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2016年3月18日 (金)

何故人はフィクション(物語)を求めるのか?

2011年3月11日に発生した東日本大震災、あなたはいつの時点で福島原発がメルトダウンしていると気が付きましたか?

東京電力が正式に公表したのは5月24日だった。事故から70日以上が経過していた。

2016年2月25日、NHKニュースは次のように報道した。

東京電力は、福島第一原子力発電所の事故発生から2か月たって、核燃料が溶け落ちる、メルトダウンが起きたことをようやく認め大きな批判を浴びましたが、当時の社内のマニュアルでは事故発生から3日後にはメルトダウンと判断できたことを明らかにし、事故時の広報の在り方が改めて問われそうです。

福島第一原発の事故では1号機から3号機までの3基で原子炉の核燃料が溶け落ちるメルトダウン=炉心溶融が起きましたが、東京電力はメルトダウンとは明言せず、正式に認めたのは発生から2か月後の5月でした。

つまり東電と日本政府は事故発生から3日後(3月14日)に事態を正確に認識していたにもかかわらず、2ヶ月以上公表を控えていたことになる。「パニックを避ける」ためという、実にくだらない理由で。

でももしあなたが5月24日の公表を聞いて「ええっ、本当はメルトダウンしていたの!?」と驚いたのだとしたら、余りにも世間知らずと言えるだろう。【政府が国民を騙る筈はない/テレビで報道されていることは全て真実だ】と信じている者はお子様である。ありもしない【大量破壊兵器】を口実にイラクを侵略したアメリカ合衆国(共和党政権)も同じ穴の狢(ムジナ)と言えるだろう。

震災から4日後、僕はこうツイートした。

緊急事態宣言が発令された非常時に為政者は本当のことを語らない。それは当然のことである。だから自国の政府は信用出来ないと判っていたので、僕は首相官邸が情報をコントロール出来ない、海外メディアからの報道を収集することに専念した。

今振り返るとこういう未曾有の危機に直面して、沢山の映画を観ていたことが正しい判断を下す役に立ったなとつくづく想う。

人間が持つ、他の動物にない特性として「物語(フィクション)を欲する」ということが挙げられる。どうして我々は小説を読み、芝居や映画を観に行くのか?その行為は何かの役に立つのだろうか?

小説を読んだり、映画や芝居を観ることは愉しい。時を忘れさせてくれる。それは多分、「もうひとつの人生」を生きることなのだ。「風と共に去りぬ」のおかげで僕はアメリカの南北戦争の実態を知り、奴隷制度とか、土地の大切さとか色々なことを学んだ。「シンドラーのリスト」や「サウルの息子」を観れば、ユダヤ人強制収容所がどんな場所だったのか、ナチスがそこで何をしたのかを目撃することになる。シェイクスピアの「リチャード三世」や「オセロ」に登場するイアーゴーを通して人の悪意を、映画「エリザベス」や「エリザベス:ゴールデン・エイジ」によりエリザベス1世(The Virgin Queen)の人となり、イギリスの歴史を知る。「十二人の怒れる男」で陪審員制度の仕組みや、その理念が判る。ミュージカル「RENT」や「ラ・カージュ・オ・フォール」(あるいはその元となった映画「Mr.レディ Mr.マダム」やハリウッド・リメイク「バードゲージ」)を観ればゲイの人達の生態やものの考え方が理解出来るようになる。そう、物語は人間の多様性や、共通する行動パターン(=人間科学/行動科学)を学ぶための扉なのである。自分が一生かけても遭遇出来る筈のないことを擬似体験出来る。何度も生まれ変わってくる輪廻転生や、パラレル・ワールドを同時並行で生きるように。

我々は勉強のために小説を読んだり芝居・映画を観るわけではない。しかし沢山吸収すれば、必ず得るものはある。人生はより豊かになり、見聞を広めて賢くなれる。その見返りは大きい。

ー映画は人生の教科書ですー  (映画評論家/解説者 淀川長治)

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