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朝夏まなと(主演)宝塚宙組「王家に捧ぐ歌」と、その寓意。

6月21日(日)宝塚大劇場へ。木村信司(台本・演出)宝塚星組「王家に捧ぐ歌」を観劇。

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僕は2003年7月の初演を観ている。湖月わたる檀れいのトップお披露目公演だった。一部でロシアのマイヤ・プリセツカヤ振付の場面があったのだが、今回プリセツカヤの名前はクレジットされていない。2009年には外部公演として安蘭けい(アイーダ)、伊礼彼方(ラダメス)により「The Musical AIDA -宝塚歌劇団「王家に捧ぐ歌」より-」が上演され、これは梅田芸術劇場で観ている。またティム・ライス(作詞)エルトン・ジョン(作曲)のディズニー版「アイーダ」もブロードウェイでオリジナル・キャスト(ヘザー・ヘッドレイ、アダム・パスカル)を観た。

久しぶりに「王家に捧ぐ歌」を観て、初演当時の世相を色濃く反映した作品だなぁと改めて痛感した。2001年にアメリカで9・11同時多発テロが勃発、その首謀者アルカーイダの引き渡しに応じなかったターリバーン政権に対し同年10月からアメリカはアフガニスタンへの空爆を開始、さらにジョージ・W・ブッシュは「大量破壊兵器」保有を口実に2003年3月よりイラクへの侵略戦争を開始した。しかしアメリカの真の狙いは石油の利権獲得と国内の軍需産業(軍産複合体)、具体的にはロッキード・マーチン、ボーイング、ノースロップ・グラマン3社への利益誘導にあった(例えばディック・チェニー副大統領は世界最大の石油掘削機販売会社ハリバートン社の元CEOで、夫人のリン・チェニーはロッキード・マーチン社の元取締役だった)。最終的にイラクに「大量破壊兵器」がなかったことは今や周知の事実である。

つまり「王家に捧ぐ歌」で描かれる金満国家エジプトはアメリカ合衆国(共和党政権)のメタファーであり、ファラオ暗殺は9・11、エジプトに蹂躙されるエチオピアはアフガニスタンやイラクの寓意であると解釈出来る。そしてラダメスは最後にファラオとなったアムネリスに問う。「(勝者となった)あなた達は今後も、戦い続けるのか?」と。

甲斐正人が作曲した楽曲もいいし、僕は「王家に捧ぐ歌」を和製ミュージカルの最高傑作の一つだと確信している(他に三谷幸喜作「オケピ!」など)。少なくともディズニー版「アイーダ」よりも格上だ。

また美術装置(大田 創)がスケールが大きくて素晴らしい。

ラダメス役の朝夏まなとは以前ドラマシティ公演を観た。

美形だし、バランスの良い男役である。ダンス力は抜群、そして歌も音程は外さない。少なくとも湖月わたるよりは上手かった(ただ太陽のように明るい湖月のラダメスも僕は好きだった)。僕は基本的に丸顔の男役は(男に見えないので)余り好みではないのだが、朝夏まなとに咎はない。ちなみにAKB48の渡辺麻友が彼女の大ファンだそうだ(まゆゆは以前、蘭寿とむがお気に入りだった)。閑話休題。

アイーダ役の実咲凜音は兎に角、声が悪い。それから叫ぶことが演技だと勘違いしているフシがあって、気に入らない(少なくとも僕にはそう見える)。今改めて、初演の安蘭けいは本当に歌も演技も申し分なかったなぁとつくづく想う。

アイーダの兄を演じる真風涼帆は格好良かった。

初演のアムネリスは宝塚歌劇中国公演で「楊貴妃の再来」と讃えられた檀れいが正に美貌のピークの時期であり、他を圧するほど輝いていたのだが、今回の伶美うららもそれに引けをとらないくらい美しかった。鼻が高いので特に横顔が綺麗。ただ歌が……。高音になると裏声になり、声量が半分くらいに落ちる。ま、歌唱力については檀れいもアレだったので、どっこいどっこいかな。天は二物を与えず、詮ないことだ。「美しいことは正義」、だから◯。

総じて見応えがあり、「やっぱり僕はこの作品が大好きだなぁ〜」と実感した。

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