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2016年2月 8日 (月)

厳選!これだけは観ておきたいミュージカル・ベスト30(+吹奏楽との関連も)

姉妹編として下記もどうぞ。

ミュージカルもオペラと同様、吹奏楽との関連性に触れた。それでは早速、行ってみよう!

まず純粋に好きな作品を上位から並べてみた。すると……。

  1. オペラ座の怪人
  2. エリザベート
  3. ロミオ&ジュリエット
  4. ファンタスティックス
  5. メリリー・ウィー・ロール・アロング
    〜それでも僕らは前へ進む〜
  6. キャバレー
  7. ミス・サイゴン
  8. スウィーニー・トッド
  9. シー・ラヴズ・ミー
  10. ラ・カージュ・オ・フォール
  11. ジーザス・クライスト・スーパースター
  12. プロデューサーズ
  13. 太平洋序曲
  14. ライオンキング
  15. 屋根の上のバイオリン弾き
  16. リトル・ナイト・ミュージック
  17. 翼ある人々 ーブラームスとクララ・シューマンー
  18. ノバ・ボサ・ノバ
  19. コーラスライン
  20. 蜘蛛女のキス
  21. Into the Woods
  22. 春のめざめ
  23. サンセット大通り
  24. ファントム
  25. 42nd Street
  26. デス・ノート
  27. MITSUKO
  28. オケピ!
  29. パッション
  30. ジョージの恋人(サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ)
  31. CHESS
  32. 回転木馬
  33. CAN-CAN
  34. ミー&マイガール
  35. ハウ・トゥー・サクシード
    ー努力しないで成功する方法ー
  36. モーツァルト!
  37. ピーターパン
  38. レ・ミゼラブル
  39. キャッツ
  40. RENT
  41. クレイジー・フォー・ユー
  42. 壁抜け男
  43. 王家に捧ぐ歌
  44. スカーレット・ピンパーネル
  45. エビータ
  46. ガイズ&ドールズ
  47. ビリー・エリオット ~リトル・ダンサー~

ソンドハイムが7作、ロイド=ウェバーが5作、ワイルドホーン3作、カンダー & エブ2作、シェーンベルク & ブーブリル2作、リーヴァイ & クンツェ2作、フランク・レッサー2作、エルトン・ジョン2作。これでは長過ぎて、収集がつかないと判断した。そこでオペラと同じく1作曲家1作品に絞ることに方針を変更し、整理したのが以下の結果である。

  1. オペラ座の怪人
  2. エリザベート
  3. ロミオ&ジュリエット
  4. ファンタスティックス
  5. メリリー・ウィー・ロール・アロング
    〜それでも僕らは前へ進む〜
  6. キャバレー
  7. ミス・サイゴン
  8. シー・ラヴズ・ミー
  9. ラ・カージュ・オ・フォール
  10. プロデューサーズ
  11. ライオンキング
  12. 屋根の上のバイオリン弾き
  13. 翼ある人々 ーブラームスとクララ・シューマンー
  14. ノバ・ボサ・ノバ
  15. コーラスライン
  16. 春のめざめ
  17. ファントム
  18. 42nd Street
  19. デス・ノート
  20. オケピ!
  21. CHESS
  22. 回転木馬
  23. CAN-CAN
  24. ミー&マイガール
  25. ハウ・トゥー・サクシード
    ー努力しないで成功する方法ー
  26. ピーターパン
  27. RENT
  28. クレイジー・フォー・ユー
  29. 壁抜け男
  30. 王家に捧ぐ歌

それでは各作品へのコメントをしよう。ただリストが長いので今まで書いた記事へのリンクを中心とし、簡潔にまとめることを心がけた。

「オペラ座の怪人」は山口祐一郎主演の劇団四季版@大阪を観て以来、不動のベスト1であり続けている。アンドリュー・ロイド=ウェバーはあの頃、天才だった(過去形)。大阪はカラオケ上演だがその後、東京赤坂で生オケ版を観て、ウエストエンド(ロンドン)、ブロードウェイ、ラスベガス(現在は閉幕)まで足を運んだ。詳しい話はこちらの記事にまとめた。映画版はあれなので、「オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン」DVD/Blu-rayをご覧になることをお勧めする。あと続編「ラヴ・ネヴァー・ダイズ」はゴミである。「えっ、愛は死なない?いや、頼むから死んでくれ!」って感じ。さようなら、ロイド=ウェバー。吹奏楽用の楽譜はいくつも出版されているがポール・マーサ編曲版はお粗末。良いアレンジだと想うのは建部知弘によるものと、「指輪物語」の作曲で知られるヨハン・デ・メイのもの。後者は梅田隆司/大阪桐蔭高等学校吹奏楽部の演奏が素晴らしい。またロイド=ウェバー最後の傑作ミュージカル「サンセット大通り」が日本初演に至るまでの紆余曲折はこちらに解説した。

「エリザベート」は恐らく、今まで最も観劇回数が多い作品であろう。宝塚版は宙組1998年公演以降全てのバージョン、東宝版、ウィーン版などを観ている。詳しくはエリザベートの想い出や、明日海りおにノックアウト!宝塚花組「エリザベート」/オールタイム・ベスト・キャスト考を御覧ください。宝塚版はDVD/Blu-rayで入手可能。吹奏楽ではヨハン・デ・メイ編曲版があり、梅田隆司/大阪桐蔭の演奏を聴いた感想はこちら。またクンツェ×リーヴァイの作品では「モーツァルト!」もお勧め。東宝からDVDも発売中。こちら

「ロミオ&ジュリエット」はフランス産ミュージカル。宝塚歌劇で衝撃的出会いを果たし、その後男女混成版、フランスからの来日公演も観た。”エメ”最高!宝塚月組 フレンチ・ミュージカル「ロミオとジュリエット」(明日海りお 主演)や、ミュージカル「ロミオとジュリエット」フランス版来日公演をご覧あれ。宝塚版はDVD/Blu-rayで鑑賞出来る。以上が僕の考える世界三大傑作ミュージカルである。

「ファンタスティックス」はオフ・ブロードウェイで42年間の長きに渡り上演されていた作品。少人数の出演者、小編成のオーケストラ、簡素な舞台装置。これぞミュージカルの原点である。「洗練を極めれば簡素(シンプル)になる」というスティーブ・ジョブズの言葉を想い出す。特に"Try To Remember"というナンバーはしみじみ胸に沁みて大好き!舞台の感想はこちら。僕が2001年8月にブロードウェイに旅行した時、これを観るか散々迷った挙句、「次に来る時も上演しているだろう」と高を括って他の作品を選んでしまった。その直後に同時多発テロが勃発、観客が激減し翌年に何と閉幕してしまった!後悔先に立たずである。

「メリリー・ウィー・ロール・アロング 〜それでも僕らは前へ進む〜」色々作品を観れば観るほど、スティーヴン・ソンドハイムの凄さには打ちのめされる。彼はブロードウェイの宝。アメリカ人にとってのソンドハイムの立ち位置は、イタリア人にとってのロッシーニやヴェルディに相当するだろう。「メリリー・ウィー・ロール・アロング」の感想はこちら。兎に角、時間が逆走していく台本が圧巻。ハロルド・プリンス演出にもかかわらず初演はコケたわけだが(プレビュー公演52回、本公演はたった16回)、早すぎた傑作だったのだろう。その他のソンドハイム作品について、「スウィーニー・トッド」こちら。ディズニーで映画化された「イントゥ・ザ・ウッズ」についてはこちら。昨年の日本初演で衝撃を受けた「パッション」こちら。吹奏楽ではステファン・ブラ編曲による「イントゥ・ザ・ウッズ」「スウィーニー・トッド」がお勧め。

「キャバレー」の上演史についてはこちらの記事で詳しく語った。ナチス・ドイツ時代のベルリンを舞台とするこのミュージカルは退廃と狂気の象徴でもある。そして、嘗てナチスに《退廃芸術》の烙印を押されたブレヒト×ヴァイルの「三文オペラ」と密接に繋がっている。「キャバレー」初演時にはクルト・ヴァイルの未亡人で「三文オペラ」で主演したロッテ・レーニャがシュナイダー婦人(下宿屋の女主人)を演じた。2017年に松尾スズキ演出により再演が予定されている。

「ミス・サイゴン」については「ミス・サイゴン」の想い出をご覧あれ。プッチーニの「蝶々夫人」が土台となっている。因みにプッチーニの「ラ・ボエーム」は「RENT」に生まれ変わった。2002年、全日本吹奏楽コンクールの自由曲で大滝実/埼玉栄高等学校吹奏楽部は「ミス・サイゴン」(編曲:宍倉 晃)を演奏し金賞を受賞、一大センセーションを巻き起こした。コンクール翌日から大滝先生の元へは楽譜に関する問合せが殺到したそうである。空前のブームとなる序章であった。さらにシェーンベルク & ブーブリルの作品では「レ・ミゼラブル」のことも触れないわけにはいかない。

ヒュー・ジャックマンがジャン・バルジャンを演じた映画版も優れているし、25周年記念コンサートDVD/Blu-rayもお勧め。2013年、宇畑知樹/伊奈学園総合高等学校は全日本吹奏楽コンクールで森田一浩編の「レ・ミゼ」を演奏し、金賞を受賞した。また大阪桐蔭が演奏するウォーレン・バーカー編曲版は歌がたっぷり入っていて、こちらも聴き応えがある。

「シー・ラヴズ・ミー」はクリスマスに恋人や家族と是非観たい、愛すべき逸品である。僕は市村正親×涼風真世のコンビで観たが、再演を切に願う。チェコの劇作家ニコラウス・ラズロの戯曲が原作で、エルンスト・ルビッチ監督「街角 桃色の店」(THE SHOP AROUND THE CORNER)という映画にもなっている。映画「恋人たちの予感」「めぐり逢えたら」の脚本を書いたノーラ・エフロンは少女時代、毎年クリスマスになるとシナリオ・ライターだった両親 (映画「回転木馬」「あしながおじさん」を脚色)に連れられ劇場に「シー・ラヴズ・ミー」を観に行っていたという。後年、文通を通じて出会う男女という設定を電子メールという手段に置き換えて、ノーラは幼少期の大切な想い出をメグ・ライアン、トム・ハンクス主演「ユー・ガット・メール」に封印した。映画の中で家族に囲まれて少女がミュージカル「アニー」から"Tomorrow"を歌うのは、そうした訳である。

「ラ・カージュ・オ・フォール」というミュージカルが産まれるまでの経緯はこちらの記事で深く掘り下げた。名曲揃い。ジェリー・ハーマンの卓越した仕事に乾杯!

「プロデューサーズ」はトニー賞で史上最多の12部門を受賞。僕は2001年8月にブロードウェイでオリジナル・キャストが出演した舞台を観ている。後にネイサン・レイン、マシュー・ブロデリックらオリジナル・キャストも出演し、舞台版で振付・演出を担当したスーザン・ストローマン監督で映画化されたのだが、こちらは惨憺たる出来だった。舞台の名演出家=映画監督としても優れているとは限らないことを痛感させられた出来事だった。ミュージカル「キャバレー」を観て演出家のサム・メンデスを映画「アメリカン・ビューティ」の監督に起用したスピルバーグは慧眼だった(アカデミー作品賞・監督賞受賞)。舞台の話に戻すと実に愉快なコメディで、特に劇中劇「ヒトラーの春」は爆笑もの!何故か日本ではジャニーズ事務所が版権を買い、V6主演で上演された。頼みますから東宝とかフツーの劇団で再演してください。オリジナルのメル・ブルックス監督・主演の映画「プロデューサーズ」も歴史に名を残す名作。

僕は1998年12月20日に四季劇場[春]でミュージカル「ライオンキング」の日本初演(初日)を観ている。詳しい話はこちら。アニメーションの方は散々、手塚治虫「ジャングル大帝」のパクリと非難されたわけだが、僕もそれを否定しない。ただディズニー・アニメは「ジャングル大帝」にシェイクスピアの「ハムレット」の要素を加味している。舞台版は演出家ジュリー・テイモアの独創性が瞠目すべき効果を上げている。特にオープニングが圧巻だ。トニー賞では最優秀ミュージカル賞、演出賞、美術賞、照明賞、振付賞、衣装デザイン賞の6部門受賞。なお、大阪桐蔭が演奏した吹奏楽版の感想はこちら

「屋根の上のバイオリン弾き」についてはこちらで詳しく語った。森繁久彌の時代から日本で愛され続けているミュージカルだが、多分ユダヤ人と日本人って似てるんだよね。まじめに働きコツコツ貯金するところとか、ヴァイオリンが得意なところとか。僕は哀愁を帯びた物語と音楽が好き。

吹奏楽版は後藤洋の編曲か、2016年2月12日のオオサカ・シオン定期演奏会で初演された宮川彬良編曲(未出版)がお勧め。あとIra Hearshen編曲による"Symphonic Dances from Fiddler on the Roof"も悪くない。

「翼ある人々 ーブラームスとクララ・シューマンー」に関してはこちら。作・演出は上田久美子。宝塚歌劇からもの凄い才能の女性演出家が台頭してきた。DVDが発売されているので是非そちらで目撃せよ!上田久美子は「星逢一夜」もお勧め。

「ノバ・ボサ・ノバ」についてはこちら。宝塚歌劇が産んだ、空前絶後・史上最高のショーである。未見の方はDVDまたはBlu-rayでどうぞ。

「コーラスライン」は最初劇団四季で観て、映画を観て、そしてアメリカからのツアー・カンパニー来日公演の感想をこちらに書いた。日本人が本作を演じることの難しさについて論じている。さらに、どうして僕が舞台版「ウエストサイド物語」を評価しないのかという理由も。劇団四季で本作を観るくらいなら、リチャード・アッテンボロー監督の映画版(1985)の方を選ばれることをお勧めする。吹奏楽では森田一浩 編曲によるメドレーがある。コンサートで"ONE"を歌い踊れば、盛り上がるのではないだろうか?

「春のめざめ」のレビューはこちら。柿澤勇人という役者と劇的出会いをした作品だが、彼はその直後劇団四季を辞めたので、最早彼の「春のめざめ」を観ることは叶わない。

「ファントム」についてはこちら。「オペラ座の怪人」がファーザー・コンプレックスの話なら、こちらはマザコンの話である。同じ題材に対して全く別の角度から光を当てており、どちらも観る価値がある。「オペラ座」のせいでブロードウェイ上演には至らなかった気の毒な作品だが、僕はモーリー・イェストンがトニー賞最優秀楽曲賞を受賞した「ナイン」や「タイタニック」より「ファントム」の方が断然好き。音楽も、台本も、全ての点において。宝塚版がDVD/Blu-rayで入手可能。

「42nd Street」は元々アカデミー作品賞を受賞した映画「四十二番街」(1932)をベースにしている。演出・振付を担当したガワー・チャンピオンは初日が開く直前に亡くなり、公演終了後に観客にその事実が明かされたという劇的な開幕をした(その裏ではマスコミで話題になるように、ちょっとした調整が行われたようだ。That's Showbiz ! )。僕は2001年にブロードウェイでリバイバル公演を観たが、とにかく群舞が圧巻!タップダンスの迫力・魅力を堪能出来る(特に”ブロードウェイの子守唄”)。吹奏楽では岩井直溥編曲による「アメリカン・グラフィティXIII」【ハロー・ドーリー! 〜ブロードウェイの子守歌〜私の彼氏 (私の愛する人、ザ・マン・アイ・ラブ) 〜キャバレー】がある。    

「デス・ノート」についてはこちら。ワイルドホーンが曲を書いた作品では「MITSUKO 〜愛は国境を超えて〜」も大好き。どちらを選ぶか散々迷ったけれど、物語の面白さで「デス・ノート」に軍配が上がった。

「オケピ!」は三谷幸喜台本で、ミュージカルのオーケストラ・ピットが物語の舞台となる。発想が秀逸だ。作曲は「王様のレストラン」「半沢直樹」「真田丸」の服部隆之。とてもスケールの大きな音楽を書いている。コンダクター(指揮者)役を白井晃が演じる再演版がDVDで観れるが、僕は真田広之がコンダクターだった初演版の方が好き。再演時に映画「ラストサムライ」の撮影が重なり、真田は降板したのだった。

「CHESS」についてはこちらをどうぞ。あと関連作品として映画「完全なるチェックメイト」も併せて観ておきたい。

「回転木馬」はロジャース&ハマースタイン2世による名作。「サウンド・オブ・ミュージック」が有名だが、これは映画の完成度が極めて高く、舞台が霞んでしまう。「回転木馬」の"You'll Never Walk Alone"は感動的なナンバーで、今やサッカーのサポーターソングとしても有名になった。吹奏楽ではロバート・ラッセル・ベネット編曲による「カルーセル・ワルツ」やジョン・モス編曲による「栄光のブロードウェイ」【バリ・ハイ(南太平洋)〜カルーセル・ワルツ(回転木馬)〜すべての山を登れ(サウンド・オブ・ミュージック)〜仲良くしましょう(王様と私)〜オクラホマ(オクラホマ)】がある。

「CAN-CAN」はコール・ポーターの代表作として挙げた。宝塚月組で上演された際、娘役・風花舞の華麗なダンスに瞠目した。

「ME AND MY GIRL」についてはこちら。端的に言えば「マイ・フェア・レディ」の男性版である。

「ハウ・トゥー・サクシード -努力しないで成功する方法-」宝塚版について僕が書いたレビューはこちら

「ピーターパン」についてはこちら。この作品の魅力としてはフライングに尽きる。是非小さいお子さんに観せてあげてください。

ピューリッツァー賞とトニー賞で最優秀作品賞を受賞した「RENT」は日本人キャストの公演を観ても、その真価が絶対に判らないミュージカルである。白人(WASP)がいて黒人がいて、ヒスパニックなど様々な人種がいて、性的嗜好もストレートがいて、ゲイがいて、バイセクシャルもいる。そういう多様性があって初めて本作の哀しみとか気持ちの軋みが見えてくるのだ。オリジナル・キャストのアダム・パスカルとアンソニー・ラップのライヴを聴いた感想はこちら。彼らも出演したクリス・コロンバス監督の映画版(2006)か、「レント・ライヴ・オン・ブロードウェイ」DVD/Blu-rayをお勧めする。

「クレイジー・フォー・ユー」1920-30年代にブロードウェイを席巻した作曲家といえばジョージ・ガーシュウィンであり、コール・ポーター、アーヴィング・バーリン、ジェローム・カーンらであった。しかし彼らの作品の殆どはリバイバルされることがない。曲は素晴らしくても台本が古臭くなり、現代に通用しないからだ。そこでガーシュウィンの「ガール・クレイジー」を創り直したのが「クレイジー・フォー・ユー」である。トニー賞で最優秀作品・衣装・振付賞(スーザン・ストローマン)を受賞した。吹奏楽ではウォーレン・バーカー編曲による「ガーシュイン!」【魅惑のリズム〜エンブレイサブル・ユー〜誰かが私を見つめてる〜アイ・ガット・リズム 】か、「アルヴァマー序曲」で有名なジェイムズ・バーンズ編曲による「”ガール・クレイジー”からの音楽」【エンブレイサブル・ユー〜チャンスを待ちながら〜アイ・ガット・リズム〜私のためじゃない(But Not For Me) 】がいい。

フレンチ・ミュージカル「壁抜け男」は地味だけれど、哀感があり、しみじみとした味わいのある作品。ブロードウェイでも"Amour"というタイトルで上演された。日本は博多で初演。僕はその初日を観ている。石丸幹二・井料瑠美らが出演した。伴奏はピアノ・リード・パーカッションの3人のみなので、劇団四季としては珍しく地方都市の専用劇場でも生演奏だった(全国ツアーはカラオケ)。音楽はミシェル・ルグラン。彼の全盛期は何と言っても「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」「愛のイエントル」の頃で、「壁抜け」では筆力が衰えている感が否めないけれど、決して悪くはない。ところで「愛のイエントル」も舞台化してほしいなぁ。吹奏楽では宮川彬良の卓越した編曲「ロシュフォールの恋人たち」 から”キャラバンの到着とマクサンスの歌”が最高。”キャラバンの到着”は岩井直溥編曲版もある。

宝塚歌劇のオリジナル・ミュージカル「王家に捧ぐ歌」についてはこちら。ヴェルディの歌劇「アイーダ」を基にしており、同じ題材でディズニー製作のミュージカルもある。後者は作詞:ティム・ライス、作曲:エルトン・ジョンという「ライオンキング」のコンビ。でも僕は宝塚版の方が作劇として優れていると想う。DVD/Blu-rayでどうぞ。

最後に。イタリアはオペラの中心地だが、逆にミュージカル不毛地帯である。イタリアで「キャッツ」や「オペラ座の怪人」「レ・ミゼラブル」が上演されたという話はとんと聞かない。むしろドイツ・オーストリア・ハンガリーでは盛んである。この辺のお国柄の違いが興味深い。多分イタリア人はオペラ文化に誇りを持ち、それだけで十分満足しているので、「ミュージカルなんて……」と興味がないのだろう。

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