ロト/読響 × 神尾真由子によるフランス音楽
6月25日(木)ザ・シンフォニーホールへ。
パリ生まれの指揮者フランソワ=グザヴィエ・ロト/読売日本交響楽団 大阪定期演奏会を聴く。びっしり満席。
- ベルリオーズ:歌劇「ベンヴェヌート・チェッリーニ」序曲
- サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲 第3番
(独奏/神尾真由子) - ベルリオーズ:幻想交響曲
ロトは古楽器(ピリオド)オーケストラ「レ・シエクル」を創設。幻想交響曲やストラヴィンスキー/春の祭典を録音し、後者は日本でレコード・アカデミー大賞を受賞している。今回はティンパニを含め全てモダン楽器による演奏。また弦楽器群は古典的対向配置ではなく通常配置(ちなみに大植英次/大フィルの幻想交響曲は対向配置だった)。昨年末テレビで視聴したロト/N響のベートーヴェン第九はノン・ヴィブラートによる演奏だったが、今回は普通にヴィブラートを掛けていた。またロトは全曲、指揮棒なしで振った。
ベルリオーズの序曲は俊敏で瞬発力のある演奏。僕は「ましら(猿)の如く」という言葉を想い出した。
サン=サーンスの神尾は厚く、深みのある音を奏でた。伸びやかでスケールの大きな演奏。第2楽章はエレガントで都会(パリ)の夜を想起させる。第3楽章は緊密なアンサンブルに魅了された。
幻想交響曲は透明感があり、拍(はく)がはっきりしていて曖昧さが皆無。
第1楽章”夢と情熱”は溜息を付くような、儚い印象。実体がない幽玄の世界。第2楽章”舞踏会”は疾風怒濤(シュトルム・ウント・ドランク)。第3楽章”野の情景”のイングリッシュホルンと舞台裏のオーボエとの対話はアクセントとスタカートを強調した表現。第4楽章”断頭台への行進”はキレキレで、魔界のものたちが蠢く、デフォルメされた空恐ろしい世界に呑み込まれる。第5楽章”ワルプルギスの夜の夢”は途轍もなく禍々しい悪夢が目の前に広がり、圧倒的力で聴衆をねじ伏せた。
指揮者の技量も卓越しているけれど、「今の東京のオーケストラってこんなハイ・レベルのオケが4つも5つもあるのか。日本人すげぇ!これだったら外来オケ聴く必要ないじゃん」という感想を持った(実際、読響は僕が生で聴いたバンベルク響やフィルハーモニア管より上手かった)。弦楽器群なら大阪フィルハーモニー交響楽団も互角の勝負だが、管楽器の実力が全然違う。完敗である。やっぱりグレードアップを図るためにも在阪オケの統廃合は絶対必要だと想った。
また今回聴きながら、幻想交響曲の前半(第1−3楽章)はゲーテの「若きウェルテルの悩み」、後半(第4,5楽章)は「ファウスト」が土台になっているんじゃないかと想った。
ちなみにベルリオーズは24歳の時(1828年)、ゲーテの「ファウスト」をジェラール・ド・ネルヴァルによるフランス語訳で読み、回想録に次のように書いている。「この本を読んで私は言い知れぬ感動を覚えました。最初の第1頁から私を虜にしてしまったのです。私はこの素晴らしい本を途中で置くことが出来なくなりました。食事の最中も、劇場にいるときも、そして街角でも、貪るように読み続けたのです。……これに音楽を付けたいという誘惑にどうしても逆らえませんでした」幻想交響曲が完成するのはベルリオーズ26歳の時である。
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