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カンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドール受賞「雪の轍」

評価:A-

Wadachi

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僕は今までイラン、ベトナム、ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、ギリシャ、チェコ、デンマークなど30カ国以上の映画を観てきた。しかしトルコ映画というのは今回が初体験。トルコ語も新鮮に耳に響いた。

世界遺産カッパドキアにあるホテルを舞台に物語は展開される。上映時間3時間16分、休憩なし。長丁場だが一瞬たりともダレることがなかった。人生という不可解なものがこの映画には濃縮されている。兄と妹、夫と妻の間で交わされる、愛憎の念が入り交じったヒリヒリする会話劇。言葉は一瞬たりとも噛み合わない。聖と俗、富める者と貧しき者といった対比もある。

悪に対してどう立ち向かうかというテーゼ(命題)について、妹と妻は(ガンジーやキング牧師のように)非暴力・非服従を主張する。それに対して主人公は「ナチス・ドイツの理不尽な暴力にユダヤ人が何の抵抗もせず従ったとして、それでヒトラーが自分の非を認め、改心するとでも本気で信じているのか?強制収容所で無駄死にするだけじゃないか。ナンセンス!」と主張する。……深い。僕の意見をここで述べるならば、どちらも正しい。イギリス政府とかアメリカ政府など理性がある相手なら、非暴力・非服従という手段は有効だろう。マスコミを味方につけ、世論を動かすことも出来る(実際、ガンジーやキング牧師はそうした)。しかしファシストや共産主義政権が相手だったらどうだろう?マスコミは統制され味方になってくれないし、世論も沈黙を保つだろう。つまりケース・バイ・ケースなのである。

本作はチェーホフ(ロシア)の短編「妻」「善人たち」に着想を得て、トルコを舞台にしており、劇中にシューベルト(オーストリア)のピアノ・ソナタ 第20番 第2楽章が流れ、元俳優だった主人公はシェイクスピア(イギリス)の戯曲の台詞を引用する。彼が仕事に用いているのはMacBook Air(アメリカ)であり、彼が経営するホテルには日本人の宿泊客(当時トルコに留学していた村尾政樹さん、一般人)がいる。そして映画「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」のロケで訪ねてきた俳優オマー・シャリフ(エジプト)の写真が飾られている。つくづく「世界って狭いな、映画には国境がないんだ」と想った。

格調高い文句なしのA級作品だが、「好みか?」と問われると、些かの躊躇いもある。だからマイナスを付けた。

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