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2016年2月

2016年アカデミー賞大予想!

では第88回アカデミー賞の受賞予想である。相当自信がある(鉄板)部門には◎を付けた。過去に僕がレビューを書いた作品はタイトルをクリックすればそちらに飛ぶ。

今年はアカデミー作品賞の行方が混迷を極めている。可能性があるのは3作品。「スポットライト 世紀のスクープ」「レヴェナント:蘇りし者」「マネー・ショート 華麗なる大逆転」のどれが受賞してもおかしくない。可能性はそれぞれが33.3%ずつ。予想サイトも意見が完全に割れている。僕は状況を分析し、監督やプロデューサーはあの作品、役者たちはこの作品に投票するだろうと票の流れを熟考したうえで総合的に「スポットライト」と判断した。「クラッシュ」が作品賞を受賞した第78回と同じ現象が起こるだろうと踏んだのだ。

監督賞は2年連続でアレハンドロ・G・イニャリトゥだろう。僅かにジョージ・ミラー(マッドマックス 怒りのデス・ロード)の芽も残っている。恐るべきは撮影賞エマニエル・ルベツキの3年連続受賞!間違いない。これは衣装デザイン賞でイーディス・ヘッドが1950年-1952年に達成して以来、64年ぶりの快挙である。

主演男優賞はレオで500%確実。授賞式で彼のスピーチも愉しみだが、テレビカメラは発表の瞬間、必ずレオの親友ケイト・ウィンスレットの表情を狙っている筈。彼女のはしゃぎっぷりに注目だ。ケイトはBBCのインタビューで授賞式出席をボイコットするかどうか尋ねられ、こう答えている。「今年はレオの年になるんじゃないかってことを強く感じているのよ。彼は世界一親しい私の友だちだし、その彼を応援しに行かないなんて考えられないの」

助演男優賞でどうしてスタローンと予想するか説明しよう。今年のアカデミー賞授賞式は不穏な空気に包まれている。演技部門で有色人種が1人もノミネートされていないからだ。人種差別と非難の声が上がり、ボイコット運動も巻き起こった。先日発表された全米映画俳優組合賞(Screen Actors Guild Awards)では助演男優賞を黒人のイドリス・エルバ(ビースト・オブ・ノーネーション)が受賞、完全な番狂わせであった(当然彼はアカデミー賞にノミネートされていない)。つまり役者たちは今、「俺達は人種差別主義者ではない!」と火消しに躍起になっていることを示している。ではアカデミー賞授賞式でそれを示すためにはどうすればいいか?それはシルベスター・スタローンに投票するしかないのである。スタローンは自分の大切な「ロッキー」シリーズの最新作「クリード」を若い黒人の監督(ライアン・クーグラー)と黒人の役者(マイケル・B・ジョーダン)に託した。今回の騒動が勃発した時、彼は監督にこう尋ねた。「ライアン、どうしよう? 俺がここにいるのは正に君のおかげだと思うからさ。君が俺に(授賞式に)行って欲しいなら行くし、行って欲しくないなら行かないよ」「そうしたら彼は『僕は行って欲しいよ』って言ったんだ。彼はそういう男なんだよ。俺が出席することで、映画を代表してもらいたいのさ」いいやつ(Nice Guy)だ。つまりスタローンは全米の映画俳優を代表して黒人の映画人を褒め称え、友情を示す重要な責務を負うことになったのである。彼の受賞スピーチに注目せよ!

今年の僕の大博打は作曲賞である。映画誌や有名サイトのほぼ全てが、「ヘイトフル・エイト」のエンニオ・モリコーネを予想している。イタリアの巨匠で今まで(名誉賞以外に)受賞経験がなく、恐らくこれが最後のチャンス。可能性が極めて高いことは僕も重々承知している。しかし何故ジョン・ウィリアムズを選んだか?決まっているじゃないか、だよ、。それしかない。例えば今年「リリーのすべて」で主演男優賞にノミネートされているエディ・レッドメイン夫人(もの凄い美人!)に記者が「今年は誰が受賞すると予想されますか?」と尋ねたとしよう。夫人は果たして「そりゃ勿論、ディカプリオに決まっているじゃない!」と答えるだろうか?絶対にない、「エディ」だ。それと同じことである。僕は小学生の時に映画館で「スター・ウォーズ(エピソード4)」を観て、それ以来ジョンのファンだ。裏切る訳にはいかない。それに「ヘイトフル・エイト」はサントラをダウンロードして全曲聴いたけれど、はっきり言って決して良いと思えない。モリコーネの傑作群「ニュー・シネマ・パラダイス」とか「続・夕陽のガンマン」「夕陽のギャングたち」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」「ウエスタン(Once Upon a Time in the West)」「ミッション」などと比較すると明らかに劣る。むしろこの程度の出来で、モリコーネにオスカーを贈るのは失礼なのではないか?というのが僕の意見である。

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児玉宏(編曲)「ニーベルングの指環」管弦楽版(第二版)/大阪交響楽団 定期

2月24日(水)ザ・シンフォニーホールへ。

大阪交響楽団の音楽監督・首席指揮者である児玉宏の退任記念演奏会を聴く(定期はこれが最後だが、後日名曲コンサートでも指揮台に立つ)。

今回はNHKのテレビ収録が入っており、4月17日(日)21時〜Eテレ「クラシック音楽館」で放送が予定されている。曲目は、

  • ジークフリート・ワーグナー:交響詩「憧れ」
  • リヒャルト・ワーグナー(児玉宏):楽劇「ニーベルングの指環」抜粋

ジークフリート・ワーグナーの楽曲は2009年6月の大響定期(旧称:大阪シンフォニカー)でも聴いている。当時のレビューはこちら。「ジークフリート牧歌」誕生秘話についても触れた。

交響詩「憧れ」の冒頭は憂いがあり、哀しい。やがて音楽は儚い夢を描き、次第に熱を帯びてくる。後半はオペラティックな展開で、金管のハーモニーがワルハラ城のライトモティーフ(示導動機)を彷彿とさせる。僕はジークフリートの「憧れ」の対象って父リヒャルトなんじゃないかと想った。

総計15時間以上に及ぶリヒャルト・ワーグナーの長大な楽劇「ニーベルングの指環」を管弦楽版に編纂する試みは今までいくつか行われてきた。代表例を挙げるとまず指揮者のロリン・マゼール編曲版【言葉のない「指環」】がベルリン・フィルの演奏で1987年にテラークに録音されている。演奏時間70分弱。これはマゼールがNHK交響楽団に客演した時にも取り上げられた。解説文はこちら

オランダ放送フィルの打楽器奏者ヘンリク・デ・ヴリーガーが1991年にアレンジした【オーケストラル・アドヴェンチャー】は演奏時間約60分。デ・ワールトが主要レパートリーとし、パパ・ヤルヴィがレコーディングしている。

また指揮者の準・メルクル編曲版もある。こちらは50分弱。

今回児玉宏が編纂したバージョンは75分。これは丁度、CDに収録出来るギリギリの分量である。暗譜で指揮した。児玉の解釈は筋肉質で引き締まったワーグナー。重厚だけれど重くなり過ぎない、絶妙な匙加減。第2夜「ジークフリート」には躍動感があり、第3夜「神々の黄昏」からは内なる燃焼が生み出すエネルギーの威力を感じた。

すこぶる愉しい演奏だった。ただ「厳選!これだけは観て(聴いて)おきたいオペラ・ベスト20」でも書いたが、僕が「ニーベルングの指環」全曲を聴いたのは高校生の時。カール・ベーム指揮バイロイト祝祭管弦楽団・合唱団のLPレコード16枚を繰り返し掛けた。そのBOXには譜例付きライトモティーフ一覧が添付されており、それを頭に叩き込んでいたので「黄金を失ってラインの乙女たちが嘆いているなぁ」とか、「雲の彼方にワルハラ城が光り輝いている」「ローゲ(火の神/半神)の炎がブリュンヒルデを取り囲んだ」など一場面一場面が手に取るように判るのだが、オペラを知らない人がこの抜粋を聴いても退屈かも知れないな、とも想った。どうだろう、NHKで放送するときは各場面の内容を示すテロップを入れたほうが理解が深まるのではないだろうか?あと案内人(Navigator)がピアノ演奏を交えて一連のライトモティーフを紹介すれば、より親切だろう。

それにしても改めて「ニーベルングの指環」は破格の傑作だと思い知らされた。この作品がなければ「サロメ」「ばらの騎士」などリヒャルト・シュトラウスの歌劇は存在しなかったし、それはコルンゴルトの歌劇「死の都」や彼の映画音楽(「シー・ホーク」「ロビン・フッドの冒険」)、そしてジョン・ウィリアムズの「スター・ウォーズ」やハワード・ショアの「ロード・オブ・ザ・リング」にも言えるだろう。

「ワルキューレの騎行」では当然、映画「地獄の黙示録」や宮﨑駿「崖の上のポニョ」の嵐の場面を想い出したし(ポニョの父フジモトは彼女のことを"ブリュンヒルデ"と呼んでいる)、「ジークフリート牧歌」と共通するライトモティーフが登場するとルキノ・ヴィスコンティ監督の映画「ルートヴィヒ」(コジマの誕生日にワーグナー家の階段で初演された場面)が脳裏に蘇った。

なお序夜「ラインの黄金」で黄金のライトモティーフが登場する直前の「アルベリヒが乙女たちを追う」場面で第2ヴァイオリン首席奏者の弓がプツンと切れた。彼女は振り向いて直ぐ後ろの奏者と弓を交換、そしてその次、その次という具合に弓の交換リレーが行われ、一番後方の奏者が演奏中にステージ袖に引っ込み、しばらくして修理した弓を手にして戻ってきた。テレビの音楽番組などでこういう場合の対処法は聞いていたけれど、珍しい光景が見れてラッキー!

児玉宏との出会いは2006年5月12日の定期演奏会、ブルックナーの交響曲第7番だった。その後、彼が指揮する大響定期は全て聴いた。ワクワクする知的冒険を味わい、本当にいい夢を見させてもらった。特に印象深かったのはニーノ・ロータの交響曲第4番「愛のカンツォーネに由来する交響曲」(日本初演)かな。またいつか、大阪に来てください!待ってます。

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カティア・ブニアティシヴィリ/ピアノ・リサイタル 2016

2月22日(月)いずみホールへ。カティア・ブニアティシヴィリを聴く。

Khathiaheader

2016

彼女はジョージア(旧称グルジア)出身の28歳。ジョージアは黒海の東側(南コーカサス)に位置し、トルコやアゼルバイジャンと国境を接している。黒海の対岸にあるのがルーマニアとブルガリア。以前はソビエト連邦の構成国だったが、現在は共和制国家である。しかしジョージアと聞くとどうしてもアメリカの州を連想してしまうので、グルジアの方がしっくり来るな。因みに関西フィルのコンサートマスター、ギオルギ・バブアゼもジョージア出身である。

僕がカティアに魅せられたきっかけは、NHK BSプレミアムで放送された「森の中のコンサート」だった。美人のお姉さんとの連弾もあった。

Forest

今回の曲目は、

  • ムソルグスキー:展覧会の絵
  • リスト:三つの演奏会用練習曲より「軽やかさ」
  • リスト:超絶技巧練習曲 第5番「鬼火」
  • リスト:パガニーニによる大練習曲 第3番「ラ・カンパネッラ」
  • リスト:半音階的大ギャロップ
  • リスト/ホロヴィッツ編曲:ハンガリー狂詩曲 第2番
  • ストラヴィンスキー:ペトルーシュカよりの3楽章

カティアは真っ赤なドレスで登場。膝のところでキュッと細くなり、そこから足元にかけて末広がりとなるデザインなので、その姿はまさしく人魚であった。いや〜これを書いたらいけない、負けだとは重々承知しているのだが、ファースト・インプレッションは「胸デカっ!」……彼女を見にきたのではない、音楽を聴きに来たのだと何度も自分に言い聞かせるのだが、どうしても眼はそこに釘付けになる。男の悲しい性(さが)である。ボン・キュッ・ボンのセクシー・ダイナマイトを見ながら「誰かに似ているな?」と考えていて、途中で気がついた。「マレーナ」「007 スペクター」のモニカ・ベルッチ(モニカは「イタリアの宝石」と呼ばれている)である。

Poster

会場の客は8割が男。終演後のサイン会は100人以上の長い列が出来たが、意外なことに女性もちらほらいた。因みに僕は参戦せず。己に勝った!(←何が?)

ここからはまじめに音楽の話をしよう。

「展覧会の絵」《プロムナード》はゆったり、静かに開始される。《こびと》はグロテスク。《古城》は鄙びた雰囲気を醸し出し、《テュイルリーの庭》はすばしっこい。《ビドロ(牛舎)》は重々しく引きずるようで、《カタコンベ》はペダルを多用し残響を活かして地下室のエコー(木霊)を描く。《ババ・ヤーガの小屋》は激しく凶暴で、《キエフの大門》ではスケールの大きな音楽が展開された。

リストの練習曲は羽のように軽やかで、絹のように滑らか。「鬼火」の超絶技巧には目が眩む。「ラ・カンパネッラ」は繊細な弱音が魅力的。「半音階的ギャロップ」には加速する興奮と熱狂があった。舌を巻くカティアのテクニックはジョルジュ・シフラやマルク=アンドレ(マルカンドレ)・アムランに匹敵するなと想った。「ハンガリー狂詩曲」はリズムと歌わせ方に強烈な民族色を感じた。彼女には「21世紀の爆演ピアニスト」という称号こそ相応しい!「ジョルジュ・シフラの再来」でもいいかも。

「ペトルーシュカ」は鮮やかな色彩感と勢いがあった。荒々しく、野性味のあるストラヴィンスキー。デモーニッシュで型破り、自由奔放な演奏だった。呆気にとられた。聴衆が熱狂したことは言うまでもない。なお、「森の中のコンサート」でも彼女は「ペトルーシュカ」を弾いていたので、この楽曲は十八番なのだろう。

一度是非、カティアとモルドヴァの暴れ馬、パトリツィア・コパチンスカヤ(ヴァイオリン)のデュオ・リサイタルを聴いてみたい!スリリングで手に汗握る、破天荒なパフォーマンスが展開されることであろう。

大阪のお客さんは拍手を止めず、しつこくせがむのでアンコールは何と4曲の出血大サービス。

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「月の光」は息が長く、静謐な演奏。爆演だけじゃなく、しっとり精緻な演奏も出来るところが彼女の強みだろう。

最後は指を1本立てて「もう一曲だけよ」と可愛い仕草。弾き終わると「これでもうお終い♡」とチャーミングにピアノの蓋を閉め(客席から笑い)、お開きとなった。

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ロレンツォ・ギエルミ/ポジティフ・オルガン&チェンバロ・リサイタル with 平崎真弓

2月14日(日)兵庫県立芸術文化センター小ホールへ。

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イタリアの鍵盤奏者ロレンツォ・ギエルミのオルガンは以前2回いずみホールで聴いている。2009年のレビューと、2012年のレビュー。平崎真弓はミュンヘン国立音楽大学でバロック・ヴァイオリンを学びブルージュ国際古楽コンクールのバロック・ヴァイオリン部門で3位となった。現在はコンチェルト・ケルンのコンサート・ミストレスを務める。曲目は、

  • ヴィヴァルディ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ニ短調 op.2-3 RV14
  • J.S.バッハ:協奏曲 ニ短調 BWV974(原曲A.マルチェロ:オーボエ協奏曲)
    【オルガン・ソロ】
  • パスクイーニ:かっこうの歌によるトッカータ【オルガン・ソロ】
  • コレッリ:ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ「ラ・フォリア」
  • J.S.バッハ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ト長調 BWV1021
  • J.S.バッハ:イタリア協奏曲【オルガン・ソロ】
  • J.S.バッハ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ホ短調 BWV1023
  • コレッリ:ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ op.5-3より
    第5楽章 アレグロ(アンコール)
  • J.S.バッハ:管弦楽組曲 第3番よりアリア(アンコール)

ヴィヴァルディの通奏低音はポジティフ・オルガン、バッハの2曲はチェンバロが使用された。

ヴィヴァルディは優美。「かっこうの歌によるトッカータ」は可愛らしい音色で朴訥で典雅、軽やかな演奏だった。足ペダルの使用なし。

コレッリのヴァイオリンは激しく技巧的。嵐を感じさせた。

大バッハのソナタには凛とした美しさがあった。

アンコールで弾かれたG線上のアリアは、ほぼノン・ヴィブラートなので透明感があった。平崎真弓は初めて聴いたが、優れた古楽奏者だった。

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早霧せいな主演 宝塚雪組「るろうに剣心」+オマケ「新年鏡割り風景」付き

まず2016年元旦に宝塚大劇場ロビーで行われた鏡開きの様子をご覧いただこう。今年は雪組のトップコンビ、早霧せいな咲妃みゆが登場した。

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このコンビはお披露目となった「ルパン三世」および、次の公演「星逢一夜」も宝塚大劇場・東京宝塚劇場ともに全日程満席にした。これは劇場改築後初の快挙だそうである。

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鏡開きの後、酒は来場者に振る舞われた。

また元旦には拝賀式に出席するため、正装の袴で楽屋入りする生徒さんの姿も見ることが出来る。

さて、宝塚雪組「るろうに剣心」のチケット入手は困難を極めた。仕事の都合で土日しか行けないので、元々状況としては不利であった。友の会先行一次・二次、チケぴ、e+の先行、貸切公演など申し込んではことごとく落選。9連敗という惨状であった。

そこで当日券は気合を入れて一番乗りを果たした。11時公演、15時公演の座席券は50枚ずつ出た(超過すると立ち見券に)。午前6時30分で当日券の並びが11時公演:20人、15時公演:5人。7時10分には11時公演:50人、15時公演:15人。8時30分には11時公演:150人、15時公演:50人に膨れ上がった。最終的に発売開始の9時30分には合わせて300人近くに達した。僕は幸運にも1階10列目の席を確保!

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宝塚歌劇の芝居には大きく分けて2つの分野があり、1つが和物、もう1つがコスチューム・プレイを主体とする洋物である。「るろうに剣心」は作・演出・小池修一郎初の和物ということで話題になったが(外部作品では「MITSUKO」がある)、後半でパリ・オペラ座を模した洋館が舞台となり、そこで舞踏会シーンがあってヒロインの薫(咲妃みゆ)が豪華なドレスを着るので、和洋折衷ー1粒で2度美味しい作品に仕上がっている。

元新撰組隊士・加納惣三郎(望海風斗)という新キャラクターが登場するが、惣三郎はアヘンを密造し、儲けた金で洋館を建てる。そして薫を略取し、十字架に縛り付けたりする。……途中で気が付いた。彼の役回りは明らかに「オペラ座の怪人」じゃないか!ファントムはパリ・オペラ座の地下湖に棲んでいるし、大きな十字架も出てくる。惣三郎が嘗て恋い焦がれていた太夫(←花魁じゃないよ)の面影を薫に追い求める設定も、モーリー・イェストンのミュージカル「ファントム」でエリック(ファントム)がクリスティーヌに死んだ母の姿を重ねるのに似ている。

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組子が客席に降りてきてのチャンバラもあり、とにかくアクション・シーン満載の痛快娯楽大作である。すこぶる面白い!剣心がアヘンを盛られて幻想を見、過去の自分(殺人者)と対峙する場面も素晴らしい(ある意味これは「ジキルとハイド」だな)。見事な脚色である。紛うことなき小池修一郎の最高傑作であろう。牛鍋店「赤べこ」の場面や京都の花街・嶋原の「太夫道中」(練り歩き)などちゃんと娘役の見せ場も作り、さすが手練、抜かりがない。

実写映画版「るろうに剣心」は3部作である。佐藤健がはまり役で、前田敦子が彼に惚れた気持ちもよく判る。薫を演じた武井咲は可憐だった。大友啓史監督の演出も見事なのだが、香港で修行を積んだアクション監督:谷垣健治がとにかく凄い。殺陣(たて)の革命であった。

この長大な物語を休憩時間を除くと2時間半という尺に収めた小池の手腕は只事ではない。宝塚歌劇の新な代表作の登場に快哉を叫びたい。賭けてもいい、再演は必ずある。原作のエピソードはまだまだあるわけだから、「ベルばら」の《オスカル編》《フェルゼンとマリー・アントワネット編》《オスカルとアンドレ編》みたいに、シリーズ化しても良いのではないか?

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キャストについて。映画の佐藤健もはまり役なのだが、早霧せいなはその優しさと誠実さが滲み出ていて、剣心そのものであった。天晴!

咲妃みゆが登場した時、化粧の濃さにびっくりした。せっかく地が可愛いのに、メイクで損していると想った。「星逢一夜」ではもっと薄化粧だったのに……。でその疑問は第2幕で氷解した。洋館でのコスチューム・プレイに備えての事だったのだ。それは正に「伯爵令嬢」そのものであり、まるで西洋人形みたいだった。

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望海風斗は悪役の魅力を放散。ピカレスク・ロマンの香り。歌も上手い。

斎藤一(映画:江口洋介)を演じた彩風咲奈は格好良かった。立ち姿が素敵。

高荷恵(映画:蒼井優)役の大湖せしるは背が高いなぁと想って観ていたのだが(167cm)、元々男役だったんだね。本作が退団公演となる。凛とした美しさがあった。

四乃森蒼紫(映画:伊勢谷友介)役の月城かなとは長身(172cm)で美形の男役。耽美(ちょっと病んでいて退廃的)な雰囲気があり、いっぺんに魅了された。彼女にばかりオペラグラスを向けている観客もあり、こりゃぁ人気が出るわ。歌もいける。

宝塚雪組の快進撃はまだまだ続きそうだ。

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映画「キャロル」と「太陽がいっぱい」の秘密

評価:A

C

映画公式サイトはこちら

パトリシア・ハイスミス原作、ルネ・クレマン監督の「太陽がいっぱい」(1960、仏)を初めてテレビで観たのは僕が中学3年生か高校1年生位の頃だった。当時はミステリーというか犯罪小説の面白さに魅了された。主人公のトム・リプリー(アラン・ドロン)が成功の甘き香りに酔いしれている時に突如カタストロフィーが訪れ、全てが瓦解するラスト・シーンには鮮烈な印象を受けた。特にそれが台詞ではなく、映像で描かれているところに演出の並々ならぬセンスを感じた。

それからしばらく経って、多分大学を卒業した頃だろうか、映画評論家の淀川長治氏が本作を「ホモセクシャルの映画」と断言していることを知った。驚天動地だった。「一体どこが??」当時の僕にはサッパリ解らなかった。

しかし人生経験を積み、例えばルキノ・ヴィスコンティ監督のイタリア映画「ベニスに死す」「ルートヴィヒ 神々の黄昏」「家族の肖像」や、ミュージカル「ラ・カージュ・オ・フォール」とかその原作となったフランス映画「Mr.レディMr.マダム」やメル・ブルックス脚本・監督の「プロデューサーズ」を観たりして、次第にゲイの生活様式とか彼らの性癖・嗜好がどのようなものか理解するようになった。

そうしたことを踏まえて、30歳を超えて再び「太陽がいっぱい」を観た。そして漸く腑に落ちた。これは正真正銘のゲイ映画であると。つまりリプリーとその恋人(見掛け上は友人)フィリップの痴話喧嘩がもつれて殺人に至る物語であった。心底驚いた。巧妙にカモフラージュされていたのである。しかし確かに、例えばフィリップの取り巻きはそのファッションから言っても明らかにゲイとして描かれてる。世界で最初にこの事実を見抜いた淀長さんは凄いと想った。ちなみに彼はゲイだった。

「太陽がいっぱい」の音楽を作曲したニーノ・ロータもゲイであった。

ニーノ・ロータはアラン・ドロンが出演したイタリア映画「若者のすべて(ロッコとその兄弟)」と「山猫」の音楽も担当している。この2作を監督したルキノ・ヴィスコンティはバイセクシャルだった。ヴィスコンティはアラン・ドロンを愛し、彼とロミー・シュナイダー(ルートヴィヒ 神々の黄昏)主演でマルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」の映画化も画策していたが、実現には至らなかった。ヴィスコンティ晩年の恋人は「地獄に堕ちた勇者ども」「ルートヴィヒ 神々の黄昏」「家族の肖像」に主演したヘルムート・バーガーである。ヴィスコンティに囲われている彼を見てロミー・シュナイダーは”バーガー嬢”、あるいは”バーガー夫人”とからかったという。

マット・デイモン、ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロウが出演した「リプリー」(1999)は「太陽がいっぱい」のリメイクである(より原作に忠実と言われている)。

後からよくよく考えてみると、やはりパトリシア・ハイスミス原作のアルフレッド・ヒッチコック監督「見知らぬ乗客」(1951)も同性愛映画であった。主人公に交換殺人を持ちかける男はゲイとして設定されていたのだ。ちなみにヒッチコックが全編をワン・カットでとった実験映画「ロープ」(1948)もゲイを描いている。

さて漸く「キャロル」にたどり着いた。これは女性の同性愛をテーマにしている。パトリシア・ハイスミス自身が百貨店でアルバイトをしていた時の実体験を元に原作が書かれているのだが、内容が当時のタブーに触れていたためクレア・モーガン名義で1952年に出版された(原題がThe Price of Salt、後にCarolに改題)。

兎に角、ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラに尽きる。アカデミー賞ではケイトが主演、ルーニーが助演女優賞にノミネートされているが、けったいな話だ。誰の目から見てもダブル主演以外の何物でもなく、このケースはミュージカル映画「シカゴ」と同じ。「シカゴ」ではレニー・ゼルウィガーが主演女優賞にノミネートされ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズが助演女優賞を受賞した。これはあくまで映画会社の都合で決められたこと。2人とも主演女優の扱いだと票が割れて共倒れになる危険性があるからだ。

切ない映画だ。そしてガラスを通して見た映像が多いことが特徴的である。それは窓ガラスであったり、タクシーの窓であったり、テレーズ(ルーニー・マーラ)が持ち歩くカメラのファンダー越しであったりする。そのフィルターを介することで世界が違って見えるのだ。

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火星の人。

映画「オデッセイ」の評価はB+。大阪エキスポシティのIMAX次世代レーザー3Dで鑑賞。

Themartian

原題は"The Martian"つまり「火星の人」である。いや、良い映画だとは想うよ。ただ同系統の作品としては僕はアルフォンソ・キュアロンの「ゼロ・グラビティ」の方が哲学的で断然優れていると確信するし、むしろいろいろ欠点はあってもクリストファー・ノーランの「インターステラー」の方が好きだ。ノーランって熱いよね。リドリー・スコット監督の系譜から考えても「火星の人」は上位に来るとは言えないな。因みに僕が好きな順位をつけてみようか。

  1. ブレードランナー
  2. エイリアン
  3. ブラックホーク・ダウン
  4. デュエリスト/決闘者
  5. マッチスティック・メン
  6. 火星の人
  7. ブラック・レイン

こんな感じ。アカデミー作品賞を受賞した「グラディエーター」は好みじゃないので圏外。因みに「火星の人」の原作者がスコットの映画で一番好きなのは潔癖症の天才詐欺師を描く「マッチスティック・メン」だそうだ。

面白いなと想ったのはマット・デイモンは「インターステラー」でも惑星に一人取り残される役を演じているんだよね。「プライベート・ライアン」では戦場に一人取り残された彼を救出する作戦を描いているし。あと「インターステラー」のジェシカ・チャスティンも「火星の人」に出演している。ただ「インターステラー」でマットとジェシカは全く別の空間にいて、演技で絡む場面はなかった。

「火星の人」は明るくって前向きな(positive thinking)映画だ。そこが新機軸かな。

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大阪桐蔭吹部定演感想追補〜ロイド=ウェバーの「キャッツ」について。

先日、梅田隆司/大阪桐蔭高等学校吹奏楽部の定期演奏会を聴きながら、様々なことを想い出したのだが、うっかり書き忘れていたことがあった。そこで追補という形でもう少しお付き合い願いたい。それはアンドリュー・ロイド=ウェバーのミュージカル「キャッツ」のことである(2016年7月から大阪四季劇場で再演予定)。「キャッツ」の代表曲といえば、かつては魅力的な娼婦猫だったが今や美貌を失い、過去を懐かしむグリザベラが歌う《メモリー》だろう。実はこの《メモリー》、元々はロイド=ウェバーがミュージカル「サンセット大通り」の為に作曲したものだった。「サンセット大通り」の主人公ノーマ・デズモンドはサイレント(無声)映画時代の大スター。しかしトーキーになりすっかり仕事がなくなって現在はハリウッドの豪邸に閉じこもって暮らしているという設定。どうです、グリザベラの人生と重なるものがあるでしょう?ロンドンのオリジナル・キャストとしてグリザベラを演じたのはエレイン・ペイジ。彼女は「サンセット大通り」でもノーマを演じている(初演キャストではない)。

「キャッツ」の初演が1981年で「サンセット大通り」の初演が1993年。随分と温めていた企画だということがお分かり頂けるだろう。

「キャッツ」の想い出をもうひとつ。1984年に日本テレビ系で放送された倉本聰 脚本「昨日、悲別で」というドラマがあった。タップダンサーとしても知られる天宮良の主演デビュー作だった。北海道にある架空の街・悲別(かなしべつ)から夢を追いかけて東京に出てきた若者の物語で、彼は赤坂のショーパブ「タップチップス」で働くようになる。でそこでやっているショーがなんと「キャッツ」だった。《メモリー》も歌われて、ドラマの中で重要な役割を果たした。僕はこの作品が本当に好きで、「北の国から」より愛しているくらい。エンディングでフォークデュオ「風」が唄う「22才の別れ」が流れるのもお気に入りだった。

ところが!この「キャッツ」を使用していることが後から問題になった。二次使用権の契約を結んでいなかったためにテレビの再放送もビデオ化・DVD化も出来ない状況に追い込まれ、幻の名作になってしまったのだ。漸く2011年2月1日よりCS系日テレプラスにおいて再放送が開始されたので、いつの日にかソフトとして発売される日が来るかも知れない。

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That's Entertainment ! 〜大阪桐蔭高等学校吹奏楽部定期演奏会 2016

2月15日(月)フェスティバルホールへ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部の定期演奏会を聴く。創作ミュージカル「河内湖」が初演された昨年定期のレポートはこちら。「吹奏楽の神様」屋比久勲先生が登場した2014年の様子はこちら

大阪桐蔭のプログラミングの特徴は「うた」に満ちていることである。オペラやミュージカルからの選曲が中心となっており、僕の嗜好にピッタリ合致する。それが気に入り、度々彼らの演奏会に足を運ぶことになった。

どちらの記事も、大阪桐蔭の演奏について触れている。

さて今回の曲目は、

  • ワーグナー:歌劇「タンホイザー」歌の殿堂を讃えよう
  • リー(杉本幸一編):「ラ・マンチャの男」メドレー
    ラ・マンチャの男、アルドンサ、愛しのダルネシアへ、見果てぬ夢
  • ロイド=ウェバー(J.ヴィンソン、J.エドモンソン編):「キャッツ」メドレー
    序曲、ジェリクルソング、鉄道猫、おばさん猫、犯罪王、メモリー、マジック猫、猫からのご挨拶
  • J.ウィリアムズ(デ=メイ編):「スター・ウォーズ」メドレー
    メイン・タイトル、ヨーダのテーマ、帝国のマーチ、王女レイア、王座の間とエンド・タイトル
  • 高昌帥:ミュージカル「河内湖」ハイライト
    序曲、クジラの歌、恨み歌、大川よ
     
      (休憩)
  • 高昌帥(作詞:9期卒業生):合唱曲「憧れの響き」
  • プッチーニ(後藤洋編):歌劇「蝶々夫人」より
    序曲、広い世界を、さあ一足を、ご存知ないの、ある晴れた日に、この子をご覧に、さらば愛の巣
  • 甲子園応援リクエストコーナー
  • バーンスタイン(W.J.デュソイト編):「ウエストサイド物語」メドレー
    アイ・フィール・プリティ、マリア、何か起こりそう、トゥナイト、ひとつの心、クール、アメリカ、サムウェア
  • 〜三年間の歩み〜
    マクブルーム:The Rose  
  • 秋元康(作詞):365日の紙飛行機
  • 〜卒業生(9期生)を送る歌〜
    秦基博:ひまわりの約束 
  • E.ジョン、H.ジマー(カルビン・カスター編):「ライオンキング」メドレー
    サークル・オブ・ライフ、王様になるのが待ちきれない、命をかけて、準備をしておけ、ハクナ・マタタ、愛を感じて、キング・オブ・プライド・ロック
  • タケカワ・ユキヒデ(樽屋雅徳編):銀河鉄道999 アンコール
  • 星に願いを アンコール

定演前半はマーチングを主体とするパフォーマンス怒涛の攻勢。指揮をする梅田隆司先生と部員の一部はオケピ(オーケストラ・ピット)に陣取り、残る面々がステージ上に立つ。ステージはオケピの両サイドにもせり出している。写真で見てもらうのが手っ取り早いだろう。なお、「河内湖」の時だけ、梅田先生から写真撮影の許可が出た(桐蔭が版権を持っているため)。

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「タンホイザー」からごっつい音の塊に圧倒される。フェスティバルホールは2,700席。非常に広い空間である。ここで大阪フィルの定期演奏会も聴くわけだが、どうも2階席だと(特に弦の音が)遠くに感じる。しかし桐蔭は部員が180人いて、しかも管楽器+打楽器のみだから実にパワフル。フェスが狭く感じられた。

「ラ・マンチャの男」ではマーチングが客席にも降りてきて演奏が展開される。隊列が縦横揃っていて俯瞰で見るととても綺麗。昨年9月に部員全員で松本幸四郎主演の「ラ・マンチャの男」を鑑賞したそう。「キャッツ」は全員が付けた猫耳と尻尾が可愛かった。あと今回初めて気が付いたのだけれど、「犯罪王マキャヴィティ」の音楽ってヘンリー・マンシーニ作曲「ピンク・パンサー」のパロディになっているんだね。

ここで「キャッツ」の想い出を語ろう。僕が初めてこのミュージカルに出会ったのは1985年大阪初演の時。当時住んでいた岡山から新幹線ではるばる観に来た。梅田にテントを張った仮設劇場「キャッツ・シアター」だった。回り舞台を使用し、オープニングの音楽とともに裏返しになっていた舞台と客席前方が180度回転し、度肝を抜かれた。後に「オペラ座の怪人」「ミス・サイゴン」へと続くキャメロン・マッキントッシュ(プロデューサー)によるスペクタクル・ミュージカルの幕開けだった。グリザベラ役・久野綾希子(大阪府出身)の「メモリー」が絶唱だったことを今でも鮮明に憶えている(86年に退団)。2016年7月に「キャッツ」は大阪に帰ってくるが、現在は常設劇場での公演なのでこの180度回転の驚異は味わえない。

「スター・ウォーズ」は一般にドナルド・ハンスバーガー編曲版が演奏されることが多い。2016年6月に予定されているオオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ定期もそう。また金聖響/シエナ・ウインド・オーケストラのCDはメイン・タイトルを真島俊夫(「鳳凰が舞う」「三つのジャポニズム」の作曲家)が編曲している。ところが今回、大阪桐蔭は「指輪物語」で有名なヨハン・デ=メイ編曲だというから驚いた!そんなのがあるなんて知らなかった。これが凄くいい。特に「ヨーダのテーマ」と「王女レイア」で主旋律を支える木管の動きがユニークで、オリジナリティを感じた。

ここで「スター・ウォーズ」の想い出も少しだけ。エピソード4が日本で公開されたのは1978年だった(アメリカより1年遅れ)。当時僕は小学生。この年、山本直純司会(アシスタントが大場久美子)でTBSで放送されていた「オーケストラがやってきた」(プロデューサーは大原れいこ;倉敷・大原美術館をつくった大原孫三郎の孫)で「スター・ウォーズ」が取り上げられた。ホルスト「惑星」との比較のあと、《王座の間とエンド・タイトル》冒頭のファンファーレはメンデルスゾーン「結婚行進曲(夏の夜の夢)」、その後に続く穏やかな弦の旋律はエルガーの「威風堂々 第1番(希望と栄光の国)」を参考に作曲されているのではないかと両者が演奏され、とても面白かった。

「河内湖」ハイライトについては初演時にも想ったのだけれど、冒頭がミクロス・ローザ(ロージャ・ミクローシュ)作曲、映画「ベン・ハー」そっくりでニヤニヤしてしまった。いや、ディスっているのではなく、格好よくて大好きです。保護者の手作りという衣装も良かった。これは昨年3月に英語字幕付きでカーネギーホール@ニューヨークでも上演、好評だったとのこと。この時、生徒達はブロードウェイで「オペラ座の怪人」を観劇したそう。

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休憩を挟み「河内湖」と同じく高昌帥(こう ちゃんす)が作曲した合唱曲「憧れの響き」。純朴で透き通るような歌声が耳に心地いい。高昌帥といえば「ウインドオーケストラのためのマインドスケープ」とか吹奏楽のための風景詩「日が昇るとき」とか、時代の最先端を行く先鋭的な作曲家という印象が強いが、「河内湖」や「憧れの響き」はとても美しく親しみやすい旋律なので、その落差に驚かされる。考えてみれば武満徹もそういう人だった。彼のうた「小さな空」(←大好き!試聴はこちら)とか、「◯と△の歌」を聴いて、とても「ノヴェンバー・ステップス」と同じ人が書いたなんて信じられないもん。

大阪桐蔭は全日本吹奏楽コンクールの自由曲で「蝶々夫人」を演奏し、銀賞だった。以前にも書いたが、この曲で全国大会金賞に輝いた高校の団体は皆無である。今回聴いて感じたのは、ゆったりした曲想が多く、メリハリがない。桐蔭の演奏は磨き上げられた音で透明度が高いのだが、ハーモニーが薄く感じられる。何だか平板なのだ。演奏の質がどうこうというのではなく、選曲の問題であろう。はっきり言う、最初から最後まで叙情的な「蝶々夫人」は吹奏楽に合わない。同じ後藤洋が手がけたプッチーニの「トゥーランドット」は緩急がくっきりしていて素晴らしいアレンジなのだが、これは一体どうしたことか……。丸ちゃん(丸谷明夫先生)率いる淀工は自由曲において「ダフニスとクロエ」「大阪俗謡による幻想曲」の2曲ローテーションを長年続けているのだが、ダフニスと俗謡はどちらも非常にゆったりした部分とプレスト〜アレグロの急速な部分との対比が鮮明で、演奏効果が高い。つまり「上手く聴こえる」曲である。また リズムのキレの良さもアピール出来る。そういう意味で「蝶々夫人」は非常に分が悪い。

全日本吹奏楽コンクールの様子がBS朝日で放送された際、桐蔭の自由曲演奏に対して元・全日本吹奏楽連盟副理事長の塚田誠氏(指導者として全国大会金賞経験者)が「強音シンフォニックなブレンドがあるとよい」とひと言コメントされていた。同感である。これを僕なりに翻訳すると「要するに後藤洋の編曲がお粗末、サウンドがぺらぺら」ということになる。

甲子園応援リクエスト・コーナーでは桐蔭が甲子園で演奏した曲のリストから会場のリクエストで決める趣向。野球部の学生がバットでボールを客席方向に打ち、それをキャッチした人が権利を得る。選ばれたのは①上からマリコ②LOVE 2000。途中、ヒットを打った時とホームランを打った時のパターンも聴かせてくれて、すこぶる愉しかった!ただ僕としてはリストにあった「あまちゃん」「アフリカン・シンフォニー」「半沢直樹」が聴きたかったな。

「ウエストサイド物語」はノリノリの演奏。史上最強のパフォーマンスと言われるドゥダメル/シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ(視聴は→こちら!)に負けてないなと想った。むしろ桐蔭は、なんだか窮屈な演奏だった「蝶々夫人」ではなく、この生き生きした「ウエストサイド」でコンクールに勝負していれば金賞を穫れたのではないか?とすら僕には感じられた。最後に付け加えられたサムウェアは恐らくシンフォニック・ダンス(ポール・ラヴェンダー編)から持ってきたものだろう。ところでこれを読んでいるであろう桐蔭の生徒さんたちにお勧めしたい。是非チャイコフスキーの幻想序曲「ロメオとジュリエット」を聴いてみてください。特に終盤、低弦(チェロ、コントラバス)の動きに注目!サムウェアのメロディーが密やかに奏でられるから。レニー(レナード・バーンスタイン)がどうしてこうした引用をしたのかというと、シェイクスピアの「ロメオとジュリエット」は「ウエストサイド物語」の元ネタだからなんだ。

「365日の紙飛行機」を書いた秋元康については次のような記事を上梓している。

「ひまわりの約束」は映画「STAND BY ME ドラえもん」の主題歌。映画館でこれを観てボロ泣きしたんだけれど、まさかこの歌詞が卒業ソングにピッタリだなんてその時は全く気が付かなかった!いや〜良かった。3年生一人ひとりの名前と、動画がスクリーンに映し出されるのを見ながら、みんなの歌声がしみじみ胸に沁みた。卒業おめでとう。余談だが、秦基博の歌では新海誠監督「言の葉の庭」で彼が大江千里をカヴァーした"Rain"の歌唱がとっても素敵なので、是非聴いてみて欲しい。大江千里は幼少期を大阪府で過ごし関西学院大学(兵庫県西宮市)を卒業しているので、関西とは縁が深い。

「ライオン・キング」はパーカッションが大活躍で、弾けるリズム、唸るホーンが大変魅力的。パンチが効いた演奏だった。ハクナ・マタタのところでトランペット・トロンボーン・クラリネット・サクソフォンの四重奏になるところも素敵。このアレンジは大いに気に入った。

2014年まで大阪桐蔭の定期はザ・シンフォニーホールだったが、昨年からフェスに移り、マーチングが増えてショーアップにさらに磨きがかかった気がする。あと今年は照明が特に美しかった。梅田先生、もうザ・シンフォニーホールには戻れませんね。迷わずこの路線を突き進んでください。ただ昨年も書いたのだが僕が大好きな「銀河鉄道999」の照明は(星を強調したいのはわかるけれど)暗すぎて生徒さんの表情が見えないので、せめて途中からでももう少し明るくしてください。

そうそう、会場に着くと、ロビーに東海大学付属高輪台高等学校(@東京)吹奏楽部顧問の畠田先生がいらっしゃり、びっくりぽんだった。

畠田先生、次回、なにわ《オーケストラル》ウィンズの指揮者として来阪されるのをとても愉しみにしています!

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宮川彬良/オオサカ・シオンによる「アメリカの夢」

2月12日(金)ザ・シンフォニーホールへ。宮川彬良/オオサカ・シオン・ウィンド・オーケストラの定期演奏会を聴く。

  • J.ウィリアムズ(J.カーナウ編):映画「11人のカウボーイ」
  • J.ボック(宮川彬良編):ミュージカル「屋根の上のヴァイオリン弾き」
  • スーザ:行進曲集 ①海を超える握手②ワシントン・ポスト
    ③美中の美④雷神(以上F.フェネル校訂)⑤星条旗よ永遠なれ
  • ガーシュウィン(J.バーンズ編):「ガール・クレイジー」より
    エンブレイサブル・ユー〜チャンスを待ちながら〜アイ・ガット・リズム
    〜私のためじゃない(But Not For Me)
  • D.エリントン(J.バリー/宮川彬良編):映画「コットン・クラブ」より
    ①ミニエ・ザ・ムーチ②ムード・インディゴ③ソリチュード
    ④ザ・ムーチ⑤コットン・クラブ・ストンプ・ナンバー2
  • 若いってすばらしい(アンコール)

まず最初に宮川彬良からの挨拶があった。「久しぶりにシンフォニーホールに帰ってきました。私がプロのオーケストラを初めて指揮したのはこのホールで開催された大阪フィル・ポップス・コンサートでした。その後大阪市音楽団と出会い、何度かここで演奏し、彼らがオオサカ・シオン・ウインド・オーケストラとして再出発する時に音楽監督就任を請われました。私はこの楽団の音楽監督になって本当に良かった。リハーサルでも彼らは涙がでるくらい一生懸命に練習します」と。

ジョン・ウィリアムズの「11人のカウボーイ」「屋根の上のヴァイオリン弾き」(アカデミー編曲賞受賞)については下記記事で語った。

「11人のカウボーイ」吹奏楽版は全日本マーチングコンテストでも演奏される人気曲だ。そちらの感想はこちら。宮川彬良の指揮は生き生きしたリズム感で、しなやかな歌に満ちている。ただライヴ・レコーディングされていたのだが、トランペットとホルン・ソロのミスが目立ったので、本番をそのまま使う訳にはいかないだろう(多分ゲネプロのテイクが採用される筈)。

「屋根の上のヴァイオリン弾き」の編曲は宮川彬良の書き下ろし。①しきたり②サンライズ・サンセット③結婚式の踊り〜ボトル・ダンスという構成。「しきたり」はフルートのソロで開始され、途中からクラリネット・ソロが加わる。「サンライズ・サンセット」はイングリッシュ・ホルンのソロとファゴットが印象的。色彩感豊かなアレンジで難易度もしっかりあり、これは全日本吹奏楽コンクールの自由曲として勝負出来る内容になっているのではないだろうか?

スーザのマーチは堅固なリズムに乗り、キレとメリハリのある演奏。くっきりと浮かび上がる対旋律。聴き慣れた曲の筈なのに、とても新鮮だった。なお「美中の美」の原題は"The Fairest of the Fair"で、これは「博覧会の美女」と解釈も出来るとのこと。成る程。「星条旗よ永遠なれ」は強弱のニュアンスが豊かだった。

「アルヴァマー序曲」や交響曲第3番が有名なジェイムズ・バーンズによるガーシュウィンの編曲はJazzyで都会的。ハーモニーが凝っていて最後はゴージャスに締め括られた。素晴らしいアレンジだった。

「コットン・クラブ」ではピアノを弾き振りした宮川彬良の解説によると、それまでラグライムとかディキシー・ランド・ジャズしか無かった1920年代にディーク・エリントンが彗星のごとく現れ、新風を吹き込み、このジャンルは芸術に昇華する第一歩を踏み出したと(ストイックなジャズの誕生)。禁酒法時代(1920-1933)のナイトクラブは黒人が演奏し、踊り、観客は全員白人。黒人たちには内面からフツフツと沸き起こる怒りがあっただろうし、そこには何かしら緊張感があったろう。客が踊り出すのはそれから30年後のグレン・ミラーの登場を待たなければならなかった。

ここでダイナマイトしゃかりきサ~カスという3人のボーカル・グループが加わった。「ムード・インディゴ」はクラリネットとミュートを付けたトランペット、トロンボーンの3重奏が印象的。「ソリチュード」は女声ソロ。「コットン・クラブ・ストンプ・ナンバー2」は最後シオンの楽員全員が起立し、ノリノリの演奏。これぞビッグバンド・ジャズ!客席も大いに盛り上がった。

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武満徹のシネマ・ミュージック/あるいは、「クラシック音楽愛好家を斬る!」

パーヴォ・ヤルヴィがNHK交響楽団の首席指揮者に就任にするにあたり、「パーヴォ・ヤルヴィ×日本人アーティスト 白熱音楽トーク」という番組がEテレで放送された。そこでのパーヴォの発言を引用しよう。

クラシックの音楽家にはなぜか自分たちが他の芸術家よりも優れている、自分たちの芸術のほうが重要だという意識があるが、これは大きな間違い。より優れているわけがない。
私たちの芸術は他の芸術と同じ程度に重要なだけだ。クラシック音楽の世界には強いエリート意識があり、これが自分たちの首を絞めている。

彼は賢い。よく物事の本質を見抜いている。クラシック音楽の演奏家は勿論その通りなのだが、これは聴く側、すなわち愛好家=クラオタにも当てはまる。

不思議な事にクラシック音楽愛好家は自分たちが高尚な趣味を持っていると勘違いし、それを誇りに思っているフシがある。だから他のジャンルの音楽に見向きもしない。オペラ・ファンの多くはミュージカルを馬鹿にしている。

この何の根拠もない愚かなエリート意識を象徴するのがエーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルトに対する世間の扱いである。

コルンゴルトが時代の寵児としてもて囃されたのはオペラ「死の都」Op.12が1920年にハンブルクとケルンで同時初演された頃である。当時23歳だった。しかしその後ナチスが台頭し、ユダヤ人だった彼はハリウッドに逃れる。そして映画音楽作曲家として名を馳せ、アカデミー賞を2度受賞した。第二次世界大戦後コルンゴルトはワーナー・ブラザースとの契約を更新せず、ウィーン楽壇への復帰に意欲を燃やす。しかし「時代錯誤」「映画に魂を売った男」と蔑まれ、評論家から袋叩きにあって失意のうちにアメリカに戻ることになる。詳しくは下の記事に述べた。

21世紀に入り、漸くコルンゴルトの再評価が進んだ。今では彼の代表作であるヴァイオリン協奏曲(1947年初演、彼の映画音楽から幾つかのモティーフが流用された)が演奏される機会が日本でも増えた(しかし大阪フィルハーモニー交響楽団は未だに一度もこの曲を取り上げたことがない)。僕が彼の音楽に興味を持ち、CDを集め始めたのは今から30年前、1980年代前半のことである。その頃、コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲の国内盤は1枚もなかった。だからハイフェッツやパールマンが演奏するCDを輸入盤で購入した。ドイツ・グラモフォンがこの曲を初めてレコーディングしたのは1993年(シャハム&プレヴィン/ロンドンs.o.)である。初演から46年が経過していた

要するにクラシック音楽世界の住人達は「映画音楽は下等だ」と蔑んでいるわけだ。しかし考えてみれば妙な話である。彼らが毎年1月1日にニューイヤー・コンサートで聴くシュトラウス一家のワルツやポルカは所詮、”ダンス・ミュージック”である。そもそも観賞用に書かれた楽曲ではない。チャイコフスキーやストラヴィンスキーのバレエ音楽が現在の映画音楽と比較して「上等」であるという根拠もない。

ジョン・ウィリアムズの傑作「スター・ウォーズ」(1977年)をウィーン・フィルが初めて演奏したのは2010年(シェーンブルン宮殿夏のコンサート)、ベルリン・フィルは2015年(ヴァルトビューネ野外コンサート)だった。遅過ぎる。正にバーヴォが言う「強いエリート意識が自分たちの首を絞めている」状況である。

さて、2月11日(祝)兵庫県立芸術文化センターへ。

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武満徹の映画音楽を聴く。演奏家は渡辺香津美(ジャズ・ギター)、coba(アコーディオン)、鈴木大介(クラシック・ギター)、ヤヒロトモヒロ(パーカッション)という面々。このコンサートは2008年にワシントンD.C.のケネディー・センターで開催され、その後も松本のサイトウ・キネン・フェスティバルやカーネギー・ホールでも再演を重ねてきたものである。

武満徹は映画を愛し、沢山の映画音楽を残した。またビートルズのアルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を高く評価 していた。1992年に武満が書いたエッセイ「『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を聴く 今更ビートルズについて」から引用 しよう。

ビートルズについて、あらためていま語るには、いくらかの躇いと、気後れのようなものを覚える。優しさと悲しさと、滑稽な気分にあふれた、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』が売り出されたのは1967年。すでに、20年近い時間 が過ぎたのに、いまだに音楽の活気は少しも失われていない。ビートルズは、私のなかで、日々若返っていく。

(中略)

ビートルズが生まれる 要因は、ある意味では十分すぎるほどだったが、それでも、かれらの天才は格別のものだ。かれらが創り出す音楽があれほどの多様さを持ち得たのは、かれら4人の個性が、絶えず動いてやまない磁場として作用したからだろう。4人は、マグネットのように相互に牽き合い、また時に、反発しあう。各自が自分の本能に 正直であったから、この危うい均衡は奇跡的に保たれた。ビートルズは誰ひとりとして、押しつけられた音楽的教養などとは無縁だったから、既成の価値観をもっては測れないような、理想的な共同体を創り得たのだ。

武満はクラシック音楽以外のジャンルに対して何のわだかまりもなく、別け隔てない公平な人だった。それは彼が作曲家を志す契機になったのが、終戦間近の14歳の時に勤労動員先で見習士官からこっそりレコードを聴かせてもらった、リュシエンヌ・ボワイエが唄うシャンソン「聞かせてよ愛の言葉を」(この音源は現在ナクソス・ミュージック・ライブラリーで試聴可能)だったことと無関係ではあるまい。

さて、今回のコンサートで演奏されたのは、

  • 「フォリス」より第一曲(鈴木大介の独奏)
  • 映画「不良少年」より
  • 映画「伊豆の踊子」より
  • 映画「日本の青春」より
  • 映画「太平洋ひとりぼっち」より(芥川也寸志との共作)
  • Tribute to Toru(渡辺香津美/ヤヒロトモヒロの即興)
  • 映画「ホゼー・トレス」より
  • 映画「狂った果実」より
  • 映画「最後の審判」より”3月のうた”
  • 映画「他人の顔」よりワルツ
  • 映画「写楽」より
  • 小さな空(アンコール)

「フォリオス」は荘村清志からの委嘱で作曲されたコンサート用ギター独奏曲。

「不良少年」には哀愁が漂い、「伊豆の踊子」は叙情的。「どですかでん」についてcobaは《天使のメロディー》と評した。「太平洋ひとりぼっち」は海洋冒険家・堀江謙一の手記を元にした映画だが、何と彼が出港したのは地元・兵庫県西宮だった(堀江は現在・兵庫県芦屋市在住)。爽やかな海の風が耳元で囁き、波の高鳴りが音楽から聴こえてきた。

休憩を挟み渡辺香津美とヤヒロトモヒロの即興演奏はグルーヴィーgroovy。「ホゼー・トレス」の音楽はジャジーjazzyで、「狂った果実」はブルースだった。

「他人の顔」ワルツは世界的なアコーディオンの名手cobaのソロが圧巻。dynamicかつpassionateだった。

晩年の傑作「写楽」もジャズの要素が取り入れられているのだが、屈託のない明るさがあり、なんだか仲間たちとワイワイ酒を飲んでいる風景が目に浮かんだ。

アンコールは僕が一番好きな武満のうた「小さな空」(作詞も武満)!とても嬉しかった。

武満の映画音楽は6月にいずみホールで公演があるユーリ・バシュメット&モスクワ・ソロイスツでも聴く予定。詳細は→こちら

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尾崎支配人が泣いた夜 DOCUMENTARY of HKT48/道頓堀よ、泣かせてくれ! DOCUMENTARY of NMB48

「尾崎支配人が泣いた夜  DOCUMENTARY of HKT48」の評価はB+。映画公式サイトはこちら

「道頓堀よ、泣かせてくれ! DOCUMENTARY of NMB48」の評価はB。映画公式サイトはこちら

僕は今までにAKB48のドキュメンタリーを4種類、他にSKE48と乃木坂46のドキュメンタリーを観ている。よって今回で8作品に達したということになる。

なかんずく突出して傑作だと想うのは高橋栄樹監督「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら夢を見る」である(2016年2月12日(金)25:50~ NHK BSプレミアムで放送予定)。アイドル映画を観に行ったら戦争映画だった!という驚天動地、コペルニクス的転回の作品であり、僕はこの年の映画ベスト1に選出した。東日本大震災の年という特殊性が効いた。逆に最低・最悪だったのが「悲しみの忘れ方DOCUMENTARY of乃木坂46」。監督の丸山健志は万死に値する。絶対に許せない。詳しくはレビューを読んでください。

さて8作品出揃ったところで、質が高い上位4作品を挙げてみよう。

  1. DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら夢を見る
  2. アイドルの涙 DOCUMENTARY of SKE46
  3. 尾崎支配人が泣いた夜  DOCUMENTARY of HKT48
  4. 道頓堀よ、泣かせてくれ! DOCUMENTARY of NMB48

アイドルの涙 DOCUMENTARY of SKE46」は石原 真監督のSKE愛が炸裂している。特に唖然としたのは後にDVD/Blu-rayで発売されたディレクターズ・カット版。4時間あって、しかも映像が本篇と全く重複していない!両者合わせると現役メンバー全員のインタビューを詰め込んでいる。しかも編集が巧みなので観ている者を飽きさせない。ただ卒業メンバーのうち、向田茉夏からインタビューを取れなかったのは痛恨の極みなのだが……。閑話休題。

さて、HKTのドキュメンタリーは指原莉乃が監督をしている。現役の、しかも総選挙で2年連続1位になったトップ・アイドルが監督をすると一体どうなるのだろう?と全く想像がつかなかったのだが、これが意外にも良かった。今までの中で最も「生々しい」ドキュメンタリーとなった。彼女は選抜メンバーに選ばれない女の子の気持ちも、逆に「撰ばれてあることの恍惚と不安」もどちらもよく判っているので、そういった光と影の交差を巧みに捉えている。またHKT48劇場支配人として各メンバーへの目配りも怠りなく、結局テロップで全員の名前が出てきたんじゃないかな?映画の冒頭がさしこ(指原)と坂口理子が餃子を食べている場面から始まるのも意表を突いていて面白かった。あと本作の白眉はシングルの選抜メンバーを選ぶ会議にカメラを潜入させたことである。”なこみく”の矢吹奈子が最近、精神的に疲れているので一度選抜から外して休ませたほうがいいのではないか?というさしこからの提言が、秋元康の「でもユニバーサル(・ミュージック・ジャパン)さんとしては”なこみく”が欠かせないよね?」という一言で却下となり、逆に秋元の「そろそろ田中菜津美を入れても面白いんじゃない?」という発言も誰からも取り合われず、あっさりスルーされた。トップダウンで決定されるのではなく、割とみんなの意見を聞き、合議制で決めるんだなと興味深かった。あとメンバーの親を登場させたのが村重杏奈ただ一人というのが慧眼である。何故なら村重の母親はロシア人であり、さしこは《ファンが一番見たいものは何か》を熟知しているなと感心した。

今回のHTKとNMBのドキュメンタリーで新機軸だなと感じたのはファン=ヲタに焦点を当てたことである。HKT坂口理子が初めて選抜メンバーに選ばれた瞬間のおっさんの号泣、NMBでライヴァルとして切磋琢磨している白間美瑠の握手会のレーンの方が列が長いと、危機感を抱いてその場で緊急会議を始める矢倉楓子のファンの人たち(ふたりは10thシングル「らしくない」でダブルセンターを務めた)。何か微笑ましいというか、愛おしかった。またある日の握手会で山本彩が3千人以上と握手し、総計9時間に及んだというナレーションには度肝を抜かれた。それでも「楽しかった」と屈託のない笑顔で会場を後にするさや姉。さすがプロだね。

NMBの方は大阪府出身で東京大学教養学部卒業後ニューヨークで映画を学んだ舩橋淳が監督を務めた。大阪らしい、「コテコテ」で「泥臭い」ドキュメンタリー映画に仕上がっている。これだけ地方色を鮮明に打ち出した作品はこれまで無かった。特に淀川から道頓堀川に至る河川を下る船の上で、第1回ドラフト会議で指名されNMBに入った須藤凛々花(12thシングル「ドリアン少年」センター)が、ニーチェやジョン・スチュアート・ミルらの言葉を朗読する場面は正に異空間で、個性的なその絵(映像)に惹きつけられた。リドリー・スコット監督の「ブレードランナー」とか、高倉健・松田優作が出演した「ブラック・レイン」(大阪が舞台)のことを想い出した。

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三ツ橋敬子/いずみシンフォニエッタ大阪 定期

2月6日(土)いずみホールへ。

三ツ橋敬子/いずみシンフォニエッタ大阪、ソプラノ独唱:太田真紀で、

  • レスピーギ:組曲「鳥」
  • ベリオ:フォークソングスより第1,2,3,5,6,7,11曲
  • シャリーノ:電話の考古学
  • 西村朗:室内交響曲 第5番「リンカネイション(転生)」

開演前にロビーコンサートあり。

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レスピーギはカラフルな音色だった。イタリアらしく太陽の光が燦々と降り注ぐイメージ。三ツ橋は快刀乱麻の指揮ぶりで、研ぎ澄まされた鋭さがあった。

ベリオの第1曲「私の彼は黒い髪」はアパラチア山脈に伝わる歌。ヴィオラ2台の伴奏が如何にもアメリカのフォークソングらしく、「大草原の小さな家」を彷彿とさせる。ベリオって管弦楽法が卓越しているなと感じた。

第5曲「よい天気になりますように」はシチリアに伝わる漁師の妻の歌。ここで太田は歌唱法を崩し、訛りたっぷりに海の女になり切った。ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画「揺れる大地」(シチリア島が舞台)とか、女優アンナ・マニャーニ(無防備都市、ベリッシマ)のことが脳裏をよぎった。素晴らしい!

特殊奏法で電話のパルス音を再現する「電話の考古学」はけったいな音楽。

西村朗の新曲はソプラノ独唱付き。新古今和歌集が引用されている。考えてみれば輪廻転生をモティーフにした交響曲って欧米には皆無なわけで、如何にもアジア的でユニークな楽曲だなと想った。

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厳選!これだけは観ておきたいミュージカル・ベスト30(+吹奏楽との関連も)

姉妹編として下記もどうぞ。

ミュージカルもオペラと同様、吹奏楽との関連性に触れた。それでは早速、行ってみよう!

まず純粋に好きな作品を上位から並べてみた。すると……。

  1. オペラ座の怪人
  2. エリザベート
  3. ロミオ&ジュリエット
  4. ファンタスティックス
  5. メリリー・ウィー・ロール・アロング
    〜それでも僕らは前へ進む〜
  6. キャバレー
  7. ミス・サイゴン
  8. スウィーニー・トッド
  9. シー・ラヴズ・ミー
  10. ラ・カージュ・オ・フォール
  11. ジーザス・クライスト・スーパースター
  12. プロデューサーズ
  13. 太平洋序曲
  14. ライオンキング
  15. 屋根の上のバイオリン弾き
  16. リトル・ナイト・ミュージック
  17. 翼ある人々 ーブラームスとクララ・シューマンー
  18. ノバ・ボサ・ノバ
  19. コーラスライン
  20. 蜘蛛女のキス
  21. Into the Woods
  22. 春のめざめ
  23. サンセット大通り
  24. ファントム
  25. 42nd Street
  26. デス・ノート
  27. MITSUKO
  28. オケピ!
  29. パッション
  30. ジョージの恋人(サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ)
  31. CHESS
  32. 回転木馬
  33. CAN-CAN
  34. ミー&マイガール
  35. ハウ・トゥー・サクシード
    ー努力しないで成功する方法ー
  36. モーツァルト!
  37. ピーターパン
  38. レ・ミゼラブル
  39. キャッツ
  40. RENT
  41. クレイジー・フォー・ユー
  42. 壁抜け男
  43. 王家に捧ぐ歌
  44. スカーレット・ピンパーネル
  45. エビータ
  46. ガイズ&ドールズ
  47. ビリー・エリオット ~リトル・ダンサー~

ソンドハイムが7作、ロイド=ウェバーが5作、ワイルドホーン3作、カンダー & エブ2作、シェーンベルク & ブーブリル2作、リーヴァイ & クンツェ2作、フランク・レッサー2作、エルトン・ジョン2作。これでは長過ぎて、収集がつかないと判断した。そこでオペラと同じく1作曲家1作品に絞ることに方針を変更し、整理したのが以下の結果である。

  1. オペラ座の怪人
  2. エリザベート
  3. ロミオ&ジュリエット
  4. ファンタスティックス
  5. メリリー・ウィー・ロール・アロング
    〜それでも僕らは前へ進む〜
  6. キャバレー
  7. ミス・サイゴン
  8. シー・ラヴズ・ミー
  9. ラ・カージュ・オ・フォール
  10. プロデューサーズ
  11. ライオンキング
  12. 屋根の上のバイオリン弾き
  13. 翼ある人々 ーブラームスとクララ・シューマンー
  14. ノバ・ボサ・ノバ
  15. コーラスライン
  16. 春のめざめ
  17. ファントム
  18. 42nd Street
  19. デス・ノート
  20. オケピ!
  21. CHESS
  22. 回転木馬
  23. CAN-CAN
  24. ミー&マイガール
  25. ハウ・トゥー・サクシード
    ー努力しないで成功する方法ー
  26. ピーターパン
  27. RENT
  28. クレイジー・フォー・ユー
  29. 壁抜け男
  30. 王家に捧ぐ歌

それでは各作品へのコメントをしよう。ただリストが長いので今まで書いた記事へのリンクを中心とし、簡潔にまとめることを心がけた。

「オペラ座の怪人」は山口祐一郎主演の劇団四季版@大阪を観て以来、不動のベスト1であり続けている。アンドリュー・ロイド=ウェバーはあの頃、天才だった(過去形)。大阪はカラオケ上演だがその後、東京赤坂で生オケ版を観て、ウエストエンド(ロンドン)、ブロードウェイ、ラスベガス(現在は閉幕)まで足を運んだ。詳しい話はこちらの記事にまとめた。映画版はあれなので、「オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン」DVD/Blu-rayをご覧になることをお勧めする。あと続編「ラヴ・ネヴァー・ダイズ」はゴミである。「えっ、愛は死なない?いや、頼むから死んでくれ!」って感じ。さようなら、ロイド=ウェバー。吹奏楽用の楽譜はいくつも出版されているがポール・マーサ編曲版はお粗末。良いアレンジだと想うのは建部知弘によるものと、「指輪物語」の作曲で知られるヨハン・デ・メイのもの。後者は梅田隆司/大阪桐蔭高等学校吹奏楽部の演奏が素晴らしい。またロイド=ウェバー最後の傑作ミュージカル「サンセット大通り」が日本初演に至るまでの紆余曲折はこちらに解説した。

「エリザベート」は恐らく、今まで最も観劇回数が多い作品であろう。宝塚版は宙組1998年公演以降全てのバージョン、東宝版、ウィーン版などを観ている。詳しくはエリザベートの想い出や、明日海りおにノックアウト!宝塚花組「エリザベート」/オールタイム・ベスト・キャスト考を御覧ください。宝塚版はDVD/Blu-rayで入手可能。吹奏楽ではヨハン・デ・メイ編曲版があり、梅田隆司/大阪桐蔭の演奏を聴いた感想はこちら。またクンツェ×リーヴァイの作品では「モーツァルト!」もお勧め。東宝からDVDも発売中。こちら

「ロミオ&ジュリエット」はフランス産ミュージカル。宝塚歌劇で衝撃的出会いを果たし、その後男女混成版、フランスからの来日公演も観た。”エメ”最高!宝塚月組 フレンチ・ミュージカル「ロミオとジュリエット」(明日海りお 主演)や、ミュージカル「ロミオとジュリエット」フランス版来日公演をご覧あれ。宝塚版はDVD/Blu-rayで鑑賞出来る。以上が僕の考える世界三大傑作ミュージカルである。

「ファンタスティックス」はオフ・ブロードウェイで42年間の長きに渡り上演されていた作品。少人数の出演者、小編成のオーケストラ、簡素な舞台装置。これぞミュージカルの原点である。「洗練を極めれば簡素(シンプル)になる」というスティーブ・ジョブズの言葉を想い出す。特に"Try To Remember"というナンバーはしみじみ胸に沁みて大好き!舞台の感想はこちら。僕が2001年8月にブロードウェイに旅行した時、これを観るか散々迷った挙句、「次に来る時も上演しているだろう」と高を括って他の作品を選んでしまった。その直後に同時多発テロが勃発、観客が激減し翌年に何と閉幕してしまった!後悔先に立たずである。

「メリリー・ウィー・ロール・アロング 〜それでも僕らは前へ進む〜」色々作品を観れば観るほど、スティーヴン・ソンドハイムの凄さには打ちのめされる。彼はブロードウェイの宝。アメリカ人にとってのソンドハイムの立ち位置は、イタリア人にとってのロッシーニやヴェルディに相当するだろう。「メリリー・ウィー・ロール・アロング」の感想はこちら。兎に角、時間が逆走していく台本が圧巻。ハロルド・プリンス演出にもかかわらず初演はコケたわけだが(プレビュー公演52回、本公演はたった16回)、早すぎた傑作だったのだろう。その他のソンドハイム作品について、「スウィーニー・トッド」こちら。ディズニーで映画化された「イントゥ・ザ・ウッズ」についてはこちら。昨年の日本初演で衝撃を受けた「パッション」こちら。吹奏楽ではステファン・ブラ編曲による「イントゥ・ザ・ウッズ」「スウィーニー・トッド」がお勧め。

「キャバレー」の上演史についてはこちらの記事で詳しく語った。ナチス・ドイツ時代のベルリンを舞台とするこのミュージカルは退廃と狂気の象徴でもある。そして、嘗てナチスに《退廃芸術》の烙印を押されたブレヒト×ヴァイルの「三文オペラ」と密接に繋がっている。「キャバレー」初演時にはクルト・ヴァイルの未亡人で「三文オペラ」で主演したロッテ・レーニャがシュナイダー婦人(下宿屋の女主人)を演じた。2017年に松尾スズキ演出により再演が予定されている。

「ミス・サイゴン」については「ミス・サイゴン」の想い出をご覧あれ。プッチーニの「蝶々夫人」が土台となっている。因みにプッチーニの「ラ・ボエーム」は「RENT」に生まれ変わった。2002年、全日本吹奏楽コンクールの自由曲で大滝実/埼玉栄高等学校吹奏楽部は「ミス・サイゴン」(編曲:宍倉 晃)を演奏し金賞を受賞、一大センセーションを巻き起こした。コンクール翌日から大滝先生の元へは楽譜に関する問合せが殺到したそうである。空前のブームとなる序章であった。さらにシェーンベルク & ブーブリルの作品では「レ・ミゼラブル」のことも触れないわけにはいかない。

ヒュー・ジャックマンがジャン・バルジャンを演じた映画版も優れているし、25周年記念コンサートDVD/Blu-rayもお勧め。2013年、宇畑知樹/伊奈学園総合高等学校は全日本吹奏楽コンクールで森田一浩編の「レ・ミゼ」を演奏し、金賞を受賞した。また大阪桐蔭が演奏するウォーレン・バーカー編曲版は歌がたっぷり入っていて、こちらも聴き応えがある。

「シー・ラヴズ・ミー」はクリスマスに恋人や家族と是非観たい、愛すべき逸品である。僕は市村正親×涼風真世のコンビで観たが、再演を切に願う。チェコの劇作家ニコラウス・ラズロの戯曲が原作で、エルンスト・ルビッチ監督「街角 桃色の店」(THE SHOP AROUND THE CORNER)という映画にもなっている。映画「恋人たちの予感」「めぐり逢えたら」の脚本を書いたノーラ・エフロンは少女時代、毎年クリスマスになるとシナリオ・ライターだった両親 (映画「回転木馬」「あしながおじさん」を脚色)に連れられ劇場に「シー・ラヴズ・ミー」を観に行っていたという。後年、文通を通じて出会う男女という設定を電子メールという手段に置き換えて、ノーラは幼少期の大切な想い出をメグ・ライアン、トム・ハンクス主演「ユー・ガット・メール」に封印した。映画の中で家族に囲まれて少女がミュージカル「アニー」から"Tomorrow"を歌うのは、そうした訳である。

「ラ・カージュ・オ・フォール」というミュージカルが産まれるまでの経緯はこちらの記事で深く掘り下げた。名曲揃い。ジェリー・ハーマンの卓越した仕事に乾杯!

「プロデューサーズ」はトニー賞で史上最多の12部門を受賞。僕は2001年8月にブロードウェイでオリジナル・キャストが出演した舞台を観ている。後にネイサン・レイン、マシュー・ブロデリックらオリジナル・キャストも出演し、舞台版で振付・演出を担当したスーザン・ストローマン監督で映画化されたのだが、こちらは惨憺たる出来だった。舞台の名演出家=映画監督としても優れているとは限らないことを痛感させられた出来事だった。ミュージカル「キャバレー」を観て演出家のサム・メンデスを映画「アメリカン・ビューティ」の監督に起用したスピルバーグは慧眼だった(アカデミー作品賞・監督賞受賞)。舞台の話に戻すと実に愉快なコメディで、特に劇中劇「ヒトラーの春」は爆笑もの!何故か日本ではジャニーズ事務所が版権を買い、V6主演で上演された。頼みますから東宝とかフツーの劇団で再演してください。オリジナルのメル・ブルックス監督・主演の映画「プロデューサーズ」も歴史に名を残す名作。

僕は1998年12月20日に四季劇場[春]でミュージカル「ライオンキング」の日本初演(初日)を観ている。詳しい話はこちら。アニメーションの方は散々、手塚治虫「ジャングル大帝」のパクリと非難されたわけだが、僕もそれを否定しない。ただディズニー・アニメは「ジャングル大帝」にシェイクスピアの「ハムレット」の要素を加味している。舞台版は演出家ジュリー・テイモアの独創性が瞠目すべき効果を上げている。特にオープニングが圧巻だ。トニー賞では最優秀ミュージカル賞、演出賞、美術賞、照明賞、振付賞、衣装デザイン賞の6部門受賞。なお、大阪桐蔭が演奏した吹奏楽版の感想はこちら

「屋根の上のバイオリン弾き」についてはこちらで詳しく語った。森繁久彌の時代から日本で愛され続けているミュージカルだが、多分ユダヤ人と日本人って似てるんだよね。まじめに働きコツコツ貯金するところとか、ヴァイオリンが得意なところとか。僕は哀愁を帯びた物語と音楽が好き。

吹奏楽版は後藤洋の編曲か、2016年2月12日のオオサカ・シオン定期演奏会で初演された宮川彬良編曲(未出版)がお勧め。あとIra Hearshen編曲による"Symphonic Dances from Fiddler on the Roof"も悪くない。

「翼ある人々 ーブラームスとクララ・シューマンー」に関してはこちら。作・演出は上田久美子。宝塚歌劇からもの凄い才能の女性演出家が台頭してきた。DVDが発売されているので是非そちらで目撃せよ!上田久美子は「星逢一夜」もお勧め。

「ノバ・ボサ・ノバ」についてはこちら。宝塚歌劇が産んだ、空前絶後・史上最高のショーである。未見の方はDVDまたはBlu-rayでどうぞ。

「コーラスライン」は最初劇団四季で観て、映画を観て、そしてアメリカからのツアー・カンパニー来日公演の感想をこちらに書いた。日本人が本作を演じることの難しさについて論じている。さらに、どうして僕が舞台版「ウエストサイド物語」を評価しないのかという理由も。劇団四季で本作を観るくらいなら、リチャード・アッテンボロー監督の映画版(1985)の方を選ばれることをお勧めする。吹奏楽では森田一浩 編曲によるメドレーがある。コンサートで"ONE"を歌い踊れば、盛り上がるのではないだろうか?

「春のめざめ」のレビューはこちら。柿澤勇人という役者と劇的出会いをした作品だが、彼はその直後劇団四季を辞めたので、最早彼の「春のめざめ」を観ることは叶わない。

「ファントム」についてはこちら。「オペラ座の怪人」がファーザー・コンプレックスの話なら、こちらはマザコンの話である。同じ題材に対して全く別の角度から光を当てており、どちらも観る価値がある。「オペラ座」のせいでブロードウェイ上演には至らなかった気の毒な作品だが、僕はモーリー・イェストンがトニー賞最優秀楽曲賞を受賞した「ナイン」や「タイタニック」より「ファントム」の方が断然好き。音楽も、台本も、全ての点において。宝塚版がDVD/Blu-rayで入手可能。

「42nd Street」は元々アカデミー作品賞を受賞した映画「四十二番街」(1932)をベースにしている。演出・振付を担当したガワー・チャンピオンは初日が開く直前に亡くなり、公演終了後に観客にその事実が明かされたという劇的な開幕をした(その裏ではマスコミで話題になるように、ちょっとした調整が行われたようだ。That's Showbiz ! )。僕は2001年にブロードウェイでリバイバル公演を観たが、とにかく群舞が圧巻!タップダンスの迫力・魅力を堪能出来る(特に”ブロードウェイの子守唄”)。吹奏楽では岩井直溥編曲による「アメリカン・グラフィティXIII」【ハロー・ドーリー! 〜ブロードウェイの子守歌〜私の彼氏 (私の愛する人、ザ・マン・アイ・ラブ) 〜キャバレー】がある。    

「デス・ノート」についてはこちら。ワイルドホーンが曲を書いた作品では「MITSUKO 〜愛は国境を超えて〜」も大好き。どちらを選ぶか散々迷ったけれど、物語の面白さで「デス・ノート」に軍配が上がった。

「オケピ!」は三谷幸喜台本で、ミュージカルのオーケストラ・ピットが物語の舞台となる。発想が秀逸だ。作曲は「王様のレストラン」「半沢直樹」「真田丸」の服部隆之。とてもスケールの大きな音楽を書いている。コンダクター(指揮者)役を白井晃が演じる再演版がDVDで観れるが、僕は真田広之がコンダクターだった初演版の方が好き。再演時に映画「ラストサムライ」の撮影が重なり、真田は降板したのだった。

「CHESS」についてはこちらをどうぞ。あと関連作品として映画「完全なるチェックメイト」も併せて観ておきたい。

「回転木馬」はロジャース&ハマースタイン2世による名作。「サウンド・オブ・ミュージック」が有名だが、これは映画の完成度が極めて高く、舞台が霞んでしまう。「回転木馬」の"You'll Never Walk Alone"は感動的なナンバーで、今やサッカーのサポーターソングとしても有名になった。吹奏楽ではロバート・ラッセル・ベネット編曲による「カルーセル・ワルツ」やジョン・モス編曲による「栄光のブロードウェイ」【バリ・ハイ(南太平洋)〜カルーセル・ワルツ(回転木馬)〜すべての山を登れ(サウンド・オブ・ミュージック)〜仲良くしましょう(王様と私)〜オクラホマ(オクラホマ)】がある。

「CAN-CAN」はコール・ポーターの代表作として挙げた。宝塚月組で上演された際、娘役・風花舞の華麗なダンスに瞠目した。

「ME AND MY GIRL」についてはこちら。端的に言えば「マイ・フェア・レディ」の男性版である。

「ハウ・トゥー・サクシード -努力しないで成功する方法-」宝塚版について僕が書いたレビューはこちら

「ピーターパン」についてはこちら。この作品の魅力としてはフライングに尽きる。是非小さいお子さんに観せてあげてください。

ピューリッツァー賞とトニー賞で最優秀作品賞を受賞した「RENT」は日本人キャストの公演を観ても、その真価が絶対に判らないミュージカルである。白人(WASP)がいて黒人がいて、ヒスパニックなど様々な人種がいて、性的嗜好もストレートがいて、ゲイがいて、バイセクシャルもいる。そういう多様性があって初めて本作の哀しみとか気持ちの軋みが見えてくるのだ。オリジナル・キャストのアダム・パスカルとアンソニー・ラップのライヴを聴いた感想はこちら。彼らも出演したクリス・コロンバス監督の映画版(2006)か、「レント・ライヴ・オン・ブロードウェイ」DVD/Blu-rayをお勧めする。

「クレイジー・フォー・ユー」1920-30年代にブロードウェイを席巻した作曲家といえばジョージ・ガーシュウィンであり、コール・ポーター、アーヴィング・バーリン、ジェローム・カーンらであった。しかし彼らの作品の殆どはリバイバルされることがない。曲は素晴らしくても台本が古臭くなり、現代に通用しないからだ。そこでガーシュウィンの「ガール・クレイジー」を創り直したのが「クレイジー・フォー・ユー」である。トニー賞で最優秀作品・衣装・振付賞(スーザン・ストローマン)を受賞した。吹奏楽ではウォーレン・バーカー編曲による「ガーシュイン!」【魅惑のリズム〜エンブレイサブル・ユー〜誰かが私を見つめてる〜アイ・ガット・リズム 】か、「アルヴァマー序曲」で有名なジェイムズ・バーンズ編曲による「”ガール・クレイジー”からの音楽」【エンブレイサブル・ユー〜チャンスを待ちながら〜アイ・ガット・リズム〜私のためじゃない(But Not For Me) 】がいい。

フレンチ・ミュージカル「壁抜け男」は地味だけれど、哀感があり、しみじみとした味わいのある作品。ブロードウェイでも"Amour"というタイトルで上演された。日本は博多で初演。僕はその初日を観ている。石丸幹二・井料瑠美らが出演した。伴奏はピアノ・リード・パーカッションの3人のみなので、劇団四季としては珍しく地方都市の専用劇場でも生演奏だった(全国ツアーはカラオケ)。音楽はミシェル・ルグラン。彼の全盛期は何と言っても「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」「愛のイエントル」の頃で、「壁抜け」では筆力が衰えている感が否めないけれど、決して悪くはない。ところで「愛のイエントル」も舞台化してほしいなぁ。吹奏楽では宮川彬良の卓越した編曲「ロシュフォールの恋人たち」 から”キャラバンの到着とマクサンスの歌”が最高。”キャラバンの到着”は岩井直溥編曲版もある。

宝塚歌劇のオリジナル・ミュージカル「王家に捧ぐ歌」についてはこちら。ヴェルディの歌劇「アイーダ」を基にしており、同じ題材でディズニー製作のミュージカルもある。後者は作詞:ティム・ライス、作曲:エルトン・ジョンという「ライオンキング」のコンビ。でも僕は宝塚版の方が作劇として優れていると想う。DVD/Blu-rayでどうぞ。

最後に。イタリアはオペラの中心地だが、逆にミュージカル不毛地帯である。イタリアで「キャッツ」や「オペラ座の怪人」「レ・ミゼラブル」が上演されたという話はとんと聞かない。むしろドイツ・オーストリア・ハンガリーでは盛んである。この辺のお国柄の違いが興味深い。多分イタリア人はオペラ文化に誇りを持ち、それだけで十分満足しているので、「ミュージカルなんて……」と興味がないのだろう。

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ヨエル・レヴィ/大フィル:マーラー「夜の歌」

2月5日(金)フェスティバルホールへ。

ヨエル・レヴィ/大阪フィルハーモニー交響楽団で、

  • マーラー:交響曲第7番「夜の歌」

ちなみにマーラーは第2楽章と第4楽章に「夜曲」(Nachtmusik)と名付けているが、「夜の歌」はマーラー自身による副題ではない。

僕はブルックナーの交響曲を00番、0番を含め全曲実演で聴いている。マーラーの交響曲については第8番「千人の交響曲」をシノーポリ/フィルハーモニアで、さらに未完の10番もライヴで体験している、しかしこの第7番のみは今まで生で聴く機会がなかった。大阪では今回なんと22年ぶり(!)に演奏されるんだとか。第8番は規模が大きいので滅多に演奏されないのは仕方ないとして、声楽を伴わない7番の不人気は突出している。いや、僕は好きだけどな。

ヨエル・レヴィは現在65歳。ルーマニアに生まれ幼少期にイスラエルに移住、ブザンソン指揮者コンクールに優勝した。なんと彼の息子イアルは現在、アメリカのデスメタルバンド「ドス」で活躍しているらしい(ギター担当)。

マーラーの交響曲には幼少期に過ごしたボヘミア(現チェコ)・カリシュト村の思い出が詰まっている。例えば第3番に登場するポストホルン(郵便ラッパ)。第7番 第1楽章冒頭のテノールホルンのソロも、やはり幼いころ聴いた軍楽隊の奏でる懐かしい響きなのだろう。先日NHKで放送された大野和士/東京都交響楽団の演奏ではこのテノールホルンをユーフォニアムの世界的名手・外囿祥一郎が吹いていた。今回はソリストとして活躍する安東京平が担当。甘い音色で大変上手かった。後に続くホルン主席・高橋将純のソロもいつもながら素晴らしい。

レヴィは暗譜で指揮。辛口で明晰な解釈。バーンスタインのように主観的に音楽にのめり込むのではなく、一歩離れて怜悧に全体を見渡す視線がそこにはあった。実力はあるのに余り一般に人気がないという点でクリストフ・フォン・ドホナーニに近いタイプかなと感じた。

第3楽章スケルツォは百鬼夜行が跋扈する世界。暗い森には魔物が潜み、時折不気味な鳴き声を上げる。ここで昨年10月にヴィオラのトップ奏者として入団した井野邉大輔(いのべだいすけ/元NHK交響楽団)が深みのあるソロを弾き、聴衆の心を鷲掴みにする。井野邉が率いるようになって、何だかヴィオラ・セクションは《尖った》存在になった。首席が変わるとこれ程までに豹変するのかと目を瞠るものがある。

第4楽章はギタマン(ギター&マンドリン)が登場し、愛のセレナーデを奏でる。僕はヴェネツィアのゴンドラを連想した。ルキノ・ヴィスコンティ監督が映画「ベニスに死す」でマーラーの第5番から第4楽章アダージェットと第3番 第4楽章「夜が私に語ること」を使用したのは偶然ではないだろう。

そして突如唐突に歓喜が爆発する第5楽章が始まるのだが、これをどう捉えれば良いのかというのが長年議論の的になっている。僕は「夜明け」とか「昼」という意見には断固反対だ。いくらなんでも第4楽章《ヴェネツィアの宵》の後では唐突過ぎる。大野和士はテレビで「宇宙的なものに到達する道程」「ビッグバン!」と言っていた。実に面白い。僕の解釈は《ヴェネツィアのカーニバル(謝肉祭)の夜》に於けるどんちゃん騒ぎ。どんな雰囲気かというと→こちら(写真付き)。どうです?これなら4楽章から綺麗に繋がるでしょう。最後に鐘が鳴ることの説明もつく。

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明日海りお 主演/宝塚花組 ミュージカル「アーネスト・イン・ラブ( Ernest in Love )」」

2月4日(木)梅田芸術劇場へ。

僕はオフ・ブロードウェイ・ミュージカル「アーネスト・イン・ラブ( Ernest in Love )」」宝塚月組による日本初演を2005年梅田芸術劇場で観ている。今回観たキャスト(アルジャノンとセシリイは役代わり)と、初演キャストを書いておく。

アーネスト:明日海りお(瀬奈じゅん)
グエンドレン:花乃まりあ(彩乃かなみ)
アルジャノン:芹香斗亜(霧矢大夢)
セシリイ:城妃美伶(城咲あい)

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イギリスの貴族社会をコミカルに描いているので、雰囲気的に「ME AND MY GIRL」に似ている。あと「マイ・フェア・レディ」とか「メリー・ポピンズ」のことも想い出した(「メリー・ポピンズ」の"A Spoonful of Sugar"とそっくりのナンバーもある)。

脳天気でアホっぽいミュージカルである。そういう意味においてもミーマイとか「クレイジー・フォー・ユー」に近い。「レ・ミゼ」や「エリザベート」「オペラ座の怪人」みたいな深刻な作品ばかりではなく、たまにはこういうくだけたものもお口直しにいい。ウキウキした気持ちになれて、スキップして帰りたくなるような作品だ。音楽もいいい。特に「ハンドバックは母親ではない」というナンバーが最高に可笑しい!

初演時もそうだったが20人弱の生オーケストラ付き(16人くらい?)。劇団四季はカラオケ上演なので、こういうのはありがたい。

明日海りおは美貌・歌唱・ダンス力全てにおいて完璧な男役なので、今回も文句があろう筈はない。瀬奈じゅんより断然良かった。

花乃まりあについてはトップ娘役就任以来「頭が大きい(縦が明日海の1.5倍)」だの「老け顔」だの散々文句を書いてきたが、本作は《意地悪なおばさん》役なので、これが見事にハマった。初めて彼女が魅力的に見えた。明日海の相手役という固定観念を取り払い、よくよく客観的に見れば割と美人じゃないかと思えてきた。今までゴメン。「ミーマイ」のサリーも頑張って。

芹香斗亜は兎に角芸達者だった。初演のきりやんと比べても遜色ない。あとアルトの歌声が素晴らしい。是非彼女で「ファントム」のキャリエールが観たい。銀橋でのエリックとのデュエット"You Are My Own(お前は私のもの)"とか聴いたら、失神するんじゃないだろうかと妄想が広がった。

城妃美伶は絶世の美女で大満足。

このプロダクション、必見ですぞ。

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映画「ザ・ウォーク」とシーシュポスの神話

評価:A

Thewalk

2008年度米アカデミー賞長編ドキュメンタリー部部門を制した実話の映画化である。ドキュメンタリー映画「マン・オン・ワイヤー」のレビューはこちらに書いた。

僕はドキュメンタリーに負けず劣らず面白いと思った。アカデミー作品賞・監督賞を受賞した「フォレスト・ガンプ」(1994)以降、ロバート・ゼメキスは鳴かず飛ばずだったが、久しぶりにいい仕事をした。あとベートーヴェンの「エリーゼのために」が意外なところで鳴り響き、これがまた摩訶不思議にも似合っていた!びっくりした。

主人公の大道芸人を演じたジョゼフ・ゴードン=レヴィット(ユダヤ系アメリカ人)やその師匠役ベン・キングズレー(イギリス人)は余りフランス人に見えなかったけれど、まぁそこは目を瞑って、中々好演していた。ジョゼフ・ゴードン=レヴィットはフランス語に堪能だった。ベン・キングズレーはアカデミー主演男優賞を受賞した「ガンジー」でインド人を演じたわけだが、アレック・ギネスほど変装の名人とは言えないな(ギネスは「アラビアのロレンス」でイラク国王、「ドクトル・ジバゴ」でソ連人、"A Majority of One"で日本人、「アドルフ・ヒトラー/最後の10日間」でヒトラー、「スター・ウォーズ」でオビ=ワン・ケノービ、「インドへの道」ではインド人を演じた)。

ギリシャ神話に「シシュポス(シーシュポス)の岩」というエピソードがある。小説「異邦人」で有名なアルベール・カミュの随筆「シーシュポスの神話」冒頭部を引用してみよう。

神々がシーシュポスに課した刑罰は、休みなく岩をころがして、ある山の頂まで運び上げるというものであったが、ひとたび山頂にまで達すると、岩はそれ自体の重さでいつもころがり落ちてしまうのであった。
 
無益で希望のない労働ほど怖しい懲罰はないと神々が考えたのは、たしかにいくらかはもっともなことであった。

正にカミュが言うところの「不条理」である。しかし考えてみれば、我々の人生とはこの「不条理」の繰り返しなのではないか?例えば子供を作り、育てる。やがて娘(息子)は成長し、巣立つ。結婚し、遠くで暮らすことになるかも知れない。では、それまでの努力が何の役に立った?あるいは、一生懸命働いて財産を築く。銀行に沢山貯金をする。そして死ぬ。結局、残ったお金は本人にとって無意味となる(勿論、子孫のためにはなるけれど)。

フランスの大道芸人フィリップ・プティは世界貿易センター(World Trade Center、WTC)ビルに不法侵入し、世界一の高さを誇る2つの塔に鋼鉄のワイヤーを渡して綱渡りをした。一体それに何の意味がある?答えは勿論決まっている。綱渡りこそが彼の人生の全て、生きる目的なのだ。それは正に宗教的体験でもある。ワイヤーの上にしか彼の神は存在しない。だからこそ、そこで跪くのだ。そして観客は彼と一緒に世界で最も美しい景色を目撃/共有することになる。

映画「ザ・ウォーク」を観るという行為はこのような哲学的思索の旅でもある。3D効果が絶大で、高所恐怖症なら竦み上がるかも。是非貴方も体験されたし。

最後に、2つの塔を結ぶ綱を渡りきったプティにはWTC最上階への通行許可証が贈与される。そのフリー・パスには有効期限が消されており、"Forever"と書き換えられていた。しかし、2001年の同時多発テロでWTCは呆気なく崩壊した。「永遠」は、なんと短かかったことだろう!人生の有限性という苦味を思い知らされた。

いのち短し 恋せよ乙女 (ゴンドラの唄)

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