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2015年7月24日 (金)

アンドレ・プレヴィンと映画〜ヒメノ/大フィル 定期

7月23日(木)フェスティバルホールへ。

グスターボ・ヒメノ/大阪フィルハーモニー交響楽団で、

  • レブエルタス:センセマヤ
  • アンドレ・プレヴィン:チェロ協奏曲 日本初演
    (独奏:ダニエル・ミュラー=ショット)
  • ガーシュウィン:パリのアメリカ人
  • バーンスタイン:「ウエストサイド物語(WSS)」より
     ”シンフォニック・ダンス”

ヒメノはスペインのバレンシア生まれなんだけれど、お国ものがないのが何ともユニーク。これってドゥダメル/シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラが組みそうなプログラムじゃない?実際彼らはセンセマヤとWSSが入ったアルバムをレコーディングしているし。レブエルタスはメキシコ人でメキシコはスペイン語圏だから(スペイン人コルテスがアステカ帝国を滅ぼした)、辛うじてヒメノと繋がっているのだけれど。

アンドレ・プレヴィンは1929年ベルリン生まれのドイツ系ユダヤ人。ナチス・ドイツの迫害を逃れてアメリカに亡命した。この点、ビリー・ワイルダー監督(「サンセット大通り」、「お熱いのがお好き」)やフランツ・ワックスマン(映画「サンセット大通り」、「陽のあたる場所」でアカデミー作曲賞受賞)と似ている。プレヴィンは1950年代から映画音楽に携わり、ミュージカル映画「マイ・フェア・レディ」ではアカデミー編曲賞を受賞。指揮も担当している。ジョン・ウィリアムズと親しく、「スター・ウォーズ」(1977)のサウンド・トラックをロンドン交響楽団が演奏しているのは当時同オケの音楽監督だったプレヴィンによる尽力の賜である

日本初演となるチェロ協奏曲 第1楽章の濃厚なロマンの薫り漂う第2主題を聴いて僕はニヤリとした。節回し・ハーモニーがエーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルトそっくりなのである。プレヴィンは今日におけるコルンゴルト・ルネッサンスの立役者である。何と彼はコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲を3回レコーディングしている(独奏はパールマン、シャハム、ムター。僕は全て所有している)。ドイツ・グラモフォンにはコルンゴルトの交響曲嬰ヘ長調や「シー・ホーク」などの映画音楽集も残している。正に伝道師と言えるだろう。打って変わって第2楽章は調性と無調の狭間をたゆたうような如何にもゲンダイオンガクをしていて、そのコントラストが新鮮。

ヒメノの指揮はレブスタルで正確にリズムを刻み、カチリとした演奏だったが面白味に欠ける気がした。プレヴィンのコンチェルトも煮え切らない。チェロも何だか不完全燃焼。

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ところが、後半になると俄然良くなった。

僕は「巴里のアメリカ人」を聴くと、即座にアカデミー作品賞を受賞したMGMの同名ミュージカル映画(1951年、ヴィンセント・ミネリ監督)のクライマックス・シーンが脳裏に浮かぶ。ジーン・ケリーとレスリー・キャロンのデュエット・ダンスが素敵だった。舞台化され、現在ブロードウェイで上演中(是非観たい!)。ヒメノは刻々と変化するリズムの織りなす綾を鮮やかに描き分け、メリハリを付ける。

「シンフォニック・ダンス」を大フィルが定期で取り上げるのはこれが初めてという。僕は大植英次の指揮による2009年「青少年のためのコンサート」で聴いている(その時の記事はこちら)。考えてみれば生真面目なオーケストラの定期演奏会でオケマンが指パッチンしたり、「マンボ!」と叫んだりすることってないよね。漸く新しい時代が幕を開けたという感じ。僕はジョン・ウィリアムズやコルンゴルトの映画音楽が定期で聴ける日を愉しみにしている。天下のウィーン・フィル(2010@シェーンブルン宮殿)や、今年は遂にラトル/ベルリン・フィル(@ヴァルトビューネ)も「スター・ウォーズ」を演奏したのだから、その日はきっとそう遠くないと確信している。

しかし残念だったのはプログラムのどこにも「シンフォニック・ダンス」のアレンジャー(シド・ラミンアーウィン・コスタル)の名前が明記されていないこと。例えばオーケストラが「展覧会の絵」を演奏する時、ムソルグスキー作曲とだけ書く!?普通ラヴェル編(他者による編曲の場合もあり)と併記するよね。非常識だ。

ヒメノは冒頭の〈プロローグ〉から浮遊感があった。パンチが効いた〈クール〉もスカッとした。アンサンブルは精緻で、〈Somewhere〉は大フィル自慢の弦が美しい。いや〜綻びが散見された「青少年のためのコンサート」でのパフォーマンスよりずっと上手かった。お見事!

余談だが、レニーが〈Somewhere〉にチャイコフスキー:幻想序曲「ロメオとジュリエット」の旋律をこっそり忍ばせていることに、みんな気が付いた?ホラ、「ウエストサイド物語」はロミジュリを基にしているから。

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