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2015年10月27日 (火)

ギドン・クレーメル&クレメラータ・バルティカの四季

10月25日(日)兵庫県立文化センターへ。

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ギドン・クレーメル&クレメラータ・バルティカで、

  • アレクサンドル・ラスカトフ:チャイコフスキー「四季」より
    1月:炉端にて、5月:白夜、12月:クリスマス
  • フィリップ・グラス:ヴァイオリン協奏曲第2番「アメリカの四季」
  • 梅林茂:ヴァイオリンと弦楽オーケストラのための「日本の四季」
  • アストル・ピアソラ:ブエノスアイレスの四季
    (レオニード・デシャトニコフ 編)
  • オスカー・ストローク:ダーク・アイズ(アンコール)
  • ワインベルク:ボニファッツィ・ホリデイズ(アンコール)

いまさら言うまでもないがクレーメルはラトビアのリガで生まれたヴァイオリニスト。彼がバルト3国(エストニアラトヴィアリトアニア)の若い音楽家たちの育成を目的に結成したのがクレメラータ・バルティカ室内楽団である。ちなみにチェリストのミッシャ・マイスキーや指揮者のマリス・ヤンソンス、アンドリス・ネルソンスもラトビアのリガ生まれ。ネーメ&パーヴォ&クリスチャン・ヤルヴィ親子はエストニア出身である。また往年の名ヴァイオリニスト、ヤッシャ・ハイフェッツはリトアニア生まれ。つまりクラシック音楽業界において、バルト3国はホットスポットなのだ。

1曲目(チャイコフスキー)はソロなし。弦楽合奏にローランドの電子ピアノと鉄琴が加わる。囁くような「白夜」を経て「クリスマス」は窓の外で雪降り積る中、暖炉の前で家族が憩っているような優しい温もりがあった。最後は録音機が「1月」を再生する趣向も。

2曲目も電子ピアノあり。ここから登場したクレーメルのヴァイオリンは禁欲的で枯淡の境地。グラスのコンチェルトはプロローグと4つの楽章から成り、その合間に無伴奏ヴァイオリンによる間奏曲「ソング」が入る構成。どの楽章がどの季節かは聴き手の感性に委ねられている。僕の印象は第1楽章が雨だれとか雪雫を連想させ、第2楽章が水が湧き、花が開くイメージ。雲雀の鳴き声も聞こえてくる。疾走感のある第3楽章は夜の高速道路を車が行き交っている情景。ビルを出入りする人々を早回しにした映像ーつまりグラスが音楽を担当した1982年のドキュメンタリー映画「コヤニスカッツィ」を想起させる。第4楽章はさらに高速に。僕は木枯らしに舞う落ち葉(秋)を感じたが、吹雪(冬)と捉える人もいるのも頷ける。ワクワクする演奏だった。途中、グラスが過去に作曲した映画音楽「Mishima(緒形拳が三島由紀夫を演じた/日本未公開/後に弦楽四重奏曲第3番となる)」や「めぐりあう時間たち(The Hours)」「フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白」などを髣髴とさせる箇所もあって愉しい。

20世紀最高のヴァイオリン協奏曲は?と問われたら僕はコルンゴルトと即答する。次点はベルク。

21世紀だったらこのグラスのコンチェルトだなと確信した。

梅林茂の「日本の四季」(委嘱新作)第1楽章「夏」は「ウッ!」という掛け声が挿入され、夏祭りが描かれる。第2楽章「秋」は物哀しい子守唄。「ちんちん千鳥」のような儚さも感じられた。第3楽章「冬」は雪の中を歩むよう。ただ全体としてメロディ主体で単調なムード音楽みたい。冴えない。僕は梅林が音楽を担当した映画「花様年華」「2046」「グランド・マスター」(以上、香港のウォン・カーウァイ監督)や「LOVERS」(中国のチャン・イーモウ監督)とか観ているけれど、今まで一度も関心したことがないんだよね。

ピアソラはリズムにキレと躍動感があった。「秋」は弦に色気があり、「冬」の哀感が胸に滲みる。ピアソラの名曲「アディオス・ノニーノ」にも似た喪失感。「春」は鬼気迫り、「夏」は弦の波のようなうねりが快感だった。考えてみればクラシック音楽界でピアソラが市民権を得たのもクレーメルやヨーヨー・マのおかげなんだよね。感謝しなくちゃ。それからクレーメルは僕が大好きなニーノ・ロータの普及にも尽力してくれた。

これだけ充実した中身だったのに、観客の入りは6割(大ホール2001席)。唖然とした。コバケンの3大シンフォニーの夕べとか、年末の第九ならキャパ2700席のフェスティバルホールが一杯になるのに……。関西の聴衆の目は節穴か?と暗澹たる気持ちになった。

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