「アナと雪の女王/エルサのサプライズ」と実写版「シンデレラ」成功の秘密
「アナと雪の女王/エルサのサプライズ」評価:B+
「シンデレラ」前座の短編。ミュージカル・ナンバーの新曲(曲調が本編と変えてある)もあり、十分愉しめる。新キャラ:小さな雪だるまの“スノーギース”は可愛いし、大満足。
「シンデレラ」評価:A
監督のケネス・ブラナーはイギリスで「ローレンス・オリビエの再来」と言われ、シェイクスピア俳優としても有名。RADA(王立演劇学校)を首席で卒業した後、23歳の時にロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに参加している。映画監督としても「ヘンリー五世」「から騒ぎ」「ハムレット」「恋の骨折り損」「お気に召すまま」などシェイクスピア作品を数多く手がけ、その多くで主演も兼任している(オリヴァー・パーカー監督「オセロ」ではイアーゴを演じた)。
シンデレラ役のリリー・ジェームズは英国生まれで、舞台「かもめ」や「オセロ」の出演経験もある。また2016年にブラナーが演出する「ロミオとジュリエット」で「シンデレラ」の王子役リチャード・マッデン(スコットランド出身)と再び共演することも決まっている。
意地悪な継母役を演じたケイト・ブランシェットが素晴らしい。アカデミー賞を2度受賞した大女優であり、母国オーストラリアでは1994-5年に舞台「ハムレット」でジェフリー・ラッシュと共演し、オフィーリアを演じている。映画ではエリザベス1世を演じているし、誇り高く威厳がある。
またフェアリー・ゴッドマザー(妖精のおばあさん)をヘレナ・ボナム=カーター(イギリス・ロンドン出身)が実に愉しそうに演じている。エンディング・クレジットで「ビビディバビディブ」を歌っているのも嬉しい(ミュージカル映画「スウィーニー・トッド」でも歌を披露している)。ちなみに彼女もフランコ・ゼッフィレッリ監督の「ハムレット」(1990)でオフィーリアを演じている。
衣装デザインを担当したのはイギリス・ロンドン出身のサンディ・パウエル。「恋におちたシェイクスピア」「アビエイター」「ヴィクトリア女王 世紀の愛」で3度アカデミー賞を受賞している。「シンデレラ」が4度目の受賞となるのはほぼ間違いない。
つまり本作はスタッフ・キャストにほとんどアメリカ人がおらず、イギリス人やシェイクスピア俳優で固めているのだ。それ故に登場人物たちはクィーンズ・イングリッシュを喋り、非常に格調高く気品に満ちた作品に仕上がっている。特に舞踏会場面の絢爛豪華さは息を呑むほど。舞踏会シーンで真っ先に想い出すのは貴族の末裔でもあったルキノ・ヴィスコンティ監督の「山猫」だが、本作は「山猫」を超えたのではないか?とすら感じられた。
「シンデレラ」は誰もが物語の顛末を知っている古典であるが、ケネス・ブラナーはシェイクスピア作品に臨む時と同様のアプローチでこれを仕上げた(「ハムレット」や「ロミオとジュリエット」のプロットを知らずに観劇する人は皆無と言って良いだろう)。その方法論は大正解であり、彼に委ねたディズニーに先見の明があったのである。
また美しいガラスの靴はクリスタルで有名なスワロフスキーが製作している(スワロフスキーは2004年の映画「オペラ座の怪人」でシャンデリアを製作)。
音楽のパトリック・ドイルは「ヘンリー五世」以降、長年に渡りケネス・ブラナーとタッグを組んできた。「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」では精彩を欠いたが、今回はスマッシュ・ヒット。特にワルツが印象的だった。
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