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2016年2月25日 (木)

児玉宏(編曲)「ニーベルングの指環」管弦楽版(第二版)/大阪交響楽団 定期

2月24日(水)ザ・シンフォニーホールへ。

大阪交響楽団の音楽監督・首席指揮者である児玉宏の退任記念演奏会を聴く(定期はこれが最後だが、後日名曲コンサートでも指揮台に立つ)。

今回はNHKのテレビ収録が入っており、4月17日(日)21時〜Eテレ「クラシック音楽館」で放送が予定されている。曲目は、

  • ジークフリート・ワーグナー:交響詩「憧れ」
  • リヒャルト・ワーグナー(児玉宏):楽劇「ニーベルングの指環」抜粋

ジークフリート・ワーグナーの楽曲は2009年6月の大響定期(旧称:大阪シンフォニカー)でも聴いている。当時のレビューはこちら。「ジークフリート牧歌」誕生秘話についても触れた。

交響詩「憧れ」の冒頭は憂いがあり、哀しい。やがて音楽は儚い夢を描き、次第に熱を帯びてくる。後半はオペラティックな展開で、金管のハーモニーがワルハラ城のライトモティーフ(示導動機)を彷彿とさせる。僕はジークフリートの「憧れ」の対象って父リヒャルトなんじゃないかと想った。

総計15時間以上に及ぶリヒャルト・ワーグナーの長大な楽劇「ニーベルングの指環」を管弦楽版に編纂する試みは今までいくつか行われてきた。代表例を挙げるとまず指揮者のロリン・マゼール編曲版【言葉のない「指環」】がベルリン・フィルの演奏で1987年にテラークに録音されている。演奏時間70分弱。これはマゼールがNHK交響楽団に客演した時にも取り上げられた。解説文はこちら

オランダ放送フィルの打楽器奏者ヘンリク・デ・ヴリーガーが1991年にアレンジした【オーケストラル・アドヴェンチャー】は演奏時間約60分。デ・ワールトが主要レパートリーとし、パパ・ヤルヴィがレコーディングしている。

また指揮者の準・メルクル編曲版もある。こちらは50分弱。

今回児玉宏が編纂したバージョンは75分。これは丁度、CDに収録出来るギリギリの分量である。暗譜で指揮した。児玉の解釈は筋肉質で引き締まったワーグナー。重厚だけれど重くなり過ぎない、絶妙な匙加減。第2夜「ジークフリート」には躍動感があり、第3夜「神々の黄昏」からは内なる燃焼が生み出すエネルギーの威力を感じた。

すこぶる愉しい演奏だった。ただ「厳選!これだけは観て(聴いて)おきたいオペラ・ベスト20」でも書いたが、僕が「ニーベルングの指環」全曲を聴いたのは高校生の時。カール・ベーム指揮バイロイト祝祭管弦楽団・合唱団のLPレコード16枚を繰り返し掛けた。そのBOXには譜例付きライトモティーフ一覧が添付されており、それを頭に叩き込んでいたので「黄金を失ってラインの乙女たちが嘆いているなぁ」とか、「雲の彼方にワルハラ城が光り輝いている」「ローゲ(火の神/半神)の炎がブリュンヒルデを取り囲んだ」など一場面一場面が手に取るように判るのだが、オペラを知らない人がこの抜粋を聴いても退屈かも知れないな、とも想った。どうだろう、NHKで放送するときは各場面の内容を示すテロップを入れたほうが理解が深まるのではないだろうか?あと案内人(Navigator)がピアノ演奏を交えて一連のライトモティーフを紹介すれば、より親切だろう。

それにしても改めて「ニーベルングの指環」は破格の傑作だと思い知らされた。この作品がなければ「サロメ」「ばらの騎士」などリヒャルト・シュトラウスの歌劇は存在しなかったし、それはコルンゴルトの歌劇「死の都」や彼の映画音楽(「シー・ホーク」「ロビン・フッドの冒険」)、そしてジョン・ウィリアムズの「スター・ウォーズ」やハワード・ショアの「ロード・オブ・ザ・リング」にも言えるだろう。

「ワルキューレの騎行」では当然、映画「地獄の黙示録」や宮﨑駿「崖の上のポニョ」の嵐の場面を想い出したし(ポニョの父フジモトは彼女のことを"ブリュンヒルデ"と呼んでいる)、「ジークフリート牧歌」と共通するライトモティーフが登場するとルキノ・ヴィスコンティ監督の映画「ルートヴィヒ」(コジマの誕生日にワーグナー家の階段で初演された場面)が脳裏に蘇った。

なお序夜「ラインの黄金」で黄金のライトモティーフが登場する直前の「アルベリヒが乙女たちを追う」場面で第2ヴァイオリン首席奏者の弓がプツンと切れた。彼女は振り向いて直ぐ後ろの奏者と弓を交換、そしてその次、その次という具合に弓の交換リレーが行われ、一番後方の奏者が演奏中にステージ袖に引っ込み、しばらくして修理した弓を手にして戻ってきた。テレビの音楽番組などでこういう場合の対処法は聞いていたけれど、珍しい光景が見れてラッキー!

児玉宏との出会いは2006年5月12日の定期演奏会、ブルックナーの交響曲第7番だった。その後、彼が指揮する大響定期は全て聴いた。ワクワクする知的冒険を味わい、本当にいい夢を見させてもらった。特に印象深かったのはニーノ・ロータの交響曲第4番「愛のカンツォーネに由来する交響曲」(日本初演)かな。またいつか、大阪に来てください!待ってます。

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