ABの呪縛 あるいは (大阪4大オーケストラの饗演)
タイトルはアカデミー作品賞・監督賞を受賞した「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」風にしてみた。
4月22日(水)フェスティバルホールへ。なんと満席(客席数2,700)。
- 黛敏郎:バレエ音楽「BUGAKU(舞楽)」
藤岡幸夫/関西フィルハーモニー管弦楽団 - サン=サーンス:交響曲 第3番「オルガン付き」
飯森範親/日本センチュリー交響楽団 - ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」
外山雄三/大阪交響楽団 - ベートーヴェン:交響曲第7番
井上道義/大阪フィルハーモニー交響楽団
18時半開演でその20分前から4人の指揮者によるプレトークあり(司会者抜き)。最初この画期的な(前代未聞の)企画が持ち上がった時、井上がブラームスの交響曲全曲演奏を提案したら藤岡と飯森が「絶対イヤ!」と反対したそう。いや、今回のプログラム、4曲中サン=サーンス以外の3曲が舞踏音楽(ダンス・ミュージック)というのも統一性があるし、中々個性的でいい。また飯森が井上に対して「ミッキー先生」と呼んでいるのが面白かった。ちなみに外山は来月84歳になる。老いてなお、背筋が伸びて矍鑠としている。
トップバッターの藤岡が選んだ黛は和の響きが魅力的。西洋楽器のみで見事に笙や篳篥のハーモニーが聴こえてくる。堂々としてパワフルな演奏だった。このコンビで先日聴いた冨田勲:源氏物語幻想交響絵巻からの一貫した流れも感じ、好感を抱いた。
ここでステージ転換中に2階席でトラブル勃発!
おばちゃん「何であんたに、そんなこと言われんとあかんの!?」
おっさん「うるせぇ、ババァ。引きずりおろすぞ、帰れ!」
大声での応酬に周囲は騒然となり、ホールスタッフも飛んできた。暫くして事態は収集したようで次の演奏までに静かになったのだが、さすが大阪、ガラが悪い(良く言えば「庶民的」)。
2番手の飯森はスッキリ颯爽としたサン=サーンス。スタイリッシュで切れがあった。あとオルガンの音が良かった。ザ・シンフォニーホールに設置されているしょぼいパイプオルガンよりはるかにマシ。因みに僕は同曲をザ・シンフォニーホールでも聴いたことがある(大植英次/大フィル)。
外山の「火の鳥」は明晰で曖昧さが皆無。ただし遊び心がなく、四角四面で面白みに欠けることも確か。まぁこういった側面は秋山和慶の指揮にも見られることなのだけれど。オケの楽員から評価が高いことはよく知っているが、聴衆の立場から言わせてもらうと些か退屈なんだよね。現在僕は大響の定期会員だが、外山がミュージック・アドヴァイザーに就任する来期(2016年4月)からはやめるつもり。
ミッキーのベートーヴェンは16型の大編成で対向配置。ティンパニはクラシカルではなくモダン楽器を使用。テンポは作曲家が指定したメトロノーム記号に則し、速め。ヴィブラートは控え目だがノン・ヴィブラートというほど徹底したものではなく、モダンとピリオド・アプローチの中間=折衷案。はっきり言えば中途半端。小編成のオーケストラ・アンサンブル金沢を振る時のミッキーはもっとピリオド寄りに踏み込んだ解釈なので、なんだか聴いていてもどかしい。歯切れはいいが(カルロス・クライバー/ウィーン・フィルや映画「のだめカンタービレ最終楽章」における飯森範親のアプローチに比べると)躍動感がない。僕はそこにABの呪縛をひしひしと感じた。
ABとは「朝比奈(隆)のベートーヴェン」であり、「朝比奈のブルックナー」も含む。21世紀的新鮮な演奏をしようとするミッキーの意思は確かにあるのだが、一方で「朝比奈のオーケストラ」である大フィルの過去を否定することも出来ない。遠慮しているのだ。
結局、「伝統」という名の朝比奈隆の亡霊に囚われているという印象を払拭出来なかった(ただし終楽章のみは抑制が取り払われ、生気があった)。もういっその事、センチュリーと統合するなどして大フィルを一度ぶっ壊して、真っ白な(リセット)状態から再スタートした方がいいのではないか?僕は心底そう想う。
4つの在阪オケを連続して聴きはっきりしたのはまず弦の実力では大フィルがダントツ。管楽器が一番上手いのはセンチュリー。ただしホルンは大フィルの高橋首席がNo.1で、駄目なのが大響。大フィルとセンチュリーが一緒になれば、東京に負けない凄い実力のオーケストラが生まれるのになぁ……本当に惜しい。
総じて前半(関西フィル&センチュリー)の方が断然聴き応えがあった。
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