映画「あの日の声を探して」
評価:B+
公式サイトはこちら。
映画「アーティスト」でアカデミー作品賞・監督賞に輝いたミシェル・アザナヴィシウスの新作。フレッド・ジンネマン監督「山河遥かなり」(1948)にインスパイアされた作品であり、原題はどちらもThe Search。「山河遙かなり」はナチスによってユダヤ人収容所に送られ、母と生き別れになった少年が主人公だが、今回はロシアに侵略された1999年のチェチェンが舞台となっている。
僕が本作をどうしても観たいと想った切っ掛けは、敬愛する大林宣彦監督が絶賛していたからである。詳しくは→こちら。いやぁ、雄弁な大林監督以上に説得力のある言葉はないし、困っちゃうなぁ。
本作はメロドラマ仕立てである。だからラストを「甘い」と批判する人たちも当然いるだろう。でも僕はこれでいいと想う。現実はもっと悲惨だろう。しかしあったことをありのままに描くのはドキュメンタリーの役割であり、フィクションとしての映画には救いが欲しい。(微かでも)希望の光を見たい。だって嫌な気分で映画館を出たくないじゃない?賢い人間ならオブラートに包まれた虚構の世界(=夢)の向こう側に、作者の真の想いを汲み取れる筈だ。
「アーティスト」は(基本)白黒無声映画だったが本作はカラーであり、チェチェン語・ロシア語・英語・フランス語が飛び交う饒舌な作品である。両者の違いが面白い。また、ハリウッド臭を微塵にも感じさせないアネット・ベニングが素晴らしい。僕は断然「あの日の声を探して」の方が好きだ。
なお、「アーティスト」ではヒッチコック映画「めまい」(作曲:バーナード・ハーマン)を引用したアザナヴィシウス監督だが、本作ではベトナム戦争を描いた映画「ディア・ハンター」のテーマ曲、スタンリー・マイヤーズ作曲のカヴァティーナが登場してハッとさせられた。
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