"LE VELVETS"の佐藤隆紀(テノール)は今年秋に梅芸で上演されるブロードウェイ・ミュージカル「スカーレット・ピンパーネル」(石丸幹二・安蘭けい主演)にも出演するとのことなので、そちらも愉しみだ。
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