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2016年3月30日 (水)

石丸幹二 主演/ブロードウェイ・ミュージカル「ジキル&ハイド」

3月26日(土)梅田芸術劇場へ。

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ミュージカル「ジキル&ハイド」は1997年4月21日から2001年1月7日まで1543回ブロードウェイのプリマス劇場で上演された。脚本/作詞はレスリー・ブリッカス、作曲はフランク・ワイルドホーン。

日本では山田和也演出で2001年に初演された。僕は2007年に梅芸で観ている。ジキル:鹿賀丈史(オリジナル・キャスト=OC)、ルーシー:香寿たつき(OC:マルシア)、エマ:鈴木蘭々(OC:茂森あゆみ)、アターソン:戸井勝海だった。今回のキャストはジキル:石丸幹二、ルーシー:濱田めぐみ、エマ:笹本玲奈、アターソン:石川禅、ダンヴァース卿:今井清隆。

前回観劇した時は死ぬほど詰まらなかった。拷問のようだった。兎に角、鹿賀丈史が酷すぎ。演歌調で音程をすくい上げるようにして合わせる歌い方がすごく嫌だし、演技も大根。ジキルからハイドへの豹変ぶりも全く表現出来ていない。

ところが今回キャストが一新され、初めてこのミュージカルの面白さ、真価が分かった。役者の力で作品が輝くことって本当にあるんだね。

石丸幹二はテレビドラマ「半沢直樹」でブレイクしたわけだが、僕は劇団四季時代から知っている。ロイド=ウェバーの「アスペクツ・オブ・ラブ」や、ミシェル・ルグラン作曲のミュージカル「壁抜け男」日本初演初日@福岡シティ(現:キャナルシティ)劇場を観た。石丸は劇団四季時代と比較して声量が増し、力強い歌唱で観客を魅了した。ジキルとハイドの演じ分けも見事であった。第1幕終盤の有名なナンバー「時は来た(This Is The Moment)」は聴き応えがあった。

濱田めぐみは歌が上手いと言えないが、演技力でカヴァー。厭世的で、熟し過ぎて腐る一歩手前の感じが役柄にぴったりだった。

笹本玲奈は歌唱力が抜群だし可愛いし文句なし。石川禅演じるジキルの友人もいい味出していた。

ロバート・ルイス・スティーヴンソンの原作小説は1886年に出版された。今や解離性同一性障害(多重人格)の代名詞になっている。ジキル的側面(善意)とハイド的側面(悪意)は誰しも少なからず持っている。清廉潔白で非の打ち所のない人なんて滅多にいないし、逆に根っからの大悪党も稀だろう。我々の内面ではジキル的なものとハイド的なものがしのぎを削りながら日々葛藤し、日常生活を営んでいる。また今回初めて気が付いたのは、娼婦ルーシーと婚約者エマという2人の女性も表裏一体であるという事だ。一方は薄幸で、貧しく、汚れており(dirty)、もう一方は親に愛され、生活は豊かで、純真(innocent)。ルーシーは最後にハイドに刺され、に染まり、エマは純白のウェディングドレスに身を包む。非常に対照的に描かれている。

「ジキル&ハイド」の物語は示唆に富むメタファーとして、現代人に多くのことを語りかけてくるのである。

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コメント

雅哉 様

少し時間が経ってしまってからのコメント、失礼します。

「ジキルとハイド」観ました。
何といっても石丸幹二さんが素晴らしかったです。

私も四季時代のCDは聴いています。
以前から舞台も何本か観ていますが、モンテクリスト伯もトートもロジャー・アスカムも、悪くはないのですが、優等生な出来で、物足りなく思っていました。
(比較対象として間違ってるかもですが、蛮幽鬼や9days Queenの上川隆也は凄かった)

今回の「ジキルとハイド」の圧倒的歌唱力、ハイドへの変貌の突き抜けた感は本当に素晴らしかったです。
ご本人も半沢直樹の浅野支店長の経験で、前回とはハイドに対する解釈が違うと仰っていましたね。

次回の石丸さんの作品に期待です。

因みに私は石川禅さんのファンです。
年齢不詳、役へのなりきりはいつも凄いと思っています。
冒頭、ジョン卿の台詞で始まりますが、禅さんと判らず…やられました(笑)


追伸…「秒速5センチメートル」観ました。
女性としての希望と、現実には有り得ないだろうという想いとで最後までドキドキでした。
素敵な作品を教えて頂き、ありがとうございました。

投稿: *pino* | 2016年4月 9日 (土) 12時02分

*pino*さま

コメントありがとうございます。石丸幹二は「一皮むけた」という感じですね。僕も今回の「ジキル&ハイド」が彼のベスト・パフォーマンスだと確信します。

石丸でどうしても観たいのが宮本亜門演出スティーヴン・ソンドハイム作曲の「サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ」です。東京公演はあったのですが、大阪まで来ませんでした。是非再演を!

「秒速5センチメートル」はカルト映画ですが、専らこれを偏愛しているのは野郎どもなんです。新海誠は女性人気がない。だから気に入って頂けたようで凄く嬉しいです。是非「君の名は。」も映画館でご覧ください(これがヒットしてくれないと困るのです。新海誠は宮﨑駿・細田守を継ぐ者にどうしてもなってもらわなくては)。

投稿: 雅哉 | 2016年4月10日 (日) 21時09分

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