被害者はさらに傷つけられる〜映画「ルーム」
つい先日、千葉大学工学部の学生が埼玉県の中学校1年生(当時)女子を誘拐し、2年間監禁していたという事件が発覚した。それとよく似た題材を扱ったのが映画「ルーム」である。公式サイトはこちら。
評価:A+
ブリー・ラーソンがアカデミー主演女優賞を受賞。他に作品賞・監督賞・脚色賞の全4部門にノミネートされた。5歳の少年を演じたジェイコブ・トレンブレイ君(放送映画批評家協会賞で若手男優・女優賞を受賞)が素晴らしい。撮影当時は8歳だったとか。「ニュー・シネマ・パラダイス」のサルヴァトーレ・カシオ君とか、「シックス・センス」のハリー・ジョエル・オスメント君に匹敵する名演技だと想った。
監督はアイルランド・ダブリン出身レニー・アブラハムソン。原作者のエマ・ドナヒューが映画の脚色も担当している。彼女もアイルランド・ダブリン生まれだそうだ(カナダ在住)。
母子が監禁されているのは映画の前半。後半は【その後】をどう生きるかが焦点となり、後者が本作の肝である。それは生まれた時から【部屋】しか知らなかった少年が、驚きに満ちた【世界】を発見していく旅でもある。
主人公(母)はテレビのインタビューに応じるが、「どうしてもっと必死に逃げようとしなかったの?」と責められる。千葉大生の事件と構図が全く同じである。レイプの被害者に対して「お前が誘ったんだろ?」と合意の関係を示唆するようなものであり、心ない、破廉恥な行為である。どうして死にたいくらい辛い体験をした者が、さらに傷つけられなければならないのだろう?こういう輩は地獄に落ちろ!
最後に【部屋】に立ち戻った母子はそこで何を語り合うのか?我々観客には、ただただ滂沱の涙が待ち構えているのだ。
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