オペラは演劇だ! 井上道義×野田秀樹「フィガロの結婚」
6月6日(土)兵庫県立芸術文化センターへ。
野田秀樹(翻訳・演出)、井上道義(指揮)、兵庫芸術文化センター管弦楽団、新国立劇場合唱団らで
- モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」
〜庭師は見た!〜
を最前列で観劇。
配役は
アルマヴィーヴァ伯爵:ナターレ・デ・カロリス
伯爵夫人:テオドラ・ゲオルギュー
ケルビーノ:マルテン・エンゲルチェズ
スザ女(スザンナ):小林沙羅
フィガ郎(フィガロ):大山大輔
マルチェ里奈(マルチェリーナ):森山京子
バルト郎(ドン・バルトロ):森 雅史 ほか
また狂言回しの庭師役で演劇畑から廣川三憲が参加。他に8人の演劇アンサンブル・キャストが配された。
兎に角、テオドラ・ゲオルギューが凄い美人で驚いた!アンジェラ・ゲオルギュー(ルーマニア出身)と血縁関係はないのだろうか??美貌のソプラノという点ではマリア・カラス、モイツァ・エルトマン、ステファニア・ボンファデッリ、(痩せている頃の)アンナ・ネトレプコと同レベルと言えるだろう。ちなみに彼女の公式サイトは→こちら。
僕はカール・ベーム/ウィーン国立歌劇場の1980年日本(引っ越し)公演DVDで予習して臨んだのだが、ナターレ・デ・カロリスはベーム版のベルント・ヴァイクルと比べても遜色なかった。さすがに日本人キャストの歌唱はヘルマン・プライ(フィガロ)とかルチア・ポップ(スザンナ)に及ぶべくもないが、小林沙羅はヴィジュアル的にキュートで好演していた。あとベーム版でメゾソプラノのアグネス・バルツァが歌ったケルビーノ役を今回はカウンターテナーが演じたというのが凄く面白かった。
井上道義の指揮はピリオド・アプローチ。爽快なテンポで小気味よい。
しかし何と言っても今回最大の功労者は野田秀樹だろう。黒船の時代の長崎に舞台を置き換えたアイディアが秀逸である。アルマヴィーヴァ伯爵夫妻とケルビーノが来航する冒頭(序曲)の3人の扮装はまるでシェイクスピア「真夏の夜の夢」のオーベロン、タイターニア、そしてパック(みな妖精)みたいだった。
この3人が登場する場面は原語のイタリア語で歌われ、日本人キャストのみの場面は日本語になる。ヨーロッパ文明が生み出したオペラ作品を、日本で、日本人が上演することの意味を徹底的に考えた末に到達した、卓越した手法と言えるだろう。
長崎といえば誰もがプッチーニの「蝶々夫人」を想い起こすに違いない。正妻がいるにもかかわらず女癖の悪さが治らないという点で、アルマヴィーヴァ伯爵と「蝶々夫人」のアメリカ海軍士官ピンカートンがピッタリ重なった。男はみんなこうしたもの(↔「コシ・ファン・トゥッテ」=女はみんなこうしたもの)。
また日本語台本に味があって、まさか「フィガロの結婚」に「ババア」とか「勇気凛々」、「カチカチ山の狸」「家臣が主の仇を討ったのは昔のこと(←要するに忠臣蔵)」とかいった台詞が飛び出すとは想像だにしなかった。野田らしい言葉遊びも満載。
あと第1幕&第2幕、第3幕&第4幕が続けて上演され、休憩が1回のみだったのもスピード感があって良かった。
このプロダクション、「NINAGAWA・マクベス」とか「身毒丸」「海辺のカフカ」みたいに世界で十分勝負できる完成度だと太鼓判を押したい。是非映像としても残して欲しいな。
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