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2015年10月19日 (月)

明日海りお 主演/宝塚花組「新源氏物語」「Melodia ー熱く美しき旋律ー」

10月18日(日)宝塚大劇場へ。宝塚花組「新源氏物語」「Melodia ー熱く美しき旋律ー」を観劇。

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「新源氏物語」は田辺聖子原作、柴田侑宏台本、大野拓史演出。1981年初演で今回が3回目の上演となる。

藤壺の女御(花乃まりあ)が光源氏(明日海りお)と夜伽するエピソードから始まり、愛人・六条御息所(柚香 光)の生霊が正妻・葵の上(花野じゅりあ)を呪い殺すオカルトを経て、紫の上(桜咲彩花)との恋、そして二番目の正妻・女三の宮が柏木と通じ不義の子が生まれ、光源氏が因果応報もののあはれを感じるところで幕となる。正に「源氏物語」のハイライト、いいとこ取りである。

先日、冨田勲作曲「源氏物語幻想交響絵巻」をいずみホールで聴いた時、作曲家が「『源氏物語』を読んでいて、光源氏の顔だけがどうしても思い浮かばない」と語っていた。そう、光源氏には実体・存在感が希薄なのである。夢の住人とでも言うべきか、辺りに香の薫りは漂っていても男の体臭がしない。気配しかないのである。

光源氏がしていることは女たらし、ジゴロ、ドン・ファンとさして変わりない。しかし彼はあくまで高貴・品があって、世俗にまみれない。ゼウス(ジュピター)とか、ギリシャ神話に登場する神に近い。ここの塩梅が非常に難しく、生身の男優が演じても上手く機能しない。だから「源氏物語」を題材にした映画、演劇、歌舞伎などで成功例は皆無なのである。そういう意味において「両性具有」とも言える存在の宝塚歌劇の男役でしか表現出来ない世界をこの小説は内包している。

明日海りおは容姿・歌唱力・ダンス力と三拍子揃った男役である。文句のつけようがない。絵巻物から抜け出したような完璧な光源氏だった。

相手役の花乃まりあは老け顔なので、源氏より5歳年上の藤壺が似合っていた。

さらに光源氏と乳兄弟藤原惟光を演じた芹香斗亜が凛とした美青年で良かった。

演出は藤の花が咲垂れる春の情景から始まり、紅葉の秋、桜の春、雪の冬景色と日本の四季が丹念に描かれ、雅やかでとても美しい舞台に仕上がっていた。必見。

中村一徳演出のショー「Melodia ー熱く美しき旋律ー」、黄金郷(エル・ドラード)の場面はどうかと想ったが、全体的には洗練され、可もなく不可もない及第点という印象。安心して観られるマンネリズムとでも言おうか。明日海りおの悩ましい指先の動きに注目!なお柚香 光は美形の男役なのだが、声量がなくダンスに切れもないので、「これで将来、本当にトップになれるの?」と些か不安に感じたことも付け加えておく。

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