ミュージカル「サンセット大通り」(柿澤勇人・濱田めぐみ Ver.)
8月1日(土)シアターBRAVA !へ。
ミュージカル「サンセット大通り」を観劇。
- アンドリュー・ロイド=ウェバー《最後の》傑作「サンセット大通り」日本上演をめぐって
(日本初演に至る歴史を総括) - 「サンセット大通り」日本初演、千秋楽
(2012年、安蘭けい・田代万里生 Ver.)
作品論については上記事に書いたので省略。
僕の心の中では、”天才作曲家”アンドリュー・ロイド=ウェバーは「サンセット大通り」が初演された1993年の直後に亡くなったことになっている。久しぶりに聴いて、鳥肌が立つような傑作だなと改めて想った(白鳥の歌とはまさにこれ)。特に最後の方は鬼気迫るものがある。そして何より、アカデミー賞を受賞したチャールズ・ブラケット、ビリー・ワイルダーらによるオリジナル脚本が素晴らしい。この格調の高さは、まるでギリシャ悲劇だ。ワイルダーの「お熱いのがお好き」の有名な台詞に"Nobody's perfect."(完璧な人間なんていないさ)があるが、「サンセット」のシナリオは正にパーフェクト、一分の隙もない。だから舞台に置き換えても一切揺るがない。
今回観ながら気が付いたのだが、本作は三層構造になっていると言えるだろう。ダンテ「神曲」に置き換えるならハリウッドの撮影所が天国、サンセット大通りにある大女優ノーマ・デズモンドの邸宅が地獄、そして若手脚本家ジョーの映画仲間が集うバーや年越しのパーティが行われる友人アーティーのアパートが、その中間の煉獄に相当する。ジョーはその三層を行き来し、最後は地獄(=狂気の世界)に絡め取られるのだ。冒頭のチンパンジーの葬式から狂っているよね。そして逃れようがない。ノーマは見るものを石にしてしまうメドゥーサであり、美しい歌声で航海中の船乗りを惑わし、遭難や難破に遭わせるセイレーンである。宿命……これはもう諦めるしかない。《この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ》(ダンテ「神曲」より)
ノーマ・デズモンド:濱田めぐみ
ジョー・ギリス:柿澤勇人
マックス:鈴木綜馬
ベティ:夢咲ねね
アーティー:水田航生
柿澤勇人は劇団四季時代の「春のめざめ」から注目していた。
今回彼が演じたジョーはやさぐれていて(チンピラぽい)、全身から虚無感を発散。もしかしたら映画のウィリアム・ホールデンよりはまり役じゃないかとすら想った。近い将来、彼の主演でミュージカル「デス・ノート」が観たい。
夢咲ねねは彼女の宝塚歌劇退団公演も観ているのだが、相変わらず可愛いし、顔がちっちゃいし、スタイルいいし文句ない。音程が合っていて、もしかしたら歌は上手くなったかも?
鈴木綜馬のマックスは毅然としていて、静かに狂っている。素晴らしい。
この三人は是非再演でもまた観たい。
僕は濱田めぐみが嫌いだった。特に劇団四季時代、彼女の「アイーダ」を大阪で観たのだが、肝心のところでオクターブ下げて歌っていて怒り心頭に発した(ブロードウェイでオリジナル・キャストのヘザー・へドリーを聴いているが、雲泥の差だった)。しかし今回は、若さで違和感があった安蘭けいと違って、彼女のノーマには老醜があった。果実が腐っていく感じ。悪くなかった。ただこの役は、もっと大物女優で観たい。今だったら誰が良いだろう?元々同役を希望していた鳳蘭とか麻実れいもありだと想うが、僕はエディット・ピアフが絶品だった大竹しのぶを推したい。
あと鈴木裕美の演出がこぢんまりとし過ぎていて物足りないので、次回は新演出でお願いしたい。やはりハリウッドの大邸宅や撮影所が舞台となるので、ある程度のスケール感は欲しいな。
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