龍真咲(主演)宝塚月組「1789 ーバスティーユの恋人たちー」が駄目な3つの理由
5月10日(日)宝塚大劇場へ。フランス産ミュージカル「1789 ーバスティーユの恋人たちー」日本初演を観劇。
こりゃ酷い、救いようがない。その理由を述べる。
1.楽曲に魅力が乏しい
音楽はフレンチ・ポップス調でミュージカルとして今までなかったタイプ。新鮮ではある。ただどの曲も全く耳に残らない。フランスのミュージカルといえば例えば「壁抜け男」など大御所ミシェル・ルグランの作品があり(他に舞台版「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」など)、「レ・ミゼラブル」も元々フランス産だし、宝塚でも繰り返し上演されている「ロミオとジュリエット」という大ヒット作もある。「ロミジュリ」の”Aimer(エメ)”が究極の名曲であることは論を俟たないし、”世界の王”だっていい。「レ・ミゼ」に至っては今更言うまでもない。それらと比較すると「1789」は概してそこそこ、キャッチーな楽曲に欠けているのである。
2.台本の出来が壊滅的に悪い
主人公以外の登場人物たち、例えばルイ16世やその弟、マリー・アントワネット、カミーユ・デムーラン、ロベスピエール(革命家)らがその後の人生をどう歩んだか、完全無視である。つまり様々な伏線は放置されたまま回収されない。いや、確かに宝塚ファンなら当然ベルばらを観ているし、「スカーレット・ピンパーネル(紅はこべ)」や東宝ミュージカル「マリー・アントワネット」(遠藤周作 原作)もあったから、彼らがどうなったかは知っているよ。でも余りにも不親切、無責任である。主人公の妹が娼婦になって、「ハイ、そうですか」で終わりっていうのも何だかなぁ。それから平民の主人公とオランプ(王太子の養育係)の「身分違いの恋」という設定も余りにも無理矢理でリアリティが皆無。このふたり、普通出会うことないでしょう?あと、他のどんな価値観よりも「愛こそが全て!」というテーマに対しても「ホントにそれでええんか??」と疑問符が湧くばかり。フランス革命後も血を血で洗う抗争は続くし、そもそも「レ・ミゼ」は革命後の話であり、民衆は相変わらず貧困に喘ぎ、飢えていて、惨めなまま。何も問題は解決していないのである。フィナーレで白けてしまうのは当然の帰結であろう。日本を代表する名演出家・小池修一郎をしても、このお粗末な台本は如何ともし難かった、そういうことだ。
3.作品のプロットが宝塚に合っていない
これは実は逆説的かも知れない。宝塚には同じ時代を扱った大ヒット作「ベルサイユのばら」があるからだ。しかしベルばらと本作の決定的違いは主人公が貴族でないという点である。宝塚はきらびやかな衣装を纏い、華やかな物語を描く夢の王国である。「エリザベート」しかり、「風と共に去りぬ」や「ロミオとジュリエット」だってそう。男役トップがみすぼらしい平民では駄目なのだ。「レ・ミゼ」が宝塚に似合いますか?という話である。龍 真咲とマリー・アントワネット役の愛希れいかが殆ど絡まないのも致命的である。トップふたりが恋に落ちないというのは極めて異例。「王家に捧ぐ歌」(初演)という前例もあるが、あれはアムネリス(檀れい)がラダメス(湖月わたる)に一方的に恋しているわけで、一緒に歌う場面は多々あった。しかし「1789」は皆無である。
愛希れいかが輝くばかりに美しく、今回の公演では一番目を惹いた。龍 真咲は「スカピン」時代より歌唱が随分マシになったが、下からすくい上げて音程を合わせる歌い方(演歌的)は相変わらずでいただけない。ビジュアル的にも精彩を欠いている(PUCKは良かったんだけどなぁ……)。
宝塚では珍しい娘役の役替り(男役はよくあり)があり、僕が観た回はオランプ(王太子の養育係、ロナンの恋人): 早乙女わかば、ソレーヌ (ロナンの妹): 晴音アキだった。ふたりともイマイチ。
カミーユ・デムーラン:凪七瑠海、ロべスピエール:珠城りょう、ダントン:沙央くらまら、主人公の友人(後の革命家)たちは男役としての魅力が乏しい(歌もパッとしない)。
シャルル・アルトワ(ルイ16世の弟):美弥るりかはスカした感じで、良かった。
僕は今後、どの組が再演しようと、本作を2度と観る気にはなれない。
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コメント
こんにちは、雅哉さん。
私も見ました。輸入もの!これは行かねば!と思ったのですが、本当、脚本の酷さに衝撃……。なんでこんなのわざわざ輸入するんでしょうかね?
美弥るりかさんは、役が個性的で得したかな?と芝居の間みながら思っていたのですが、芝居後のプチショーで水色の王子様ルックで現れ、その後もウインクしたり流し目したりで色気たっぷりケレン味たっぷりの男役さんで、すっかりファンになっちゃいました(笑)
でも演目のせいもあるんでしょうが、月組は暫くはいいかな〜って思ってしまう公演でした。
投稿: ちかちか | 2015年5月12日 (火) 17時36分
ちかちかさん、お久しぶり!コメントありがとうございます。
宝塚が「エリザベート」や「ファントム」、「ロミオとジュリエット」の版権を買ったのは正鵠を射た判断でしたし、その後東宝などでも上演され、貴重な財産となりました。しかし「1789」を買ったのは大失敗であったと断じざるを得ません。再演はきっとないでしょう。いや、あってはなりません。
現在の月組は役者不足ですね。特に娘役は愛希れいか以外が弱すぎます。組み替えが急務です。
投稿: 雅哉 | 2015年5月12日 (火) 18時29分
雅哉さん、こんにちは
お久しぶりです。
フランス物、小池先生ということで、とても気になっていた「1789」ですが、月組だったので観ていませんでした。題材としては魅力的ですよね
来年、東宝での上演が発表されたので、大阪公演があれば行きたいと思っています。
やっぱり東宝になっても作品として良いものにはならないでしょうか?
投稿: *pino* | 2015年5月15日 (金) 14時42分
*pino*さん、コメントありがとうございます。
東宝が「1789」を買ったのですか?アホですね。
今日僕は「デスノート The Musical」を観てきたのですが、「1789」より遥かに面白かったです。驚きました。フランク・ワイルドホーンの楽曲が神懸かっていて、「ジキル&ハイド」や「Never Say Goodby」「スカーレット・ピンパーネル」より僕は好きです。逆に「デスノート」を宝塚がやったらいいんじゃないか?と想いました。夜神月とL(エル)の対決がメインですから男役トップと2番手が映えますし、夜神の妹とかミサミサとか娘役にも良い役がある。「1789」なんかより断然宝塚に合っています!
投稿: 雅哉 | 2015年5月15日 (金) 23時51分