福田進一&フランシスコ・ベルニエール ジョイントリサイタル
8月29日(土)ザ・フェニックスホールへ。福田は日本を代表するギタリストであり、ベルニエールはスペイン出身新進気鋭のギタリストである。
《ソロ/フランシスコ・ベルニエール》
- ソル:モーツァルト「魔笛」の主題による変奏曲
- J.S.バッハ(セゴビア 編):シャコンヌ ニ短調
- ガルシア・アブリル:バデメクム(手引書)より
1.小さなエチュード
2.カンシオン(歌)
3.ディヴェルティメント
4.ベルスーズ(子守唄)
5.アレルヤティカ(ハレルヤ風に) - ヴィラ=ロボス:プレリュード第1番
- タレガ:グラン・ホタ
《ソロ/福田進一》
- ロドリーゴ:古風なティエント
- マネン:幻想ソナタ
《デュオ/ベルニエール&福田》
- ガルシア・アブリル:ヒラルダへの讃歌
(白寿ギターフェスタ2015委嘱作品) - ソル:幻想曲 ホ長調
- ファリャ:「三角帽子」より”粉屋の踊り”(アンコール)
このコンサートを聴きたいと想った動機はまずモーツァルト:「魔笛」の主題による変奏曲があったこと。これは佐々木守(脚本)実相寺昭雄(監督)の傑作テレビドラマ「怪奇大作戦 京都買います」の全編に流れ、強い印象を受けたから。
もうひとつは事前の発表でグラナドス:スペイン舞曲 第5番「アンダルーサ」が予定されていたこと。僕が大好きなスペイン映画「エル・スール(南へ)」で流れる曲なのである。
ところが、ベルニエールの気が変わり、本番で急遽ヴィラ=ロボスに変更になった。
「魔笛」の主題による変奏曲は速めのテンポで軽やか。
大バッハのシャコンヌは無伴奏ヴァイオリンのための作品だが、ギターで聴くと寂寥感があり、その違いが面白かった。最初の妻マリア・バルバラが亡くなった年に作曲され、そのことが音楽に反映されていると言われている。主君レオポルト候のお供でチェコ西部の温泉保養地カールスバートを訪れていたバッハが、妻の死を知ったのは帰宅した時のことだったという。
スペインの作曲家ガルシア・アブリル(1933- )は初めて聴いた。「手引書」のカンシオンはサティのジムノペディみたいな美しい曲。子守唄は繊細な感情の襞が巧みに表現されている。
タレガは陽光が燦々と降り注ぐような音楽。途中、大太鼓や小太鼓(スネアドラム)みたいな音も登場して愉しい。
ロドリーゴの「古風なティエント」は渋いけれど、味がある逸品。
マネンはサラサーテのライヴァルと言われたヴァイオリニストで「幻想ソナタ」は1930年セゴビアの求めに応じて作曲された。福田はマネンのオーボエ協奏曲を聴き気に入ったとのことで、最近「幻想ソナタ」に取り組み始めたと。曰く「ややこしい曲です」。18分位の大作で途中唸り声をあげるなど熱演だった。
「ヒラルダへの讃歌」というタイトルはセビーリャにあるヒラルダの塔に由来する(写真はこちら)。福田は「ガウディの教会を連想させるような構築性があり、シャコンヌ級の荘厳な音楽」と評した。ポリリズムを駆使した複雑で格好いい曲だった。
ソルの幻想曲は華やかで愉しい曲。リラックスして笑顔の演奏だった。
今回はガルシア・アブリルを知ったのが大きな収穫だった。中身が濃く、来年もこの企画を聴きに訪れたい。
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