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2015年3月28日 (土)

映画「ソロモンの偽証」前篇・事件

タイトルが「宮部みゆき ソロモンの偽証」と出てくるところから意表を突かれた。日本映画で原作者がタイトルに出てくるのは珍しい。「風と共に去りぬ」がMargaret Mitchel'sとなっていたり、外国映画では観たことがあるけれど。

Solo

映画公式サイトはこちら

評価:AAA

本当は後篇を観てから評価するつもりでいた。前半を観ただけでは無理だと想ったからだ。ところが!僕の見通しが甘かった。観始めるやいなや、20年に1本しか現れない途轍もない怪物だということが直ちに判ったので断を下した。つまり日本映画史で言えば小津安二郎の「東京物語」、黒澤明の「七人の侍」「羅生門」、溝口健二の「雨月物語」「西鶴一代女」、成瀬巳喜男の「浮雲」レベルの作品であるということだ。長尺ということがネックになるかも知れないが、来年の米アカデミー賞外国語映画部門の日本代表は絶対にこれを選ぶべき。もし本作を出品すれば受賞は100%間違いなし。だって「おくりびと」を遥かに凌ぐ傑作だから。

映画冒頭、尾野真千子が中学校にやって来る。遠景に東京スカイツリーが見える。尾野は正門から入らず、通用門を通る。そこには「防犯カメラ設置中」とプレートが掲げられている。ふっと校舎を見上げる尾野。カメラが俯瞰ショットで桜の木の下に佇む彼女を捉える。……この一連の動作が、後に伏線としてしっかり活かされているのには唸った。凄い。

主役の新人・藤野涼子は勿論だが、死体で登場する望月歩、秀才君役の西村成忠、ニキビで虐められる石井杏奈、その友達で太っちょの富田望生、イジメの主犯格・清水尋也など子どもたちが適材適所で素晴らしい。見事なアンサンブルである。

イジメ、家庭内暴力、人の悪意、大人の事情(世間体、事なかれ主義)といった様々な要素が複雑に絡み、壮大なシンフォニーを奏でてゆく。雪の中から発見される目を開けたままの死体はどこか美しく、また「リング」の貞子みたいな女が登場したりしてゾクゾクっと背筋が凍るホラー要素もある。これを観逃したら貴方が2015年という今に生きている意味がない、末代までの恥とまで言い切らせて貰おう。直ちに映画館に駆けつけろ!!

以下余談。エンドロールでアルビノーニのアダージョが静かに流れる。僕はNHKで放送された向田邦子のドラマ「あ・うん」のことを想い出した。考えてみれば宮部みゆきは《現代の向田邦子》と言えるだろう。またこの曲はオーソン・ウェルズ監督の映画「審判」(1963)でも使われている。やはり裁判がテーマになっている「審判」への想いがあるのかも知れない。

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