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映画「キャロル」と「太陽がいっぱい」の秘密

評価:A

C

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パトリシア・ハイスミス原作、ルネ・クレマン監督の「太陽がいっぱい」(1960、仏)を初めてテレビで観たのは僕が中学3年生か高校1年生位の頃だった。当時はミステリーというか犯罪小説の面白さに魅了された。主人公のトム・リプリー(アラン・ドロン)が成功の甘き香りに酔いしれている時に突如カタストロフィーが訪れ、全てが瓦解するラスト・シーンには鮮烈な印象を受けた。特にそれが台詞ではなく、映像で描かれているところに演出の並々ならぬセンスを感じた。

それからしばらく経って、多分大学を卒業した頃だろうか、映画評論家の淀川長治氏が本作を「ホモセクシャルの映画」と断言していることを知った。驚天動地だった。「一体どこが??」当時の僕にはサッパリ解らなかった。

しかし人生経験を積み、例えばルキノ・ヴィスコンティ監督のイタリア映画「ベニスに死す」「ルートヴィヒ 神々の黄昏」「家族の肖像」や、ミュージカル「ラ・カージュ・オ・フォール」とかその原作となったフランス映画「Mr.レディMr.マダム」やメル・ブルックス脚本・監督の「プロデューサーズ」を観たりして、次第にゲイの生活様式とか彼らの性癖・嗜好がどのようなものか理解するようになった。

そうしたことを踏まえて、30歳を超えて再び「太陽がいっぱい」を観た。そして漸く腑に落ちた。これは正真正銘のゲイ映画であると。つまりリプリーとその恋人(見掛け上は友人)フィリップの痴話喧嘩がもつれて殺人に至る物語であった。心底驚いた。巧妙にカモフラージュされていたのである。しかし確かに、例えばフィリップの取り巻きはそのファッションから言っても明らかにゲイとして描かれてる。世界で最初にこの事実を見抜いた淀長さんは凄いと想った。ちなみに彼はゲイだった。

「太陽がいっぱい」の音楽を作曲したニーノ・ロータもゲイであった。

ニーノ・ロータはアラン・ドロンが出演したイタリア映画「若者のすべて(ロッコとその兄弟)」と「山猫」の音楽も担当している。この2作を監督したルキノ・ヴィスコンティはバイセクシャルだった。ヴィスコンティはアラン・ドロンを愛し、彼とロミー・シュナイダー(ルートヴィヒ 神々の黄昏)主演でマルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」の映画化も画策していたが、実現には至らなかった。ヴィスコンティ晩年の恋人は「地獄に堕ちた勇者ども」「ルートヴィヒ 神々の黄昏」「家族の肖像」に主演したヘルムート・バーガーである。ヴィスコンティに囲われている彼を見てロミー・シュナイダーは”バーガー嬢”、あるいは”バーガー夫人”とからかったという。

マット・デイモン、ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロウが出演した「リプリー」(1999)は「太陽がいっぱい」のリメイクである(より原作に忠実と言われている)。

後からよくよく考えてみると、やはりパトリシア・ハイスミス原作のアルフレッド・ヒッチコック監督「見知らぬ乗客」(1951)も同性愛映画であった。主人公に交換殺人を持ちかける男はゲイとして設定されていたのだ。ちなみにヒッチコックが全編をワン・カットでとった実験映画「ロープ」(1948)もゲイを描いている。

さて漸く「キャロル」にたどり着いた。これは女性の同性愛をテーマにしている。パトリシア・ハイスミス自身が百貨店でアルバイトをしていた時の実体験を元に原作が書かれているのだが、内容が当時のタブーに触れていたためクレア・モーガン名義で1952年に出版された(原題がThe Price of Salt、後にCarolに改題)。

兎に角、ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラに尽きる。アカデミー賞ではケイトが主演、ルーニーが助演女優賞にノミネートされているが、けったいな話だ。誰の目から見てもダブル主演以外の何物でもなく、このケースはミュージカル映画「シカゴ」と同じ。「シカゴ」ではレニー・ゼルウィガーが主演女優賞にノミネートされ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズが助演女優賞を受賞した。これはあくまで映画会社の都合で決められたこと。2人とも主演女優の扱いだと票が割れて共倒れになる危険性があるからだ。

切ない映画だ。そしてガラスを通して見た映像が多いことが特徴的である。それは窓ガラスであったり、タクシーの窓であったり、テレーズ(ルーニー・マーラ)が持ち歩くカメラのファンダー越しであったりする。そのフィルターを介することで世界が違って見えるのだ。

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