宮川彬良/オオサカ・シオンによる「アメリカの夢」
2月12日(金)ザ・シンフォニーホールへ。宮川彬良/オオサカ・シオン・ウィンド・オーケストラの定期演奏会を聴く。
- J.ウィリアムズ(J.カーナウ編):映画「11人のカウボーイ」
- J.ボック(宮川彬良編):ミュージカル「屋根の上のヴァイオリン弾き」
- スーザ:行進曲集 ①海を超える握手②ワシントン・ポスト
③美中の美④雷神(以上F.フェネル校訂)⑤星条旗よ永遠なれ - ガーシュウィン(J.バーンズ編):「ガール・クレイジー」より
エンブレイサブル・ユー〜チャンスを待ちながら〜アイ・ガット・リズム
〜私のためじゃない(But Not For Me) - D.エリントン(J.バリー/宮川彬良編):映画「コットン・クラブ」より
①ミニエ・ザ・ムーチ②ムード・インディゴ③ソリチュード
④ザ・ムーチ⑤コットン・クラブ・ストンプ・ナンバー2 - 若いってすばらしい(アンコール)
まず最初に宮川彬良からの挨拶があった。「久しぶりにシンフォニーホールに帰ってきました。私がプロのオーケストラを初めて指揮したのはこのホールで開催された大阪フィル・ポップス・コンサートでした。その後大阪市音楽団と出会い、何度かここで演奏し、彼らがオオサカ・シオン・ウインド・オーケストラとして再出発する時に音楽監督就任を請われました。私はこの楽団の音楽監督になって本当に良かった。リハーサルでも彼らは涙がでるくらい一生懸命に練習します」と。
ジョン・ウィリアムズの「11人のカウボーイ」「屋根の上のヴァイオリン弾き」(アカデミー編曲賞受賞)については下記記事で語った。
「11人のカウボーイ」吹奏楽版は全日本マーチングコンテストでも演奏される人気曲だ。そちらの感想はこちら。宮川彬良の指揮は生き生きしたリズム感で、しなやかな歌に満ちている。ただライヴ・レコーディングされていたのだが、トランペットとホルン・ソロのミスが目立ったので、本番をそのまま使う訳にはいかないだろう(多分ゲネプロのテイクが採用される筈)。
「屋根の上のヴァイオリン弾き」の編曲は宮川彬良の書き下ろし。①しきたり②サンライズ・サンセット③結婚式の踊り〜ボトル・ダンスという構成。「しきたり」はフルートのソロで開始され、途中からクラリネット・ソロが加わる。「サンライズ・サンセット」はイングリッシュ・ホルンのソロとファゴットが印象的。色彩感豊かなアレンジで難易度もしっかりあり、これは全日本吹奏楽コンクールの自由曲として勝負出来る内容になっているのではないだろうか?
スーザのマーチは堅固なリズムに乗り、キレとメリハリのある演奏。くっきりと浮かび上がる対旋律。聴き慣れた曲の筈なのに、とても新鮮だった。なお「美中の美」の原題は"The Fairest of the Fair"で、これは「博覧会の美女」と解釈も出来るとのこと。成る程。「星条旗よ永遠なれ」は強弱のニュアンスが豊かだった。
「アルヴァマー序曲」や交響曲第3番が有名なジェイムズ・バーンズによるガーシュウィンの編曲はJazzyで都会的。ハーモニーが凝っていて最後はゴージャスに締め括られた。素晴らしいアレンジだった。
「コットン・クラブ」ではピアノを弾き振りした宮川彬良の解説によると、それまでラグライムとかディキシー・ランド・ジャズしか無かった1920年代にディーク・エリントンが彗星のごとく現れ、新風を吹き込み、このジャンルは芸術に昇華する第一歩を踏み出したと(ストイックなジャズの誕生)。禁酒法時代(1920-1933)のナイトクラブは黒人が演奏し、踊り、観客は全員白人。黒人たちには内面からフツフツと沸き起こる怒りがあっただろうし、そこには何かしら緊張感があったろう。客が踊り出すのはそれから30年後のグレン・ミラーの登場を待たなければならなかった。
ここでダイナマイトしゃかりきサ~カスという3人のボーカル・グループが加わった。「ムード・インディゴ」はクラリネットとミュートを付けたトランペット、トロンボーンの3重奏が印象的。「ソリチュード」は女声ソロ。「コットン・クラブ・ストンプ・ナンバー2」は最後シオンの楽員全員が起立し、ノリノリの演奏。これぞビッグバンド・ジャズ!客席も大いに盛り上がった。
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