映画「キングスマン」
評価:B+
映画公式サイトはこちら。「キック・アス」のマシュー・ボーン監督&マーク・ミラー原作コンビ復活である。
マシュー・ボーンはイギリス・ロンドン出身。マーク・ミラーはスコットランドの労働者階級に生まれ、家が貧しくて大学に行けなかったという。現在もグラスゴーに住む。
「紳士になれるかどうかは生まれじゃない。マナーを身につければ誰だってなれる。後天的資質なのだ」と映画は力強く語る。スパイ物を「マイ・フェア・レディ」(あるいはミュージカル「ME AND MY GIRL」)で味付けするというユニークな趣向。
"Kingsman: The Secret Service"という原題は「女王陛下の007」(On Her Majesty's Secret Service)のパロディであろう。女王が王に代わったというわけ。音楽も明らかに007シリーズのジョン・バリーを意識したものに仕上がっている。何だか無性に懐かしかった。
映画評論家・町山智浩氏によると映画の中でバーでマティーニを注文する時の「ジンベースで」「分かっているね」というやり取りも、ジェームズ・ボンドがいつもウォッカベースで注文するのを揶揄しているのだそう。
マシュー・ボーンは007監督候補になるも、コンペで落選した経歴を持つ。だから007への愛憎の念(憧れ&怨念)を痛烈に感じた。でも未だにやりたくて仕方ないんだね。秋波を送っていることが火を見るよりも明らかで、微笑ましい。
「キック・アス」(1作目)もそうだけど、イギリス人らしくブラック・ジョークが痛烈。悪趣味というか悪乗りを愉しめるかどうかで作品への評価が別れるだろう。だから観客を選ぶ映画だと言える。
今回敵になるのはアメリカのIT企業社長(サミュエル・L・ジャクソン)で、成り上がり者だから金持ちになってもバーガー食っているんだろとバカにしている。スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグをモデルにしていると思われ、Eco(地球にやさしい)を強調するところは民主党支持者を皮肉っている(ドキュメンタリー映画「不都合な真実」の主人公である元アル・ゴア副大統領-後にノーベル平和賞受賞-を想い出して欲しい)。またアメリカ南部の教会に有色人種や同性愛者を差別し、妊娠中絶を認めないキリスト教原理主義者(=共和党支持者)が一同に介し、皆殺しになる。つまり右も左もオールレンジ(全方位)攻撃で「みんな死んじゃえ!」というわけ。冗談きついよ。アメリカ人はこれ観たら腹立つだろうな。でも何だか可笑しい。
今回痛感したのは僕は本当にコリン・ファースという役者が大好きなんだなということ。スーツがビシっと決まって格好いい。アカデミー主演男優賞を受賞した「英国王のスピーチ」では英国王を演じているわけだから、やっぱり気品( elegance )がある。それは女王役経験者であるジュディ・デンチやヘレン・ミレンに感じることと共通している。
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