サロネン/フィルハーモニア管弦楽団 with ヒラリー・ハーン
3月1日(日)兵庫県立芸術文化センターへ。
エサ=ペッカ・サロネン/フィルハーモニア管弦楽団の演奏会。
- シベリウス:交響詩「フィンランディア」
- ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
- バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番よりジーグ
(ソリスト・アンコール) - シベリウス:交響曲 第5番
- シベリウス:悲しきワルツ(アンコール)
ヴァイオリン独奏はヒラリー・ハーン。今年は生誕150年ということでシベリウス・メインのプログラムが組まれた。だったらヴァイオリン協奏曲もシベリウスにすればいいのにという想いもあるが、集客のことを考えた上での選択だろう。交響曲第5番の知名度が低いから仕方ない。作曲家としても知られるサロネンは現代音楽のスペシャリストだが、実はヘルシンキ生まれでシベリウス・アカデミーに学んだ経歴があるのでお手のものなんだね。
「フィンランディア」は拍子がはっきりしていて明晰な演奏。各フレーズがビシッと決まる。コントラバス、チューバ、ファゴットなど低音が力強く奏で、美しい音のピラミッドが築かれる。後半の畳み掛けが凄く、ドラマティックだった。
ブラームスのハーンは繊細でエッジが効いている。彼女に寄り添うオケは音尻がスッと減衰し、水はけが良い。ハーンは時に木管と対話するように奏者を見ながら弾く。サロネンの解釈はキレッキレで、まるで20世紀の音楽を聴いているよう。感受性豊かでナイーブなブラームス像が浮かび上がる。CDも含め僕が今までに聴いた同曲のベストだった。
後半のシンフォニーは躍動感があってフィンランドの大地の鼓動が聞こえてくる。管楽器のハーモニーには厚みがあった。僕はこの演奏を聴きながら次のように感じた。
第1楽章は厳冬の情景。誰もいない凍った湖の上を風が通り抜ける。
第2楽章は残雪や湖の氷が次第に溶けてゆく。
第3楽章は本格的な春の訪れ。草花が萌える時。
シベリウスは1915年4月21日の日記にこう記している。
今日11時の10分前に16羽の白鳥を見た。人生最大の感動のひとつだ! 神よ、なんという美しさ! 白鳥達は長い間、私の頭上を旋回していた。そして輝く銀のリボンのように、太陽の光の霞の中へ消えていった。
声は鶴のような木管楽器の類だが、トレモロがない。まぎれもなくサリュソフォーンの音色だが、白鳥の声はトランペットに近い。小さな子供の泣き声を思い起こさせる低い繰り返し。自然の神秘と人生の憂愁! 第5交響曲のフィナーレのテーマ、トランペットのレガート……。
これは長い間、真の感動から遠ざかっていた私に起こるべきものであった。こうして今日、私は聖なる殿堂にいるのだ。
白鳥のテーマが登場する時、サロネンはグッとテンポを落とす。僕はそこに鳥が悠々と羽ばたく姿を幻視した。サロネンといえば怜悧な指揮者というイメージだが、彼のシベリウスは熱かった。
アンコール、「悲しきワルツ」の弦楽器は絹の肌触り。最後は死の影が忍び寄る。ゾクゾクっとした。
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