クリード チャンプを継ぐ男
評価:A
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僕は「ロッキー」シリーズを第1作目のみ観ている。理由はアカデミー作品賞・監督賞・編集賞を受賞した名作だからだ。ちなみにノミネートはシルベスター・スタローンの主演男優賞・オリジナル脚本賞を含めて10に及ぶ。しかしそもそもボクシングに何の興味もないので、スタローンが監督も兼ねるようになった「ロッキー2」以降は全く食指が動かない(「ロッキー4/炎の友情」はゴールデンラズベリー賞に最低作品賞・最低監督賞など8部門にノミネートされ、5部門受賞するという不名誉な記録を残した)。
とは言え「ロッキー」のスピンオフ?「クリード」は是非映画館に足を運ばねばと想った。北米での評判が「第1作目に匹敵する」とすこぶる良かったからである。で最後は「涙なしには観られない」と散々聞かされていたわけだが、ご多分に漏れずやられた!
脚本・監督のライアン・クーグラーは現在29歳。大した才能だ。黒人のアカデミー監督賞受賞は現在、もっとも重要な懸案事項だが(「女性」については2008年「ハート・ロッカー」でキャスリン・ビグローが受賞)、彼こそ最も近い位置にいると言えるだろう(他に有力なのが「グローリー ー明日への行進ー」のエヴァ・デュヴァネイ)。彼の処女作「フルートベール駅で」(2013)も是非観なければ!
プロットは基本的に細田守の「バケモノの子」と同一である。武者修行の若者と老人が特訓を通じて擬似親子の関係に至る(=そして父になる)。それが白人(ロッキー・バルボア)と黒人( アドニス・クリード)の組み合わせというのが面白い。
舌を巻いたのが編集の上手さ。クリードのデビュー戦では戦いの開始から終わりまで何とワンカットの長回し!それも近接撮影で、すごい迫力だった。ところがクライマックスの試合になると戦法を変えて今度は細かいカット割り。マーティン・スコセッシも真っ青。痺れた。
あと音楽がいい。「ロッキー」といえばビル・コンティのテーマ曲だけれど、それを小出しにしながら巧みに挿入している。で「クリード」のファンファーレも金管が華やかに鳴り響くのだが、「ロッキー」のトランペットに対してトロンボーン中心で変化を付けている(やや低音寄り)。途中からコーラスが加わるところも「ロッキー」の精神を継承しており、オリジナルへの敬意が感じられる。
本作を鑑賞するにあたり、「ロッキー2」以降を観ていなくても全く支障なかった。しかし最低限第1作目は予備知識として頭に入れておいた方がいい。何故なら、かの有名なフィラデルフィア美術館の正面階段(ロッキー・ステップ)が登場するからである。予習ありなしでは感動の度合いが全く違うのだ。
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