涼風真世・山口祐一郎 主演/ミュージカル「貴婦人の訪問」
8月5日(水)シアターBRAVA !へ。ウィーン発のミュージカル「貴婦人の訪問」を観劇。
ヴォルフガング・ホファー(Wolfgang Hofer)作詞、モーリッツ・シュナイダー(Moritz Schneider)とマイケル・リード(Michael Reed)作曲、台本がクリスティアン・シュトルペック。日本では馴染みのない人たちだ。
ウィーンでの上演に出演したピア・ダウエス、ウーヴェ・クレーガー、イーサン・フリーマンはそれぞれ、ミュージカル「エリザベート」初演時のシシィ、トート、ルキーニ役である。
今回の配役は貴婦人クレール:涼風真世、クレールの元恋人アルフレート:山口祐一郎、アルフレートの妻・マチルデ:春野寿美礼、市長マティアス:今井清隆、校長クラウス:石川禅、警察官ゲルハルト:今拓哉、牧師ヨハネス:中山昇。演出は山田和也。
原作となる戯曲の作者フリードリヒ・デュレンマット(1921年スイス生まれ)は、多くの不条理劇を書いた。この戯曲が初演されたのが1958年。因みに不条理劇の代表作ベケットの「ゴドーを待ちながら」は1952年の発表である。1964年にはイングリッド・バーグマン、アンソニー・クィン主演で20世紀フォックス映画「訪れ」(The Visit)になっている。
観ていて、ぶっちゃけ「不条理劇なんて古くせーよ!鑑賞に耐えない」と想った。登場人物の誰一人、共感や感情移入出来ない。ただただ不快な気分にさせて、何の意味がある?1mmもない。例えば現在の日本の演劇界を見てみよう。シェイクスピアやテネシー・ウィリアムズ、寺山修司はしばしば再演されているけれど、「ゴドーを待ちながら」はどうか?結局、不条理劇なんて1950−60年代に流行った刹那的ファッションでしかなく、古典には成り得なかったということだ。
失業者が溢れ不景気のどん底にある街に金満家(貴婦人)が現れ、ある男が死ねば大金をやると言う。人々は人民裁判に掛け男に死刑を宣告する。……この物語が第一次大戦後の膨大な賠償金によるドイツの激しいインフレ、ナチス党の台頭、全体主義の恐怖を反映していることは明らかだ。オーストリアもナチス・ドイツに併合され(「サウンド・オブ・ミュージック」)渦中にいたわけで、未だに人々がその時の後悔の気持ちを抱えているのは頷けるし、ウィーンで上演される意味はあるだろう。でも日本では??主人公クレールは未婚でアルフレートの子供を身ごもり、裏切られ、(偽証に基づく)裁判で辱めを受け、村八分にされ娼婦に身を落とすのだが、こんな悲惨な物語は日本の観客(9割以上が女性)に全く受け入れられないだろう。生理的嫌悪感しか残らない。台本も酷い。例えばクレールとアルフレートが語り合う場面で若いころの二人(別の役者が演じる)を出して四重唱にするのだが、説明的で平板でくどい。いらん!アルフレートは最初から「僕は市民に殺される!」と喚いていたが、結局最後はその通りになる。何のひねりもない。アホくさ。再演はないと見た。
音楽は悪くなかった。ちょっとジョン・バリー作曲「女王陛下の007」とかマイケル・ジアッキーノ作曲「Mr.インクレディブル」に似ているなとは想ったけど。
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