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2015年10月20日 (火)

英国版ミュージカル「TOP HAT」来日公演と映画「カイロの紫のバラ」「グリーンマイル」

ウディ・アレン脚本・監督の映画「カイロの紫のバラ」(1985)のラスト・シーン、ミア・ファロー演じるセシリアは映画館で「TOP HAT」(1935)を観ている。自分の置かれた悲惨な状況を忘れ、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースのダンスに夢中になるセシリア。アステアが"Heaven, I'm in heaven.🎶"と歌っている。曲は"Cheek to Cheek"。そこには「希望」が残る。

またスティーヴン・キング原作、トム・ハンクス主演の映画「グリーンマイル」(1999)では刑務所の中で死刑囚たちがやはりこの"Cheek to Cheek"の場面を観ている。それは正に天国、夢の世界である。

「20世紀最高のダンサーは?」と問われたら、僕は何の躊躇もなくフレッド・アステアと答える。アステアの特徴はズバリ「エレガンス」。これほど上品に踊れる人を他に知らない。「機関銃」に喩えられる高速タップも勿論素晴らしいのだが(実際に「TOP HAT」でアステアは群舞のダンサーたち全員をタップの一斉射撃で倒す)、そんな場面でも彼の上半身は雲の上を漂っているようにフワフワしている。神業である。実はアステアの本領が発揮されるのはひとりで踊る場面ではなく、デュエット・ダンスである。女性のエスコートの仕方が実に洗練されている。その極めつけが「バンド・ワゴン」でシド・チャリシーと公園で踊る"Dancing in the Dark"だろう。ただただ、うっとり見惚れるのみ。未見の方は「ザッツ・エンターテイメント(part 1)」にも収録されているのでDVDでどうぞ。

アステアのライバルとしてしばしば俎上に載せられるのがジーン・ケリー。ケリーはダイナミックでアクロバティックなダンスに特徴がある。力強く男性的なのだ。この二人は本質的に異なるタイプのダンサーである。

さて、2013年「英国ローレンス・オリヴィエ賞」で最優秀新作ミュージカル賞、最優秀振付賞、最優秀衣裳デザイン賞に輝いた「TOP HAT」来日公演を10月16日(金)、梅田芸術劇場で鑑賞した。

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映画の劇中歌は5曲なので、舞台版にはアーヴィング・バーリンが作曲した他の楽曲も盛り込まれている。冒頭はアステアが映画「ブルー・スカイ」(1946)で歌い踊った"Puttin’ on the Ritz"(←このシーンの彼のダンスは凄い!!)。他に「艦隊を追って」(1936)から"Let’s Face the Music and Dance"など。また映画「TOP HAT」には登場しない帽子掛けとの(デュエット?)ダンスはMGMミュージカル「恋愛準決勝戦」(1951)からの引用である(「ザッツ・エンターテイメント」に収録)。

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主演はアラン・バーキットとシャーロット・グーチ。

アランはアステアほどエレガントでないが(この点に於いては現役ダンサーの誰も太刀打ち出来ないだろう。ないものねだりというものだ)、体のキレ、高い跳躍など申し分ない。歌唱力は断然アステアより上。シャーロットは体が柔らかく明らかにジンジャー・ロジャースより優れたダンサーだ。ウエストエンドの底力を感じた。

またホレス役:クライヴ・ヘイワード、アルベルト役:セバスチャン・トルキア、マッジ役:ショーナ・リンゼイ、ベイツ役:ジョン・コンロイなど脇役が実に味があって、さすがイギリスはシェイクスピアの国、演劇大国だなと感心することしきりだった。

最後にカーテンコールのダンスは写真撮影可ということでパシャリ。

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