映画「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」
評価:AA(A+より上。最高はAAA)
米アカデミー賞は作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞など計8部門でノミネートされ、脚色賞を受賞した。映画公式サイトはこちら。
監督に抜擢されたのはノルウェー出身のモルテン・ティルドゥム。
イギリスの数学者アラン・チューリングの生涯を描く実話。現在のコンピューターの基礎を築いた人だ。
ベネディクト・カンバーバッチが渾身の演技を披露。チューリングの甥はカンバーバッチについて「完璧なキャスティング。あれ以上にいい人は考えられない」と述べている。僕が初めて彼を意識して観たのが「裏切りのサーカス」で、その時も本作に出演しているマーク・ストロングと共演していた。
チューリングが逮捕される1952年から物語は始まる。そして第二次世界大戦の時代へ。更にそこからチューリングの少年時代に遡行し、この3つの時代が交差して織りなすタペストリーのような構成になっている。見事なシナリオだ。
チューリングが暗号解読マシーンに「クリストファー」とあだ名を付けた理由が次第に判明していくのだが、何だか切ない。”哀れ萌え”って感じかな。
モーツァルトやベートーヴェン、チャイコフスキーなんかもそうだけれど、天才が幸福な生涯を送れるとは限らない。人間という存在の理不尽さを改めて痛感させられた。そしてスティーブ・ジョブズを例に挙げるまでもなく、天才は変人が多い。社会適応能力がないというか、人格が破綻しているというか。Nobody's perfect.(完全な人間なんていない)〜ビリー・ワイルダー脚本・監督「お熱いのがお好き」より。 チューリングも強烈なキャラクターだった。いわば「面倒くさいひと」だ。
タイトルのThe Imitation Gameはチューリングの論文に由来し、人工知能が人間の脳を模倣していることを指しているが、実は映画を最後まで観るとこの言葉には3重、4重の意味が込められていることが判る仕掛けになっている(もし判らなければコメントで質問してください。きちんとお答えします)。
音楽は「グランド・ブタペスト・ホテル」でアカデミー作曲賞を受賞したアレクサンドル・デスプラ。やはり数学者や理論物理学者を主人公にした「ビューティフル・マインド」や「博士と彼女のセオリー」同様、短いフレーズを執拗に繰り返すオスティナート(≒ミニマル・ミュージック)技法が用いられている。
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