「マネー・ショート 華麗なる大逆転」を観る前に知っておくべき2,3の事項
評価:B
映画公式サイトはこちら。アカデミー賞では作品賞・監督賞・助演男優賞(クリスチャン・ベール)・編集賞にノミネートされ、脚色賞を受賞した。
リーマン・ショックの真実を描く。まず邦題が酷い。原題は"The Big Short"。投資の世界でShortは「売り」を意味する。Longが「買い」だ。だからThe Big Shortとは「爆売り」「でっかい空売り」という意味。マネー・ショートで意味分かる人いる?日本の配給会社・東和ピクチャーズの映画宣伝部は万死に値する。
本作を鑑賞するにあたり、金融業界用語の基礎知識は持っていたほうがいい。そうでないとチンプンカンプンで途中で置いてきぼりにされかねない。
MBS(Mortgage Backed Securitites 不動産担保証券)=モーゲージ債:不動産を購入する際の担保を証券化したもの。質草の代わりだね。モーゲージ(Mortgage)は住宅ローンと同義だと考えれば判り易い。
サブプライムローン:MBSを低所得者限定の住宅ローンに特化させたもの。(Sub:下層の、Prime:優良)の意味で、要するに焦げ付きやすい不良品。
CDO(Collateralized Dept Obligation 債務担保証券):債務者が「きっちり借金を返しますよ」という約束を証券化したもの。
ここでスタンダード&プアーズ(S&P)、フィッチ、ムーディーズなど格付け会社の連中がゴールドマン・サックス(金融グループ/投資銀行)から接待を受け、おだてられてサブプライムローンを証券化したCDOを最高評価のAAAにするという欺瞞で世間が欺かれることになる。
CDS(Credit Default Swap 債務不履行保険):CDOが破産した時のための保険制度。つまり毎月保険料を払う代わりに、CDOが焦げ付いたらガッポリ儲かる仕組み。デフォルトとは債務不履行のことである。
僕はこれらの言葉を頭の中に叩き込んで行ったので、何とか困らずに済んだ。
ウォール街で働き、サブプライムを思いついた連中はクソ(shit)だということがこの映画の結論である。バブルに浮かれ、顧客から預かった金を融資やローンとして回し、マネー・ゲームに明け暮れ、自ら汗水たらして労働することはない。生産性はまるでない虚栄の市。
業界の仕組みは手に取るように判る。確かに面白い。ビジネス書を読んでいるようだ。では人間ドラマとしてはどうか?僕はそこに疑問を感じた。
本作に一番近いのは、伊丹十三監督「マルサの女」だなと想った。知識は確かに増える。でもそこに、物語としての感動はあるか??
結局最後に残ったのは徒労感と虚しさだけだった。悪い奴ほどよく眠る。そういうことだ。
アカデミー作品賞を受賞した「それでも夜は明ける」でも感じたことだが、プロデューサーを兼ねるブラッド・ピットが美味しい役を取り過ぎ。これで儲けられるとニヤニヤしている若い連中に「今回の金融危機でどれくらいの失業者や死者が出ると思っているんだ!!」と一喝する役なのだが、いやいや、あんたもリーマン・ショックで稼いだんでしょ。いい人ぶるなよ、同じ穴のムジナじゃね?とツッコミを入れた。
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