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シベリウスと吉松隆、そして宮沢賢治〜関西フィル定期

10月30日(金)ザ・シンフォニーホールへ。

藤岡幸夫/関西フィルハーモニー管弦楽団で、

  • シベリウス:交響曲第6番
  • 吉松隆:ドーリアン
  • 吉松隆:サクソフォン協奏曲「サイバーバード」
    (サクソフォン:須川展也、ピアノ:小柳美奈子、パーカッション:山口多嘉子)
  • 吉松隆:溶けてゆく夢(ソリスト・アンコール)

シベリウス:交響曲第6番についての藤岡による解説は→こちら(公式ブログ)

そして高校生1年生の時にこのシンフォニーに出会い、作曲家になる決意をしたという吉松隆が宮沢賢治「銀河鉄道の夜」との親和性について論じた文章が→こちら(「シベリウスと宮沢賢治」)

「銀河鉄道の夜」はカムパネルラの死やタイタニック号沈没の犠牲となった姉弟が登場するなど仄暗い影に覆われているのだが、これは1922年の妹トシの死が強く影響を与えている(初稿が書かれたのは24年)。また賢治はクリスチャンの斎藤宗次郎と交流があり、初稿にはタイタニック号の場面で賛美歌306番「主よ御許に近づかん」の歌詞が引用されている。

シベリウスの6番は教会旋法(「グリーンスリーブス」でも用いられているドリア旋法)が取り入れられた祈りの音楽だが、やはり作曲の直前に弟クリスチャンの死があった。慰めに満ちた第1楽章はゆったりと開始されるが、そこには律動がある。第2楽章を支配するのは清浄な透明感。夜の森にひっそりと憩う湖のよう。第4楽章で藤岡/関西フィルの演奏は機動力があり、すばしっこい。キツネとかリスの動きを連想した。ちなみにフィンランドでオーロラは「狐火」を意味するレヴォントゥレット(revontulet)と呼ばれており、キツネが走ると尻尾が雪原に触れ、それが火花となって巻き上がり夜空に光となって現れるのだという伝承がある。

吉松最初期の作品「ドーリアン」はストラヴィンスキー「春の祭典」に基づく変拍子で開始され、プログレッシヴ・ロックのカオスに移行。キース・エマーソン(ELP)の「タルカス」を髣髴とさせる。そして最後はシベリウス6番に触発された強烈なドーリア旋法で締め括られる。ハチャメチャで最高!あと途中、吉松らしく鳥の鳴き声も聴こえてきた。

「サイバーバード」はJazzy & Cool。第1楽章【Bird in Colors 彩の鳥】は爽やかな風が吹き抜ける。須川のサックスの音は豪快で尖っている。ジョン・コルトレーンやオーネット・コールマンらのフリー・ジャズ・スタイル。続く第2楽章【Bird in Grief 悲の鳥】は死の床にあった妹の病室で作曲された ここでのサックスは慟哭。ピアノの音は窓を濡らす雨音か点滴のよう。一転して第3楽章【Bird in the Wind 風の鳥】でサックスは天翔ける。何度も聴いている曲だが、今回初めて気がついたのは第2楽章「悲の鳥=ひのとり」は「火の鳥」と同音であり、灰の中から何度でも蘇る不死鳥(フェニックス)のイメージも重ねられているのではないだろうか?因みに吉松の妹は「今度生まれてくるときは鳥がいい」と言い残して亡くなったという。

アンコールの「溶けてゆく夢」は静謐な叙情があり、吉松もうひとつののデビュー作「朱鷺によせる哀歌」(「ドーリアン」同様、ドーリア旋法で書かれている)を彷彿とさせた。

吉松隆が来場しており、藤岡とのプレトークもあり。シベリウスと吉松の音楽に対する藤岡の愛が迸る、中身の濃い演奏会だった。

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