早霧せいな主演 宝塚雪組「るろうに剣心」+オマケ「新年鏡割り風景」付き
まず2016年元旦に宝塚大劇場ロビーで行われた鏡開きの様子をご覧いただこう。今年は雪組のトップコンビ、早霧せいなと咲妃みゆが登場した。
このコンビはお披露目となった「ルパン三世」および、次の公演「星逢一夜」も宝塚大劇場・東京宝塚劇場ともに全日程満席にした。これは劇場改築後初の快挙だそうである。
鏡開きの後、酒は来場者に振る舞われた。
また元旦には拝賀式に出席するため、正装の袴で楽屋入りする生徒さんの姿も見ることが出来る。
さて、宝塚雪組「るろうに剣心」のチケット入手は困難を極めた。仕事の都合で土日しか行けないので、元々状況としては不利であった。友の会先行一次・二次、チケぴ、e+の先行、貸切公演など申し込んではことごとく落選。9連敗という惨状であった。
そこで当日券は気合を入れて一番乗りを果たした。11時公演、15時公演の座席券は50枚ずつ出た(超過すると立ち見券に)。午前6時30分で当日券の並びが11時公演:20人、15時公演:5人。7時10分には11時公演:50人、15時公演:15人。8時30分には11時公演:150人、15時公演:50人に膨れ上がった。最終的に発売開始の9時30分には合わせて300人近くに達した。僕は幸運にも1階10列目の席を確保!
宝塚歌劇の芝居には大きく分けて2つの分野があり、1つが和物、もう1つがコスチューム・プレイを主体とする洋物である。「るろうに剣心」は作・演出・小池修一郎初の和物ということで話題になったが(外部作品では「MITSUKO」がある)、後半でパリ・オペラ座を模した洋館が舞台となり、そこで舞踏会シーンがあってヒロインの薫(咲妃みゆ)が豪華なドレスを着るので、和洋折衷ー1粒で2度美味しい作品に仕上がっている。
元新撰組隊士・加納惣三郎(望海風斗)という新キャラクターが登場するが、惣三郎はアヘンを密造し、儲けた金で洋館を建てる。そして薫を略取し、十字架に縛り付けたりする。……途中で気が付いた。彼の役回りは明らかに「オペラ座の怪人」じゃないか!ファントムはパリ・オペラ座の地下湖に棲んでいるし、大きな十字架も出てくる。惣三郎が嘗て恋い焦がれていた太夫(←花魁じゃないよ)の面影を薫に追い求める設定も、モーリー・イェストンのミュージカル「ファントム」でエリック(ファントム)がクリスティーヌに死んだ母の姿を重ねるのに似ている。
組子が客席に降りてきてのチャンバラもあり、とにかくアクション・シーン満載の痛快娯楽大作である。すこぶる面白い!剣心がアヘンを盛られて幻想を見、過去の自分(殺人者)と対峙する場面も素晴らしい(ある意味これは「ジキルとハイド」だな)。見事な脚色である。紛うことなき小池修一郎の最高傑作であろう。牛鍋店「赤べこ」の場面や京都の花街・嶋原の「太夫道中」(練り歩き)などちゃんと娘役の見せ場も作り、さすが手練、抜かりがない。
実写映画版「るろうに剣心」は3部作である。佐藤健がはまり役で、前田敦子が彼に惚れた気持ちもよく判る。薫を演じた武井咲は可憐だった。大友啓史監督の演出も見事なのだが、香港で修行を積んだアクション監督:谷垣健治がとにかく凄い。殺陣(たて)の革命であった。
この長大な物語を休憩時間を除くと2時間半という尺に収めた小池の手腕は只事ではない。宝塚歌劇の新な代表作の登場に快哉を叫びたい。賭けてもいい、再演は必ずある。原作のエピソードはまだまだあるわけだから、「ベルばら」の《オスカル編》《フェルゼンとマリー・アントワネット編》《オスカルとアンドレ編》みたいに、シリーズ化しても良いのではないか?
キャストについて。映画の佐藤健もはまり役なのだが、早霧せいなはその優しさと誠実さが滲み出ていて、剣心そのものであった。天晴!
咲妃みゆが登場した時、化粧の濃さにびっくりした。せっかく地が可愛いのに、メイクで損していると想った。「星逢一夜」ではもっと薄化粧だったのに……。でその疑問は第2幕で氷解した。洋館でのコスチューム・プレイに備えての事だったのだ。それは正に「伯爵令嬢」そのものであり、まるで西洋人形みたいだった。
望海風斗は悪役の魅力を放散。ピカレスク・ロマンの香り。歌も上手い。
斎藤一(映画:江口洋介)を演じた彩風咲奈は格好良かった。立ち姿が素敵。
高荷恵(映画:蒼井優)役の大湖せしるは背が高いなぁと想って観ていたのだが(167cm)、元々男役だったんだね。本作が退団公演となる。凛とした美しさがあった。
四乃森蒼紫(映画:伊勢谷友介)役の月城かなとは長身(172cm)で美形の男役。耽美(ちょっと病んでいて退廃的)な雰囲気があり、いっぺんに魅了された。彼女にばかりオペラグラスを向けている観客もあり、こりゃぁ人気が出るわ。歌もいける。
宝塚雪組の快進撃はまだまだ続きそうだ。
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