映画「リリーのすべて」と「ライアンの娘」
評価:A
「リリーのすべて」は米アカデミー賞に主演男優、助演女優、美術、衣装デザインの4部門にノミネートされ、スウェーデン出身のアリシア・ヴィキャンデル(27)が助演女優賞を受賞した。原題は"The Danish Girl"、直訳すれば「デンマークの女の子」。映画公式サイトはこちら。
1928年世界で初めての性別適合手術を受けたデンマークの画家アイナー・ヴェイナーのが主人公(実話)。因みについ先日、「バウンド」「マトリックス」を監督したウォシャウスキー兄弟がふたりとも性別適合手術(ラナが2008年、リリーが2016年)を受け、ウォシャウスキー姉妹になったことでも話題となった。
トランスジェンダーがテーマなわけだが、「性同一性障害」という日本語は差別意識を生む可能性があるということで、日本精神神経学会は「性別違和」という呼称に変更すると表明している。これは「障害者」が「障碍者/障がい者」になった動きと連動したものだろう。因みに現在では「精神分裂病」という言葉は使われず、「統合失調症」になった(←持って回った言い方で、意味が判り難い)。
アイナーの妻ゲルダを演じたアリシア・ヴィキャンデルがとにかく可愛い💞。胸はちっちゃいけど。彼女はティーンの頃にサウンド・オブ・ミュージックやレ・ミゼラブルに出演経験があるそうなので、是非ミュージカル映画に出て欲しい。
あと冒頭の風景の描き方がデヴィッド・リーン監督の「ライアンの娘」みたいだなと直感した。するとラストシーンにアリシア・ヴィキャンデルの首に巻いたマフラーが風で飛んでいってしまう描写が登場。ビンゴ!!←「ライアンの娘」の冒頭ではヒロイン・ロージーのパラソルが風で空中高く舞い上がり、ラストシーンではロージーの帽子が飛んで行くのだ。帰宅して調べてみると案の定、トム・フーパー監督がデヴィッド・リーンへの憧れを吐露している記事を発見した→こちら!
「リリーのすべて」を観ながら映画「五線譜のラブレター」のことを想い出した。ゲイだった作曲家コール・ポーターのセクシャリティを受け入れ、彼のことを生涯支え続けた妻リンダの物語。リンダとゲルダの印象がピタリと重なった。いい話だ。
ところでアリシア・ヴィキャンデルは最初から最後まで出ずっぱりなんだけれど、これって主演じゃないの??助演女優に分類されたのは恐らく映画会社の戦略で、主演女優賞より獲り易いと判断されたのだろう。
今年のアカデミー賞は黒人俳優が全くノミネートされず、多様性の欠如が問題となった。これは人種問題だけに留まらず、保守的なアカデミー会員はトランスジェンダー/ゲイへの差別意識も強い。「ロード・オブ・ザ・リング」のガンダルフ役で知られるイアン・マッケランは英ガーディアン紙のインタビューで次のように語った。「ゲイであることを公表している俳優がアカデミー賞を受賞したことはない。これは偏見によるものなのかな。それとも単なる偶然なのかな」
本命と言われた「ブロークバック・マウンテン」は結局、アカデミー作品賞を受賞出来なかったし、今年も「キャロル」や「リリーのすべて」は作品賞・監督賞にノミネートされていない。偏見以外の何物でもないだろう。
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