宴の後/演技部門でオスカーを勝ち取る方法
アカデミー賞授賞式が終わった。僕の今年の予想で的中したのは作品・監督・演技賞4部門全て・脚色・美術・衣装デザイン・撮影・長編&短編ドキュメンタリー・短編実写・外国語映画・音響編集・メイクアップ・作曲・歌曲の計18部門。昨年と同数だった。5年連続18部門以上というレベルは保つことが出来たからまずまずかな。
アカデミー賞の演技部門は「アル中・娼婦・精神異常者・身体障害者・病人(AIDSなど)」を演じると取りやすいという法則がある。これはレイ・ミランドがアル中を演じて主演男優賞に輝いた「失われた週末」(1945)から70年間全く変わらぬ鉄則である。つまりフツーの人を演じたのでは目立つことが出来ず、オスカーは勝ち取り難いのである。AIDS患者役で受賞したのはトム・ハンクス(フィラデルフィア)やマシュー・
また1964年にジュリー・アンドリュースが「メリー・ポピンズ」で主演女優賞を受賞して以降、「歌うと有利」という法則が生まれた。彼女の歌唱がパーフェクトであることは論を俟たないが、果たして「メリー・ポピンズ」での演技が際立っていたと言えるだろうか?僕は甚だ疑問に感じる。”歌うお姉さん”という感じ。実は1964年はミュージカル映画「マイ・フェア・レディ」が公開された年でもあった。ジュリーはこのミュージカルのブロードウェイ版オリジナル・キャストである。しかし映画の経験がなかった彼女は選ばれず、代わりにオードリー・ヘップバーンが抜擢された。オードリーの歌はマーニ・ニクソンによる吹き替えであった。このことでオードリーは激しくバッシングされ、映画は8部門アカデミー賞を受賞したものの、オードリーはノミネートすらされなかった。つまり同情票がジュリーに流れたのである。この事件以降、ハリウッドでミュージカル映画に出演する俳優は極力自分で歌うようになった。歌ったおかげでオスカーを手にした役者たちを列記しておこう。「ファニー・ガール」のバーブラ・ストライザンド、「キャバレー」のライザ・ミネリ、「シカゴ」のレニー・ゼルウィガー、「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」のリース・ウィザースプーン、「ドリームガールズ」のジェニファー・ハドソン、「レ・ミゼラブル」のアン・ハサウェイらである。
さて、そのジュリー・アンドリュースが今回の授賞式にサプライズ登場した。今年は映画「サウンド・オブ・ミュージック」公開から丁度50周年にあたり、レディ・ガガがトリビュートとしてメドレーを歌ったのである。素晴らしかった。
また歌曲賞を受賞した映画「セルマ」のGloryも胸を打つ感動的なパフォーマンスであった。映画でマーティン・ルーサー・キング・ジュニアを演じたデヴィッド・オイェロウォが客席でこれを聴きながら号泣、クリス・パインもボロボロ涙を流していた。
そして何より時めいたのが司会者ニール・パトリック・ハリスのオープニング・パフォーマンス。「アナと雪の女王」の楽曲を手がけたクリスティン・アンダーソン=ロペスとロバート・ロペスがこのショーのために書き下ろした新曲「Moving Pictures」をニールが歌い、途中から「イントゥ・ザ・ウッズ」のアナ・ケンドリックが加わってデュエットとなる。そこへ”ならず者”ジャック・ブラックが客席から乱入し、毒を吐くという意表をつく展開に。とにかく詩が面白いし、曲も美しい。ロペス夫妻のコンビは最高だね!新作短編「アナと雪の女王/エルサのサプライズ」(Frozen Fever)がすごく愉しみだ。これを観ながら宮﨑駿監督「風立ちぬ」の台詞じゃないけれど、正しく「この世は夢」だと想った。
そうそう、エディ・レッドメインの隣に座っていた奥さんのハンナ・バグショーが綺麗で驚いた。調べてみると女優じゃなくて一般女性なんだってね。写真はこちら①とかこちら②。
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