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2016年4月19日 (火)

諏訪内晶子 ヴァイオリン・リサイタル

4月16日(土)ザ・シンフォニーホールへ。

Suwa

諏訪内晶子(ヴァイオリン)、エンリコ・パーチェ(ピアノ)で、

  • モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第22番イ長調 K.305
  • グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ 第3番
  • 武満徹:悲歌(エレジー)
  • フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
  • クライスラー:クープランのスタイルによる才たけた貴婦人
  • ラフマニノフ:ヴォカリーズ (アンコール)

モーツァルトのソナタは天衣無縫。第2楽章の変奏曲はピアノ単独の変奏あり。やはりこの時代の作品は「ヴァイオリン伴奏付きピアノ・ソナタ」というべき性質のものだなと実感した。諏訪内の演奏はピリオド・アプローチではないが、弾き始めと音尻はノン・ヴィブラートになっており、ハイブリッド(=異種のもの《現代奏法・時代奏法》を組み合わせた)仕様だった。

グリーグの第1楽章 第1主題は力強く、仄暗い情熱を感じさせる。一転して叙情的な第2主題は白夜の微睡み。第2楽章は森の風景で、中間部は湖のほとりで出くわしたすばしっこい鹿とか栗鼠を思わせる。これはグリーグの作曲小屋があるトロールハウゲン(「妖精の丘」の意)の風景(写真はこちら)と無関係ではないだろう。そして第3楽章は民族舞踏の賑やかさ。けだし名曲。初めて実演を聴いたが大いに気に入った。

武満の「悲歌」はゆったりとして瞑想的。

フランクのソナタは循環主題に儚さが感じられ、第2楽章では激流が渦巻くよう。そして終楽章は春の訪れを歓び、生を謳歌する。

アンコールのヴォカリーズは絹のように柔らかい音色で妖しく響く。

いやぁ、文句なし。これぞ円熟の極みと言うべきコンサートであった。

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