« 井上道義/大フィルのレニングラード | トップページ | 今井信子(提供)ブラームスのクラリネット&ヴィオラ・ソナタ »

2015年12月 2日 (水)

007 スペクター

評価:B+

Spe

映画公式サイトはこちら

監督にサム・メンデスが就任した前作「スカイフォール」は紛れもなくシリーズ最高傑作だった。僕のレビューはこちら。だから監督続投で期待した本作だが、些か肩透かしの感は否めない。

盛り沢山ではあるが、構成が緩い。しかしそれは本来007シリーズの特徴であり、揺り返しと言えないこともない。むしろ人間ドラマが濃密でシリアスな「スカイホール」の方が異色だったのだ。

本作で、美女と列車で移動中に敵に襲われるというエピソードは明らかに「ロシアより愛をこめて」へのオマージュである。過去の作品への目配りは色々とある。

スペクターの首領オーベルハウザーをタランティーノ映画で2度アカデミー賞に輝いた名優クリストフ・ヴァルツが演じているのだが、残念ながら少しも怖くない。むしろ大らかで愛嬌がある。これはシナリオに責任があるだろう(「イングロリアス・バスターズ」のヴァルツには凄みがあった)。例えばオーベルハウザーがボンドに選択を迫る場面がある。ビルに爆弾を仕掛けた。制限時間は3分。それまでに退避するか、それとも建物内の何処かに捕えている女を探し出すか?……これって実は「ダークナイト」でジョーカーがバットマンを試す手法と全く同じなんだよね。でもジョーカーの方が圧倒的に悪魔的であり、結果も悲劇的だ。オーベルハウザーは詰めが甘すぎ、はっきり言ってマヌケである。敵に魅力がないと萎える。

ボンド・ガールについて。「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」では殺し屋(呆気なく直ぐ死んでしまう)役を演じたレア・セドゥは美人だし文句なし。ただ、モニカ・ベルッチはどうよ!?いや、確かに妖艶な熟女だけれど、今年51歳だぜ。シリーズ史上最高齢では?何事にも限度というものがある。「マレーナ」の頃は良かったけれど、15年前の映画だからね。

あと「スカフォール」の撮影監督はロジャー・ディーキンスでターナーの絵を彷彿とさせる芸術的仕上がりだったのに対し(アカデミー賞で撮影賞にノミネート)、ホイテ・ヴァン・ホイテマに交代した「スペクター」はイマイチだった。

メンデスは映画冒頭、メキシコの「死者の日」の演出が見事だった。非常にミュージカル/オペラ的なんだよね。「オペラ座の怪人」のマスカレード(仮面舞踏会)の場面を想い出した。いきなりの長回しには度肝を抜かれた。

ちなみに彼はブロードウェイ・ミュージカル「キャバレー(再演)」をロブ・マーシャル(映画「シカゴ」「イントゥ・ザ・ウッズ」)と共同演出している。この舞台を観たスピルバーグが「アメリカン・ビューティ」のメガホンを託した(初監督作品となった)。ミュージカル「スウィーニー・トッド」はティム・バートンの手に渡る前にメンデスが映画化を模索していたし、同じソンドハイム(作詞・作曲)のミュージカル「フォーリーズ」も何年も前から映画化企画を温めている。早く彼が監督するミュージカル映画を観たい!

| |

« 井上道義/大フィルのレニングラード | トップページ | 今井信子(提供)ブラームスのクラリネット&ヴィオラ・ソナタ »

Cinema Paradiso」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 007 スペクター:

» 「007 スペクター」復活!悪の秘密結社!! [シネマ親父の“日々是妄言”]
[007スペクター] ブログ村キーワード  ダニエル・クレイグ、4度目のボンドに。挑むのは過去最大の敵?!「007 スペクター」(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)。シリーズ最大の興奮を引っさげて、いよいよ日本上陸です。でも、いつも思うのですが…、何で日本公開は遅いのさ!  “死者の日”の祭で賑わうメキシコシティに現れたボンド(ダニエル・クレイグ)は、大立回りの末に標的の男を始末する。その件をM(レイフ・ファインズ)に叱責されるボンドだったが、“スカイフォール”で焼け残った写... [続きを読む]

受信: 2015年12月 6日 (日) 00時53分

« 井上道義/大フィルのレニングラード | トップページ | 今井信子(提供)ブラームスのクラリネット&ヴィオラ・ソナタ »