五嶋みどり、入魂のドヴォルザーク〜ICEP報告コンサート
6月10日(水)ザ・フェニックスホールへ。
五嶋みどり、弓 新(ヴァイオリン)、ドイツ出身ファイト・ヘルテンシュタイン(ヴィオラ)、ドミニカ系アメリカ人トニー・ライマー(チェロ)で、
- モーツァルト:弦楽四重奏曲 第21番「プロシア王 第1番」
- シュルホフ:弦楽四重奏曲 第2番
- 活動報告
- グリエール:ヴァイオリンとチェロのための8つの小品
(弓 新、トニー・ライマー) - ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲 第12番「アメリカ」
五嶋はモーツァルトとドヴォルザークで1stをとり、シュルホフは2ndを担当。
ICEP活動報告コンサートは毎年聴きに来ているので、詳細は過去記事をご覧あれ。
モーツァルトは抑制されたヴィブラートで奏でられ、端正でしっとりと潤いがある。アルバン・ベルク弦楽四重奏団とは対極にある演奏。
チェコの作曲家エルヴィン・シュルホフ(シュールホフ)は初めて聴いた。ユダヤ人で共産主義に傾倒した彼の音楽はナチスにより「退廃音楽」の烙印を押され、1941年に逮捕、その翌年に強制収容所で亡くなった。享年48歳、死因は結核だった。第1楽章の第一声がヴィオラというのは大先輩ドヴォルザークへの敬意を感じた(ドヴォルザークはヴィオラ奏者でもあり、「アメリカ」第1楽章の第1主題はヴィオラで奏でられる)。風雲急を告げるというか、切迫感があり、鬼気迫る音楽だった。特に第2楽章は劇薬のよう。大いに気に入った。
ロシアーソ連の作曲家グリエール(1875-1956)の曲は優雅で憧れとか懐かしさ、ノスタルジーがあった。
ドヴォルザークの解釈は朴訥で禁欲的。そこにはピューリタニズム(潔癖主義)みたいなものすら感じられた。第2楽章を支配するのは寂寞とした感情。そして静かな哀しみ。アメリカで教鞭をとっていた作曲家と、現在南カリフォルニア大学ソーントン音楽学校弦楽学部主任教授を務める五嶋の、故郷への想いが重なる。さらに拒食症など心理的葛藤を乗り越えてきた彼女の人生そのものが音楽に滲み出ているようでもあった。稀有な体験をさせて貰った。
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