2015年全日本吹奏楽コンクール(高校の部)注目ポイント!
今年の全日本吹奏楽コンクール(高校の部)は面白くなりそうだ。
九州地区代表に選ばれたのは福岡工業大学付属城東高等学校(福岡)、玉名女子高等学校(熊本)、活水中学校・高等学校(長崎県)。常勝だった精華女子はダメ金(金賞だが代表に選ばれず)に終わった。今年3月に藤重佳久先生が退任されたからである。今まで全く無名で彗星の如く現れた活水高校は、なんと4月から藤重先生が赴任された先で、そのわずか4ヶ月後には長崎県代表に選ばれてトントン拍子に全国まで駒を進めたのである。詳しくは→こちらの記事をご覧あれ。この快挙は「吹奏楽の神様」屋比久勲先生が福工大付城東高から鹿児島情報高等学校に移られて、瞬く間に全国大会出場に至った経緯に似ている。因みに屋比久先生は鹿児島情報高も退官され、情報高は今年鹿児島県大会ダメ金止まりだった(屋比久先生は現在、九州情報大学教授)。
めんたいワイドの精華特集。全国に行けなくて泣いてる生徒たちにかけた、「みんなは変わっていない、違うのは、先生が変わったこと、それだけ」という櫻内先生の言葉に涙(T_T)藤重先生が退職され、顧問の重圧は半端なかったと思う。それをううんと否定している生徒たちもいい子だ(T_T)
— Shimoemi (@yingmei22) 2015, 9月 8
活水高校の自由曲はC.T.スミスの「ルイ・ブルジョアの賛歌による変奏曲」。精華女子時代、藤重先生が全国大会で金賞を受賞した曲であり、これはひょっとしたらひょっとするかも知れない。予言しておくが来年の活水高校の自由曲はC.T.スミス「華麗なる舞曲」か「フェスティヴァル・ヴァリエーションズ」、あるいはスパーク「宇宙の音楽」のうち、どれかが選ばれるだろう(いずれも精華女子金賞受賞曲)。
畠田貴生先生率いる東海大学付属高輪台高等学校吹奏楽部(東京都)は今年、自由曲にブルックナーの交響曲第8番を選んだ。
2015年度東海大学付属高輪台高等学校吹奏楽部コンクール演奏曲
A編成
課題曲 マーチ「プロヴァンスの風」
田坂直樹 作曲
自由曲 交響曲第八番より
A.ブルックナー 作曲
檜貝道郎 編曲
— 畠田貴生 (@takao_hatakeda) 2015, 6月 5
驚天動地である。僕はブルックナーの交響曲を00番、0番を含め全曲生演奏で聴いたことがあるが、吹奏楽には合わないんじゃないかな?チャイコフスキーの管弦楽曲同様、弦の響きが重要だからである。管楽器だけだとその魅力が半減してしまうのだ(推定で40%くらい)。チャイコフスキーは吹奏楽コンクールで金賞が取れないことで有名で、昨年は高輪台が「白鳥の湖」で、そして石津谷治法先生率いる習志野市立習志野高等学校が「眠りの森の美女」で果敢に挑んだが、どちらも銀賞に終わっている。下手すると銅賞の危険性さえあるブルックナーを選んだことについて、畠田先生のコメントは→こちら。いいね!生徒達も納得した上で、「たとえ金賞が取れなくても自分たちのやりたい曲をやる」というその覚悟と心意気に惚れた。畠田先生は果たして風車に猪突猛進するドン・キホーテなのか、はたまた奇跡を生む魔術師フーディーニなのか?大いに注目したい。
さて、今年の関西吹奏楽コンクール代表は
- 淀川工科高等学校(課題曲2/自由曲 大阪俗謡による幻想曲)
- 大阪桐蔭高等学校(課題曲2/自由曲 歌劇「蝶々夫人」より)
- 明浄学院高等学校(課題曲2/自由曲 トリトン・エムファシス)
3校とも大阪府で、全て課題曲2 マーチ「春の道を歩こう」(佐藤邦宏)を選択しているのも面白い。
淀工の丸谷明夫先生(以下「丸ちゃん」と呼ぶ)は最近、自由曲を「大阪俗謡」と「ダフニスとクロエ」の2曲ローテーションで回しており、全国で金賞を受賞するのは300%確実である。そんなことはサルでもわかる。
びっくりしたのは大阪桐蔭の梅田隆司先生が「蝶々夫人」(編曲:後藤 洋)を選ばれたことである。吹奏楽コンクールのデータベースを調べてみよう。実は過去、全国大会で「蝶々夫人」を演奏した団体のうち、三重県の中学校が2校金賞を受賞しているが(いずれも指揮は中山かほり先生)、高校は1校もないのである。一方、同じプッチーニの「トゥーランドット」では中学校が6校、高校が5校金賞を受賞している。その違いは何か?答えは明白、難易度の差である。平易なメロディが多い「蝶々夫人」と比べ、「トゥーランドット」の方がはるかに複雑だ。そういう曲のほうが審査員に好まれるというのが歴然たる事実なのである。ただ梅田先生は大変「歌心」のある指揮者なので、桐蔭の本番の演奏に期待したい。今からワクワクするね!
「2曲ローテーション」という手法は、確実に全国で金が取れるし、生徒達を絶対悲しませたくないという気持ちも理解出来る。僕は丸ちゃんの指揮で「アルメニアンダンス」を吹いた経験もあるし、指導者として深く尊敬している。ただ、全国の先生たちが丸ちゃんのマネをし始めたら困った事態になる。吹奏楽コンクールは聴いていて詰まらなくなるし、そもそもそれでは吹奏楽の発展や未来はない。冒険者(Adventurer)や、挑戦者(Challenger)は絶対必要なのだ。畠田先生、頑張ってください。それからいつの日か、大阪桐蔭が全国大会でミュージカル作品に取り組む姿も見たい。
最後に、丸ちゃんが全日本吹奏楽連盟会長に就任後、コンクールの3出休みがなくなってしまったけれど、あれはどう考えても制度の改悪である。同じ学校ばかり全国に進出するのではなく、3出休みを復活させてもっと多くの団体にチャンスをあげてください。
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