佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ「椿姫」(他プロダクションとの比較あり)
7月20日(月)兵庫県立芸術文化センターへ。
佐渡裕/兵庫芸術文化センター管弦楽団ほかで、
- ヴェルディ/オペラ「椿姫」
を観劇。配役はテオナ・ドヴァリ(ヴィオレッタ)、チャド・シェルトン(アルフレード)、高田智宏(ジェルモン)、ルネ・テータム(フローラ)ほか。演出・マイム振付はイタリアのロッコ・モルテッリーティ。オーケストラにはゲスト・コンサートマスターとしてステファーノ・ヴァニャレッリ(トリノ王立歌劇場管弦楽団コンサートマスター)、第2ヴァイオリンにペーター・ヴェヒター(元ウィーン国立歌劇場管弦楽団)、チェロにレリア・キッチ(トリノ王立歌劇場管弦楽団首席)を迎えた。
佐渡の指揮はいつもながら凡庸で、聴くべきところがない。テンポは重く、カンタービレはもっと歌って欲しいと不満が残る。しかしそれはずーっと前から判っていたことで織り込み済み、端から期待していない。オケは要所要所に経験豊富な本場の人を迎えただけあって健闘していた。文句なし。
期待していた演出にはガッカリだった。近年のオペラ演出の特徴は次の二つの潮流が挙げられる。
- 衣装や舞台を現代に置き換える「読み替え」
- 映像を駆使したもの
1.の代表的成功例は2005年ザルツブルク音楽祭における「椿姫」だろう。演出はヴィリー・デッカー。主要3役にアンナ・ネトレプコ、ローランド・ヴィラゾン、トーマス・ハンプソン。カルロ・リッツィ指揮のウィーン・フィルの演奏。医師に死神の役割を当て、舞台に置かれた巨大な時計がクルクル回転するのが印象的だった。この演出は大評判となり、ニューヨークのメトロポリタン・オペラでも上演された。
2.ではメトの「ニーベルングの指環」(シルク・ドゥ・ソレイユのロベール・ルパージュ演出)やスカラ座の「ニーベルングの指環」(ギー・カシアス演出)などがある。
今回は2.のパターンで、舞台後方に設置された可動式縦長の7面スクリーンに映像が映し出される。で映像を多用したものは平板になりがちで、今回も例外ではなかった。なんか安っぽいんだよね。特に画面に登場人物が大写しにされると舞台に集中できず、煩わしい。衣装(カルメラ・ラチェレンツァ)はオーソドックスだが悪くなかった。
因みに僕が気に入っている「椿姫」の演出は、前述したデッカー版と絢爛豪華なフランコ・ゼッフィレッリ版(映画と、ブッセートのジュゼッペ・ヴェルディ劇場のものがある)。
今まで観たヴィオレッタでビジュアル的に優れていると感じたのは1994年コヴェント・ガーデンのアンジェラ・ゲオルギュー(2007年スカラ座も映像として残されているが、ゲオルギューの容色が衰えているのでいただけない。要するにオバチャンになっちゃった)、ステファニア・ボンファデッリ(ジュゼッペ・ヴェルディ劇場)、そしてアンナ・ネトレプコ(ザルツブルク音楽祭)。今回のテオナ・ドヴァリは中々の美人で、上記3人と比較しても遜色なかった。また弱音が繊細で美しく、歌の方も大満足。
アルフレード役のチャド・シェルトンは決して美声ではないが、声量がありよく通るので◯。
あと意外な収穫(失礼!)だったのが高田智宏。日本は多くの優れた弦楽器奏者やピアニストを輩出しているが、声楽についてはからっきし駄目。完全に中国や韓国から遅れを取っている。これは多分、日本人が努力していないのではなくて、解剖学的骨格(身体)の問題なのだろう。特にバリトンやバスなど低音が苦しい。しかし高田は朗々とした歌唱で堂々たるジェルモンだった。ブラビッシモ!
来年このシリーズはベンジャミン・ブリテンの「夏の夜の夢」だそうだ。大好きなオペラなのですごく愉しみ!
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