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2015年5月15日 (金)

吹奏楽の神アニメ降臨!「響け!ユーフォニアム」

今年の4月から放送が開始された京都アニメーション(京アニ)の「響け!ユーフォニアム」公式サイトはこちら京アニは京都府宇治市に本社を構えており、「響け!」も宇治市の高校が舞台となる(主人公は《おけいはん》こと、京阪電車で通学)。同社の作品は関西を舞台としたものが多く、一世を風靡した「涼宮ハルヒの憂鬱」に登場する高校のモデルは阪急甲陽園駅近くにある兵庫県立西宮北高校であり、阪急西宮北口駅や夙川公園なども登場する。また「けいおん!」桜ヶ丘高校のモデルになった豊郷町立豊郷小学校旧校舎は滋賀県にある。あと京アニの特徴は女性演出家が多いこと。「響け!ユーフォニアム」第一回放送も山田尚子が絵コンテ・演出を担当している。

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当初、上のイラストを見て「4人の女子高生の話ってまるで『けいおん!』みたい。焼き直しかよ」と鼻白んだ。トランペットを吹く黒髪の美少女・高坂麗奈のキャラクター・デザインは「けいおん!」の秋山澪そっくりだし。ところが!放送が始まってびっくりした。中身が全然違う。「けいおん!」は放課後に女子が部室に集まってお茶飲んで、うだうだ話して何事もなく日々は過ぎてゆくといった感じだったのに対し、「響け!」は吹奏楽コンクールの全国大会を目指して日々猛練習に励むという熱血青春アニメだったのである。プロローグ(@京都コンサートホール)でいきなり《ダメ金》の話が飛び出したのには度肝を抜かれた。吹奏楽の顧問・滝先生なんか一見ニコニコ温厚そうに見えて、実は映画「セッション」(Whiplash)のフレッチャーみたいな奴だった!海外の京アニファンの間では既にこちらのような感想が飛び交っている。

野球やサッカー、テニスなど運動系の部活と比較すると吹奏楽を描いた青春小説や漫画、映画は極めて少ない。同じ音楽でも軽音やジャズ、ロックバンドなら結構あるのだが(例えば直木賞を受賞した「青春デンデケデケデケ」とか映画「ロックよ、静かに流れよ」「リンダ リンダ リンダ」「スウィングガールズ」など)。そのことを僕は常々残念に想っていた。日本は現役の吹奏楽人口だけでも100万人を超え、経験者を含めると500万人に達すると言われる「吹奏楽大国」なのに、どうしてなんだ!?以前、津原泰水の小説「ブラバン」を読んだが、これは心底詰まらなかった。大体、ブラス(真鍮)バンドというのは金管アンサンブルのことを指し、木管は含まない。だから吹奏楽の正しい英語は「ウィンド・アンサンブル」か「シンフォニック・バンド」である。「ブラバン」というタイトルからして古臭い(本の中でブラバンは間違いと指摘された主人公が激怒する場面があった)。津原泰水は1964年生まれであり、考え方が化石みたいにガチガチなのだ。閑話休題。

僕は中学生の時から吹奏楽部に所属していた。1年生の時はホルンを吹いていたのだが、2年生の時チューバを吹いていた先輩が卒部したので、体格がいいからと嫌々ながらチューバに回された。同時にフルートの個人レッスンを受けており、高校入学と同時にフルートに華麗なる転身を果たした。だから第二回「よろしくユーフォニアム」で主人公が中学時代にユーフォを吹いていたのをひた隠しにした気持ちがよく分かる。僕も同じ中学から高校へ入った吹奏楽部の女の子に「チューバやってたのは絶対言わないで!」と強く念を押したことを懐かしく想い出した。また教室の窓からいつも外を眺めている女子の先輩って、僕の時代にもいたなぁ。グラウンドで練習している、自分が好きな運動部の男子生徒を見ていたのだ。物語にリアリティがある。

第一回「ようこそハイスクール」の冒頭、入学式への登校中に主人公が地面に落ちた桜の花びらを拾い上げ、フッと息を吹きかけて空に飛ばす。本作のテーマの核心を突く重要な場面である。そのことは第四回「うたうよソルフェージュ」における滝先生の指導法で明らかになる。腹式呼吸でに浮かぶ雲の彼方にまで自分の息が届くように吹く(ロングトーン)。これこそが極意。だからオープニング・アニメーションで三度、カメラを上方に振って(ティルトして)青空を捉えるのである。俯瞰で水たまりを写したカットでもしっかりが映っている。

第三回「はじめてアンサンブル」で滝先生が配る楽譜がマーチ「海兵隊」だったのでニヤッとした。丸谷明夫先生が大阪府立淀川工科高等学校(淀工)吹奏楽部新1年生の最初のアンサンブルで指導する曲なのだ。

第五回「ただいまフェスティバル」には《水色の悪魔》と呼ばれるマーチングの強豪校が登場するが、コレって明らかに《オレンジの悪魔》こと、京都橘高等学校がモデルだよね!ということはこれから関西大会まで駒を進めたら淀工とか大阪桐蔭をモデルにした高校も登場するかも知れない。

第六回「きらきらチューバ」では吹奏楽コンクールに向けてオーディションをすると滝先生が宣言するのだが、彼らが挑む課題曲「プロヴァンスの風」は実際の2015年課題曲IVだし、自由曲が堀川奈美恵 名義(実際の作曲は大阪府出身の松田彰人)「三日月の舞」というオリジナル楽曲というのも面白い(実際にこの曲を吹奏楽コンクールで演奏する高校が現れたらいいな)。

あとオープニングとエンディング主題歌「Tutti !(=全奏者による合奏)」の伴奏が吹奏楽仕立てなのにも注目!逆に本篇の劇伴は弦楽器のみ(ピアノ、ギターを含む)になっているという音楽構成も実に素晴らしい。

ところで劇中、吹部(すいぶ)という言葉が繰り返し出てくる。「吹奏楽部」の略語である。僕が高校生だった頃、1980年代初頭(昭和の時代)には使わなかった。でももしかしたらそれは岡山県という片田舎の特殊事情なのかな?と考えて、奈良県の市民吹奏楽団「セントシンディアンサンブル」の代表・指揮者の福島秀行さん(同世代)に尋ねてみた。するとやはり高校時代に吹部という言葉はなかったという。さらに「響け!」に登場するパーリー(パート・リーダー)会議とか(学校によっては)パーミー(ミーティング)とか初耳だし。一方で福島さんによると、最近ブラバンという言葉は殆ど使われなくなったそう。世代の違いを感じた。また現在は譜面台に置ける小さなチューナーを各自持っているのが普通だけれど、僕が高校生の頃は学校に大きなチューナーが1台しかなかった。

吹奏楽を愛する全ての人々に告ぐ。「響け!ユーフォニアム」を観ない奴はアホだ。2015年という、いまを生きている意味がない。6月17日にはBlu-ray&DVDが発売されるから、買うなりレンタルするなりして必ず観て欲しい。後悔は絶対させないから。

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コメント

もちろん毎週観てます♪

チューニングが合ってない所とか演出がリアルですよね。

チューバ初心者の女子と低音パートで合奏したシーンは感動しましたね。

演奏はどういう方々がしてるのかなと気になります。

投稿: クラリネット吹きの休日 | 2015年5月25日 (月) 18時26分

クラリネット吹きの休日さん、コメントありがとうございます!

「響け!ユーフォニアム」はとにかく細部がリアル、それに尽きます。

因みに劇中で演奏しているのは洗足学園音楽大学フレッシュマン・ウィンド・アンサンブルです。10月24日に神奈川・洗足学園音楽大学前田ホールで開催される「響け!ユーフォニアム」スペシャルイベントで、彼らの生演奏が聴けるみたいですよ。

投稿: 雅哉 | 2015年5月25日 (月) 21時45分

たしかにリアルですよね。
チューニングベーの音を聴いただけで吹奏楽をやっていた頃の思い出が蘇ってきましたし♪

音大生の演奏だったんですね。
貴重な情報ありがとうございます!

投稿: クラリネット吹きの休日 | 2015年5月25日 (月) 22時09分

一つこのアニメで不思議なのは、今のところオーボエが全く出てこないところなんですよ。チューニング最初の音出しもクラリネットが担当していますし。いないのかなぁ?

投稿: 雅哉 | 2015年5月25日 (月) 22時18分

僕が所属していた吹奏楽団ではコンマスであるクラリネット奏者がチューニングの音出しをしていたから気にならなかったんですが、そういえばオーボエいなかったんですね。。

たまたまオーボエ奏者がいなかったのか、他に何か設定上の理由があるんでしょうかね。

投稿: クラリネット吹きの休日 | 2015年5月25日 (月) 22時28分

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